最新6月25日公開分のビルボードジャパンソングチャート(集計期間:6月16~22日)にて40位台に初登場した、風男塾「To Future Me」(44位)およびM!LK「wan」(43位)の動向を興味深く感じており、今回採り上げます。
今回のチャート分析で使用するCHART insightは、ビルボードジャパン有料会員が確認可能な総合および構成指標100位までを示したものです(無料会員は各20位までが閲覧可能)。なおビルボードジャパンでは、有料会員が把握可能な情報のブログ等での発信を許可しています。今回のエントリーにてCHART insightを貼付したのは、紹介する曲の指標構成に特徴があることを伝えるためです。
風男塾「To Future Me」のCHART insightからは、黄色で示したフィジカルセールス指標が獲得ポイントのすべてを占めていることが解ります(なおソングチャートの構成指標はいずれも300位まで加点対象に)。この点からは、20,789枚のフィジカルセールスを記録すれば1,590ポイントを獲得できること、また下半期のポイント動向を踏まえればフィジカルがおよそ2万枚売れれば総合50位以内に入る可能性が高いことが解ります。
一方でフィジカルセールスはリリース2週目に急落する傾向があるため、他指標を獲得できていない風男塾「To Future Me」が次週総合100位以内にとどまることは難しいといえます。ただし最近ではフィジカルリリース後のフィジカルセールス施策がAKBグループ主体に増えており、STU48「地平線を見ているか?」は当週11,787枚を売り上げ、総合ソングチャートでも95位に再登場しています。
STU48「地平線を見ているか?」はフィジカルセールスが極度に乱高下し、この1ヶ月においては7位→300位未満→14位→300位未満→5位と推移。加えて他指標が伴っていない状況からは、この曲がフィジカルセールス施策に伴いコアファンを刺激しても、ロングヒットを支えるライト層(歌手のファンではないが曲が気になる方)にはほぼリーチできていないことが想起可能です。
他方、デジタルのみのリリースであるM!LK「wan」は当週43位に初登場を果たしていますが、こちらは獲得した1,601ポイントのすべてをストリーミング(CHART insightでは青で表示)で占めています。
ミュージックビデオは存在せず、上記ダンスパフォーマンス動画が当週の集計期間後半に公開されたことを踏まえれば動画再生指標が300位以内に達しなかったのはやむを得ないかもしれません。しかしながらM!LK「wan」では、CHART insightにて紫で表示されるダウンロード指標も獲得できていないという状況です。
加えて下記ストリーミング表からは、「wan」においてLINE MUSICの再生回数が突出していることが解ります。
M!LK「wan」のLINE MUSICでの強さは、同サービスにおける再生キャンペーンの開催が影響しています。
(上記画像はM!LKのX公式アカウント発のポストより→こちら。)
LINE MUSIC再生キャンペーンによりストリーミング指標が強くなることで総合ソングチャートでもランクインする例として、上半期に流行した「イイじゃん」が挙げられます。しかし同曲もキャンペーン終了後以降はソングチャートでの存在感が薄れています。
M!LK「イイじゃん」については「気まぐれロマンティック」「小さな恋のうた」等、CHART insightから再ブレイクの理由を掴む(3月31日付)にて紹介していますが、LINE MUSIC再生キャンペーン終了後の動向をみるとストリーミングは5月14日公開分まで、また動画再生は現時点においても300位以内に入っています。それでも総合100位以内には戻ってきていないため、流行をどうやってフィードバックさせるかが課題です。
M!LK等スターダストプロモーションに所属する男性アイドルやダンスパフォーマンスグループはLINE MUSIC再生キャンペーンを採用することが多く、結果的に同サービスでの実績が総合チャートの複数週ランクインにつながっています。ただ、ライト層人気が反映されロングヒットしやすいストリーミングにおいてコアファンの熱量を呼び寄せる施策を用いる場合、その人気が継続することはほぼありません。
今回紹介した曲を以前示したヒットの8段階表(上記参照)に当てはめると、風男塾「To Future Me」は第1段階、M!LK「wan」およびSTU48「地平線を見ているか?」は第2段階止まりではないかと感じています。M!LKにおいては「イイじゃん」が接触指標群で加点を続けるも第3段階以降に至ったとは言い難く、やはりライト層への訴求を重視する必要があるというのが私見です。
コアファンが数年後も全員コアファンのままでいることはありません(他の歌手に興味を移す方や退かざるを得なくなる方等が想起可能)。だからこそコアファンに昇華可能なライト層(歌手のファンではないが曲が気になる方)を増やすことが求められ、そしてそのライト層が曲に触れられる機会を増やす必要がある
上記はtimeleszが『FAM』をデジタルリリースしていないことを踏まえてのものですが、ではデジタル環境を用意するだけでいいかと言われれば、それは違うでしょう。ライト層の手前であるグレーゾーンの方々に対し如何に新曲をリーチさせるか、そしてライト層に成った方を如何にしてコアファンへと昇華させるか、歌手側は積極的に模索することが重要だと考えます。