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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

【ビルボードジャパン最新動向】「ハッピーサプライズ」が「Subtitle」に勝つために必要だったことを考える

毎週木曜以降は最新のビルボードジャパン各種チャートについてお伝えします。

11月14~20日を集計期間とする最新11月23日公開分(11月28日付)ビルボードジャパンソングスチャートはOfficial髭男dism「Subtitle」が首位返り咲きを達成。フィジカルセールスがハーフミリオンに到達したなにわ男子「ハッピーサプライズ」は2位発進となりました。

Official髭男dism「Subtitle」は2週ぶり、通算4週目の首位を獲得。CHART insightをみれば、ポイントのおよそ7割をストリーミング指標で占めていることが解ります。

Official髭男dism「Subtitle」はストリーミング指標5連覇を達成。4週連続で2000万回再生を突破し、右肩上がりの状態が続いています(ストリーミングの記事は下記ツイート内リンク先をご参照ください)。これが大きく影響し、総合ソングスチャートにおいても初登場から5週連続でポイントが増加しました。

一方で、次週はダウンに転じる可能性が考えられます。再生回数の6分の1強を占めるSpotifyではここにきて前週同曜日割れを起こしており、また主題歌に起用されたドラマ『silent』(フジテレビ)の放送がサッカーワールドカップに伴い休止に。大型スポーツイベント開催期間中はストリーミングがダウンする傾向にあるため(東京オリンピックの前例あり)、しばらくは厳しい状態が続くかもしれません。

 

Official髭男dism「Subtitle」の強さの前に、フィジカルセールスがハーフミリオンを突破したなにわ男子「ハッピーサプライズ」は総合ソングスチャートで初登場首位に至れませんでした。

(上記はミュージックビデオのショートバージョン。)

上記CHART insightにおいて、気になる点として動画再生(赤で表示)およびルックアップ(オレンジ)を取り上げます。

フィジカル関連指標初加算週における動画再生指標の順位は「初心LOVE」の2位(前週の9位から上昇)、「The Answer」の3位(前週の10位から上昇)に対し、「ハッピーサプライズ」は前週の6位から11位にダウンしています。フィジカル初加算週に動画再生が伸びないのはミュージックビデオをフィジカル同梱の映像盤でチェックする(移行した)方が多いことが一因と考えるに、ライト層の獲得に疑問が生まれます。

なにわ男子は昨日、「ハッピーサプライズ」のダンスバージョンをYouTubeにて公開。それもフルバージョンでの解禁となりました。フィジカルリリース2週目での公開は前作「The Answer」と同様ですが、仮に公開が前週だったならば動画再生指標を強固にできたものと考えます。この映像がフィジカル同梱の映像盤未収録と訴求すれば、フィジカルセールスが仮に減少するとしてその減少幅を最小限にとどめられたでしょう。

 

一方で「ハッピーサプライズ」はルックアップ指標が強いものの、もっと伸ばせたものと捉えています。なにわ男子は3作続けてレンタル遅らせ解禁(発売週の土曜ではなくアルバム同様2週間後の土曜に解禁)を実施しており、レンタルに伴うルックアップは今回のソングスチャートに加算されません。

再来週からはじまる2023年度以降、ビルボードジャパンはソングスチャートからTwitter指標を、そしてソングス/アルバム両チャートからルックアップ指標を廃止します。なにわ男子「ハッピーサプライズ」のレンタルによるルックアップ加点が反映されくなることを踏まえ、レンタル3日後解禁がチャート施策として必要だったでしょう。実際、米津玄師「KICK BACK」はソニーミュージック系移籍後初の3日後解禁を採っています。

 

 

動画再生およびルックアップ指標の施策如何では、なにわ男子「ハッピーサプライズ」は最新のビルボードジャパンソングスチャートでポイントを伸ばせたものと考えます。フルバージョン動画を発売週に公開しなかったことやレンタル遅らせ解禁の設定は、運営側が発売週の売上に強くこだわっていることが想起され、またデジタルやレンタルはともすればマイナス要素になりかねないと捉えているのではと感じてしまいます。

なにわ男子のフィジカルシングルにおける初週売上は632,655枚(「初心LOVE」)、534,004枚(「The Answer」)、517,381枚(「ハッピーサプライズ」)と推移し、デビューから3作連続でいわゆるハーフミリオンを突破しました。封入特典やリリース種類の関係もあり簡単に枚数比較はできませんが、好成績であることは間違いありません。一方で売上枚数にこだわりすぎるとコアファンが金銭面で疲弊しかねないとも危惧します。

 

推す方法の拡大の意味でも、たとえばデジタルに前向きになることは必要です。デジタルの強さはフィジカル関連指標加算2週目における総合ポイントの急落を抑え、ロングヒットにもつながります。ビルボードジャパンソングスチャートが社会的ヒット曲を映す鑑になり、Twitterやルックアップ指標が廃止となるこの状況で、デジタル未配信歌手や芸能事務所が真剣にデジタルを考え、選択することを強く願います