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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

前週および当週の上位進出曲におけるCHART insightから、真のヒット曲と成るかを読む (2023年7月26日公開分)

今回のエントリーでは、ビルボードジャパンソングチャートにおいて前週上位に初登場した曲(下記エントリー参照)の翌週動向、そして最新週における上位初登場曲の動向をチェックします。

 

まずは前週のエントリーにて紹介した上位初登場曲の、最新チャートにおける動向をCHART insightを用いて紹介します。

<2023年7月19日公開分 ビルボードジャパンソングチャートにて

 20位までに初登場した作品の、翌週におけるCHART insight>

 

・ジョングク feat. ラトー「Seven」 前週2位→2位

 (ビルボードジャパンでは歌手名を”JUNG KOOK”と表記していますが、このブログではカタカナにて記載します。)

・B'z「STARS」 前週4位→69位

(上記はフィジカルシングルのダイジェスト映像。)

・Juice=Juice「プライド・ブライト」 前週5位→100位未満(300位圏内)

・NewJeans「Super Shy」 前週10位→13位

・BiS「イーアーティエイチスィーナーエイチキューカーエイチケームビーネーズィーウーオム」 前週13位→100位未満(300位圏内)

最新ソングチャートの記事はこちら。

 

前週初のトップ20入りを果たした5曲のうち、当週も100位以内に残ったのは3曲。このブログでは上位進出時のチャート動向について、【フィジカルセールスが圧倒的に強い】【デジタルがフィジカルセールス的な動きをなぞる】【接触指標および所有指標の双方が高い】のいずれかに当てはまると以前から記していますが、最後に記した特徴をなぞった「Seven」および「Super Shy」が翌週も強さを発揮していることが解ります。

ジョングク feat. ラトー「Seven」については今回が初の1週間フル加算となったこともプラスに作用し、ポイント前週比は138.7%と大きく上昇。一方で「Seven」は7月23日まで、「Super Shy」は7月16日までLINE MUSIC再生キャンペーンを行っていたことから(下記リンク先参照)、双方とも【デジタルがフィジカルセールス的な動きをなぞる】可能性が考えられました。

「Seven」はキャンペーン終了後の次回8月2日公開分における動向が気になりますが、「Super Shy」はキャンペーン終了後の当週におけるストリーミング再生回数が5,781,458回となり、前週の6,167,279回から6%強のダウンにとどめています。EP『Get Up』の初登場もプラスに作用しているものと思われますが、他のサブスクサービスでも上位に入っていることから、キャンペーン後の失速はほぼないといえるでしょう。

さらに中期的な動向を踏まえて真の社会的ヒット曲になったかを断言する必要があるものの、LINE MUSIC再生キャンペーン後も勢いが継続するNewJeans「Super Shy」は十分なヒット曲に成り得る可能性を持ち合わせています。LINE MUSIC再生キャンペーン採用曲や歌手が目指すべきはこの動きではないでしょうか。

 

 

続いて、最新7月26日公開分のビルボードジャパンソングチャートにおいて初めてトップ20入りした作品のCHART insightをチェックします。

<2023年7月26日公開分 ビルボードジャパンソングチャート

 20位までに初登場した作品のCHART insight>

 

・3位 米津玄師「地球儀」

・5位 =LOVE「ナツマトペ」

・7位 サザンオールスターズ「盆ギリ恋歌」

・19位 INI「My Story

 

米津玄師「地球儀」は次回8月2日公開分総合ソングチャートでの首位獲得に照準を合わせている印象です。次週は7月26日にリリースされたフィジカルのセールスが初加算され、またその発売日にはミュージックビデオも解禁。さらには映画『君たちはどう生きるか』つながりで菅田将暉さんとの対談企画もYouTubeにて公開されています。

他方で気になるのは初動の強くなさ。たとえばフィジカルシングル速報値では「地球儀」が62,540枚の売上となっており、フィジカルシングルの前作「KICK BACK」が初週に記録した289,147枚から大きくダウンする可能性が考えられます。また(こちらは2週目となりますが)ストリーミング速報値でもトップ10に入っていないことから、次回の動向を注視する必要があります。

なお当週において興味深いのがラジオの動向。この指標はプランテックによるOAチャートを基に、ビルボードジャパンが聴取可能人口等を加味して独自に算出したものとなります。そのOAチャートの記事では、このような文言がみられます。

なお、米津の新曲としては通常よりリクエストオンエア数が落ち着いた発進である点に注目だ。映画は事前情報やプロモーションがほぼない状態で14日に公開され、同曲についても公開と同時に情報が解禁されている。これを踏まえ、楽曲自体がまだ浸透し始めている段階にあることがリクエストオンエア数から見て取れるのだ。

映画『君たちはどう生きるか』の事前プロモートがないという事態に注目が集まっていますが、それが曲の浸透度の高くなさにつながっている可能性、また放送局側がネタバレ等を避けるゆえのOA控えも生んでいるのではと感じます。事前プロモーションを極度に控えるという施策が関わった方(やその関連作品)の認知浸透に影響し、損ねてはいないかについて、きちんと振り返りその是非を判断する必要があるものと考えます。

 

そのラジオ指標でもうひとつ、興味深い動きをなぞるのがサザンオールスターズ「盆ギリ恋歌」。当週における5,414ポイントのおよそ半分をこの指標のみで獲得したのはラジオ指標の特徴ゆえといえます(最新チャートにおけるラジオ指標の動向については、上記プランテックの記事をご参照ください)。

ラジオ指標はベテラン且つ全国でレギュラー番組を持つ歌手の作品が強く、他方で若手においてはパワープレイ(ヘビーローテション)に選出されるか否かで採り上げ方が大きく異なるのが特徴です。このラジオ指標で上位進出したベテラン歌手の作品は、しかしながら『接触指標が十分加点されていません』『ベテラン作品の強さとそうでない部分とがはっきり分かれています』(上記エントリーより)という状況も散見されます。

ベテラン歌手による作品においては、スピッツ「美しい鰭」がラジオ以外の指標も獲得しバランスの良いチャート構成を示していました。タイアップの影響もあるとして、フィジカルシングルを用意するならば尚の事この曲のチャートアクションが理想形と考えます。今のヒットの基礎であるストリーミングに強くなることは必須であり、未解禁作品はストリーミングユーザーにとって存在しないと言っても過言ではないでしょう。

 

 

次週はYOASOBI「アイドル」と米津玄師「地球儀」が最上位を争う可能性が高いと思われます。「アイドル」が首位を維持するかそれともその座を初めて引き渡すのか、注目しましょう。