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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

【ビルボードジャパン最新動向】2連覇&ストリーミング2000万回突破…Official髭男dism「Subtitle」の強さの理由

毎週木曜以降は最新のビルボードジャパン各種チャートについてお伝えします。

10月24~30日を集計期間とした最新11月2日公開分(11月7日付)ビルボードジャパンソングスチャートは、Official髭男dism「Subtitle」が2連覇を達成。ポイントならびにストリーミング再生回数を伸ばし、盤石の体制を築き上げています。

 

Official髭男dism「Subtitle」の獲得ポイントは14,433→16,053、ポイント前週比は111.2%を記録。2位をキープした米津玄師「KICK BACK」の13,686→13,852ポイント(ポイント前週比101.2%)を引き離しています。二強とも言えますが、一強体制を築き上げているというのが率直な私見です。

要因のひとつが動画再生指標。上記ミュージックビデオは今回の集計期間木曜に公開されています。同週火曜には米津玄師「KICK BACK」も公開されており、双方動画再生指標に影響しています。

動画再生指標においては米津玄師「KICK BACK」が勝っています。これは同曲に参加したmillennium parade / King Gnuの常田大希さんがミュージックビデオにも参加する等、話題性も高かったため。またミュージックビデオが集計期間前半の公開だったことも功を奏したと言えるでしょう。無論この公開日設定は、オープニング曲に起用された『チェンソーマン』(テレビ東京ほか)の放送日を見越してのものと考えられます。

一方でOfficial髭男dism「Subtitle」は、主題歌に用いられた『silent』(フジテレビ)の放送日に合わせて木曜公開。最新となる第4回はプロ野球日本シリーズの影響により90分遅れの放送となりましたが、5.2%というリアルタイム視聴率(ビデオリサーチ社調べ)は決して低いとは言えないでしょう。そして見逃し配信は新記録を樹立。放送が遅れたことも影響しているだろうとして、素晴らしい記録であることに間違いありません。

 

前週のビルボードジャパンソングスチャートまでは公式オーディオのみが加算対象にもかかわらず動画再生指標が好位置であり、ドラマ放送や配信からの流れが可視化された感のあったOfficial髭男dism「Subtitle」。そして『silent』の流れは動画のみならず、サブスク再生回数等に基づくストリーミング指標にも反映されています。

『チャートイン3週目となる当週、再生回数は前週比114%の20,781,069回を記録。週間再生回数としては、2021年6月2日にBTS「Butter」が記録した29,935,364回に次ぐ歴代2位となる数字で、週間2,000万回超は今年初』という快挙が誕生しています(『』内は上記ツイート内リンク先記事より)。そのBTS「Butter」については、LINE MUSIC再生キャンペーンによる影響も大きく反映されていました。

BTS「Butter」はLINE MUSIC再生キャンペーンが反映された2021年5月26日公開分(5月31日付)でのストリーミング再生回数が14,021,650回、翌週が(現時点においても)歴代最高となる29,935,364回となっています。LINE MUSIC再生キャンペーン採用曲は再生回数全体に占めるSpotify(デイリー200位までの数値が可視化されたサブスクサービス)の割合が低く、BTS「Butter」は8.8→10.5%と推移していました。

一方でOfficial髭男dism「Subtitle」は18,116,526→20,781,069回、全体に占めるSpotifyの割合が13.8→14.6%と推移。再生キャンペーン未実施でここまでの伸びは見事というしかありません。

(なおBTS「Butter」はLINE MUSIC再生キャンペーン終了後もストリーミングで首位を続けており、首位在籍時の再生回数は常時1400万を超えています。最後の首位獲得時(2021年7月14日公開分(7月19日付))での再生回数に対するSpotifyの割合が17.6%であったことも踏まえるに、LINE MUSIC再生キャンペーンがなくとも十分ヒットしただろうと考えられます。)

 

ストリーミング首位曲においてLINE MUSIC再生キャンペーン未採用時の再生回数全体に占めるSpotifyの割合は通常10%台後半となります。ゆえにOfficial髭男dism「Subtitle」の現状(最新週は14.6%)からは、Spotifyでも今後伸びる可能性を秘めていると言えそうです。そのSpotifyでは米津玄師「KICK BACK」の後塵を拝していた「Subtitle」が先週金曜に遂に逆転し、日曜にはSpotifyでの歴代最高記録を樹立しました。

再生回数推移からみてもOfficial髭男dism「Subtitle」の伸びは明白。また米津玄師「KICK BACK」を抜いた日が『silent』第4回放送翌日だったことからも、ドラマとの相乗効果は十分です。今後ドラマの盛り上がり如何では「Subtitle」がどこまで伸びるか、注目度は高まるばかりです。

 

 

最後に。ビルボードジャパンソングスチャートが「Subtitle」の一強もしくは「KICK BACK」との二強状態となったことで、フィジカルセールスに強い歌手が週間首位を獲得する可能性は難しくなったと考えます。

月曜のツイートを上記に。そして実際、日向坂46「月と星が踊るMidnight」は3位止まりとなりました。前作「僕なんか」がビルボードジャパンソングスチャートを制した際のポイントは12,952でしたが(2022年6月8日公開分(6月13日付))、今作は9,224ポイントと大きく落ち込んでいます。これはストリーミング指標が42位→100位未満(300位圏内)だったことも影響したと言えるでしょう。

デジタルに強くない作品はフィジカルセールス以外のポイントを強固にすることができません。デジタル未解禁ならば尚の事です。いやむしろ、フィジカルセールスがデジタルを補完するという考え方に改めたほうが好いのではないでしょうか。この”フィジカルセールスがデジタルを補完する”ことについては、米津玄師さんのフィジカルシングルリリース(のタイミング)施策が最も分かりやすいでしょう。

フィジカルシングルをリリースする歌手が今後週間単位でも首位を獲得するには、デジタルをきちんと解禁すること、そしてコアファンの意識をデジタルでも高めさせることが運営側に求められます。