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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

【ビルボードジャパン最新動向】ソングスチャート上位4曲の指標構成から社会的ヒット曲とは何かを考える

毎週木曜以降は最新のビルボードジャパン各種チャートについてお伝えします。

11月7~13日を集計期間とする最新11月16日公開分(11月21日付)ビルボードジャパンソングスチャートは、King & Prince「ツキヨミ」がOfficial髭男dism「Subtitle」の連覇を阻止し、同曲初の首位を獲得しました。

(上記はショートバージョン。)

今回の上位曲における指標構成からは、様々な特徴がみえてきます。

首位到達のKing & Prince「ツキヨミ」はフィジカルセールス初加算週にあたり、フィジカルセールスおよびルックアップが1位に。また動画再生指標は3位となっています。

上記CHART insightにおいて、チャート構成比におけるルックアップ(オレンジで表示)の大きさは突出。この指標の強さはジャニーズ事務所所属歌手特有とも言えます。ルックアップはパソコン等インターネット接続機器にCDをインポートした際にインターネットデータベースのGracenoteにアクセスされる数を指し、売上枚数に対する実際の購入者数(ユニークユーザー数)やレンタル枚数の推測を可能とするものです。

このルックアップはTwitter指標共々、2023年度に廃止。仮に「ツキヨミ」が2023年度にフィジカルセールス初加算となっていれば獲得ポイントは1万にも満たなかったわけで、これら指標に強かった曲はデジタルの拡充が必須となります。ジャニーズ関連ではフィジカルセールスに強い歌手がデジタル未解禁の傾向にあり、「ツキヨミ」とのダブルAサイド曲「彩り」はそれを理由に総合100位以内エントリーを逃したと言えます。

(上記はショートバージョン。)

また後述する曲はストリーミング指標(CHART insightでは青で表示)が強く、これがロングヒットや年間ソングスチャート上位進出の鍵となるのみならずポイントの急落を防ぐ意味でも重要となります。他方でフィジカルセールスに強いながらデジタル未解禁の曲はフィジカル関連指標加算2週目のポイント急落が免れず、SixTONES「Good Luck!」(3→21位)はポイント前週比27.1%に。「ツキヨミ」も同様と成るものと思われます。

フィジカル関連指標初加算週における「彩り」の動向、そしてフィジカル関連指標加算2週目における「ツキヨミ」のポイント前週比については前週のブログエントリーで注目点として紹介しました。「ツキヨミ」が「Subtitle」を上回り首位を獲得したのは見事ですが、ビルボードジャパンソングスチャートはロングヒットが真の社会的ヒット曲と言えます。彼らの足跡を残す意味でも、デジタル解禁を強く希望します。

 

『フィジカルが突出した強さを誇る以上に、デジタルが強い状況の中でフィジカルを上乗せすることが今のビルボードジャパンソングスチャートで人気の曲』だということを、上記11月12日付ブログエントリーにて記載しました。その点において、最新ソングスチャートにおけるYOASOBI「祝福」は好例と言えるでしょう。

YOASOBI「祝福」はフィジカルセールス24,926枚を記録し総合7→4位に上昇。総合トップ5入りは5週ぶりとなります。注目はフィジカル初加算週において、ダウンロードは13,753→17,973DL(前週比130.7%)、ストリーミングは6,796,758→7,530,364回(前週比110.8%)といずれも上昇しているということ。これは「祝福」のフィジカルリリースに合わせて英語版「The Blessing」がデジタルリリースされたことによる影響です。

(ビルボードジャパンでは基本的に別バージョンが合算しないことになっていますが、言語のみの違いの場合は合算します。)

英語版「The Blessing」のリリースがあったためのデジタル指標群の増加とも言えるでしょうが、フィジカル上乗せのタイミングで施策を実行しビルボードジャパンソングスチャートで上位に進出したのは事実。YOASOBIのチャートへのこだわりが感じられます。

 

そしてデジタルで強さを発揮するのがOfficial髭男dism「Subtitle」および米津玄師「KICK BACK」。特に「Subtitle」の強さは今年度随一と言えるでしょう。

2曲とも初登場以降5週連続で1万ポイントを大きく上回っています。今年度上半期最大のヒットとなったAimer「残響散歌」の1万ポイント超えは通算6週であり、2曲がこの記録を破るのは確実でしょう。米津玄師「KICK BACK」は2週後にフィジカル関連指標が初加算されるため2022年度の週間最高ポイントを狙える位置にいますが、Official髭男dism「Subtitle」においてはポイントが4週連続で上昇し、凄まじい勢いとなっています。

Official髭男dism「Subtitle」の強さの要はストリーミング。ストリーミングのデータ提供元であるSpotifyにおいて、最新のビルボードジャパンソングスチャート集計期間では土曜、日曜と続けて日本のSpotifyデイリーチャートでの歴代最高再生回数を更新し、未だ天井知らずの状況です。

一方で米津玄師「KICK BACK」はカラオケ(CHART insightでは緑で表示)がOfficial髭男dism「Subtitle」以上に急上昇し、同指標6位に。カラオケもロングヒットの一要素であり、今後も2曲の上位安定は続くとみられます。

 

 

昨日は『NHK紅白歌合戦』(NHK総合ほか)の出場歌手(第一弾)が発表されたほか、民放の長時間音楽特番についてもラインナップが徐々に発表。テレビパフォーマンスはダウンロード指標を比較的大きく動かし、ストリーミング等にも影響します。Official髭男dism「Subtitle」が主題歌に起用された『silent』(フジテレビ)、米津玄師「KICK BACK」がオープニング曲に用いられた『チェンソーマン』(テレビ東京)も今クールで終了するため、12月から1月にかけてさらなるピークが生まれるでしょう。

この状況下では、フィジカルセールスに強い歌手が週間でも首位を獲得することは厳しいと言えます。ましてや2023年度にチャートポリシー(集計方法)が変更されるため尚の事です。デジタルに明るくなることは勿論のこと、仮に総合ソングスチャートで首位を獲れなかったとしてもそれを失敗と捉えずデジタルに強くなる術を模索する姿勢を、デジタルに明るくない芸能事務所側が採るよう願うばかりです。