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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

【ビルボードジャパン最新動向】「Bye-Bye Show」と「LADY」の指標構成の違い、そして次週考えられることへの懸念

3月20~26日を集計期間とする最新3月29日公開分のビルボードジャパンソングチャートは、BiSH「Bye-Bye Show」が初登場で首位を獲得しました。

「Bye-Bye Show」は7,855ポイントを獲得。デジタルリリースされた米津玄師「LADY」が6,363ポイントで2位に初登場しています。この2曲の指標構成から可視化されるものについて、今回記載します。

 

3月29日公開分のソングチャート、上位の指標構成は以下の通り。

そして2曲の動向はこちら。

BiSH「Bye-Bye Show」はラストシングルという位置付けもプラスに作用したと言えます。チャート構成比(ポイントに占める割合)の8割以上を占めるフィジカルセールス(CHART insightでは黄色で表示)は281,148枚となり、前作「ZUTTO」の20,491枚(昨年12月28日公開分)を大きく上回っています。またラジオ(黄緑)は2位となっていますが、この指標の基となるプランテックのOAチャートでは以下のように紹介されています。

2位はBiSH「Bye-Bye Show」が前週55位から急浮上した。ラストシングルとして3月22日にリリースされた同曲は、早くも2月21日にオンエアを開始し同週2月20日〜2月26日チャートで186位に初登場。その後もチャートインを維持するなか、リリース週を迎えた今週いっきにオンエアが伸長したかっこうだ。

オンエア傾向を見ると、FM FUJI、interfm、ラジオ大阪、Kiss FM、Love FMでの特定番組を中心とするオンエアが、全体の65%以上を占める局地的なものながら、リクエストオンエアが多々確認されていることから一定層で厚く支持されたことが分かる。ラストシングルに相応しい注目度となった。

 

そのラジオ指標で首位となったのが、総合2位に初登場した米津玄師「LADY」。ダウンロード(CHART insightでは紫で表示)は20,907DLを記録し同指標を制覇、またストリーミング(青)は3,494,916回再生となり27位となっています。ただ、前作「KICK BACK」の首位初登場時(2022年10月19日公開分 15,526ポイントを獲得)におけるチャート構成比とは異なる部分があります。

上記は「KICK BACK」が初登場で首位を獲得した際のCHART insight。当時はTwitter指標(水色で表示)が廃止前につき加算されていますが、赤で表示される動画再生指標も登場しています。これが「LADY」では加算されていません。米津玄師さんはショート動画こそアップしているものの、「LADY」の公式動画は未だ公開されていません。

前作「KICK BACK」でも、音源解禁直後の公式動画アップの状況は十分とはいえなかったと捉えています((追記あり)【ビルボードジャパン最新動向】「KICK BACK」「SuperCali」「Subtitle」の動向に影響を与えた動画再生指標を考える(2022年10月20日付)参照)。音楽聴取をYouTubeで行う形が少なくないというデータがある以上(下記ツイート参照)、その部分の充実は必要だったかもしれません。

ストリーミングについては、Spotifyでは集計期間中の後半にはトップ10入りを果たしたものの、Apple Musicが25位、そしてLINE MUSICでは3月22~28日の集計期間において56位と高くなかった状況です。YouTubeでの音楽聴取が若年層に多いとすれば、動画の拡充に伴いYouTube→LINE MUSICという流れが生まれたかもしれません。

 

 

BiSH「Bye-Bye Show」に話を戻すと、2指標が強かった一方で他指標ではダウンロードのみが加算され、ストリーミングや動画再生といった接触指標群は300位以内に入っていません。

また「Bye-Bye Show」は今回の集計期間前半3日間でフィジカルセールスが279,680枚に達しており、言い換えれば週後半4日間の売上が1,468枚にとどまっています。フィジカルセールス指標首位獲得曲におけるここまでの鈍化は異例といえるかもしれません。

 

デジタルが強くない曲については、フィジカルセールス加算2週目における急落が予想されます。前週はフィジカルセールスの上位3作品が総合でもトップ3を占めていましたが(【ビルボードジャパン最新動向】高フィジカルセールス曲が総合トップ3を占拠、その指標構成から次週の動向を読む(3月23日付)参照)、うち2曲は今週100位圏外に達してしまいました。

今年度首位獲得曲で翌週最もダウンしたのは三代目J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBE「STARS」の(1→)60位ですが、同曲は首位獲得時にフィジカルセールス以外の指標も上位に入っています。ただしストリーミング指標はLINE MUSIC再生キャンペーンの影響もあり(【ビルボードジャパン最新動向】男性ダンスボーカルグループの初週動向から考える、”初週聴取習慣化”の必要性(2月9日公開分)参照)、急落につながったと考えます。

一方でフィジカルセールスやラジオが突出したBiSH「Bye-Bye Show」においてはデジタルの強さが見られないことから、次週の急落は免れないでしょう。仮に首位から100位圏外へダウンするとなると、2021年度最終週(Hey! Say! JUMP「Sing-along」(2021年12月1日公開分首位→翌週100位圏外)以来となるのです。

 

 

前週トップ3のうち2曲が100位圏外に急落し、そして今週トップの作品が同じ道を辿るならば、ビルボードジャパンの週間チャートから真の社会的ヒット曲は見出しにくいと捉えられてもおかしくないため、同チャートはフィジカルセールス指標の見直しが急務と考えます。

そしてビルボードジャパンは同時に、デジタル(特に接触指標群)がヒットしている曲が真の社会的ヒット曲と成ること、複数週の動向をみて真の社会的ヒットを知ることの重要性も訴求する必要があるでしょう。

 

週間単位での首位獲得は勿論素晴らしいことですが、フィジカルセールスに強い作品の大半がデジタルに強くない事態を勿体なく感じています。フィジカルセールスの突出は大きなアドバンテージですがコアファンの人気の域を出にくいものです。ライト層を掴むデジタル(特に接触指標群)もきちんと獲得することで、完璧と呼べるヒットにする必要があるでしょう。