BE:FIRST『BE:1』が初登場で首位を獲得した、最新9月7日公開分(9月12日付)ビルボードジャパンアルバムチャート。
【ビルボード】BE:FIRST『BE:1』が総合アルバム首位獲得 Ado/竹内まりやが続く https://t.co/6CjQYp5Jup pic.twitter.com/YbtVfyPEhK
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) September 7, 2022
この最新チャートで7位にランクインしているのが、なにわ男子『1st Love』。登場8週目にして常時トップ10内をキープし、推定売上枚数は83万枚を突破しています。
今回は、なにわ男子『1st Love』の好調の理由を考えます。
ビルボードジャパンのアルバムチャートはフィジカルセールス、ダウンロードおよびルックアップ(CDをパソコン等に取り込んだ際、インターネットデータベースのGracenoteにアクセスされる数のことで、実際の購入者数(ユニークユーザー数)やレンタル枚数を推測可能)の3指標で構成。なにわ男子『1st Love』はダウンロード未解禁ながら、2指標のみで総合トップ10内をキープしています。
(上記はなにわ男子『1st Love』のCHART insight。総合チャートは黒、フィジカルセールスは黄色、ダウンロードは紫、ルックアップはオレンジで表示されます。)
これを、2020年に同時デビューを果たしたジャニーズ事務所の先輩、SixTONESの『1ST』およびSnow Manの『Snow Mania S1』というそれぞれのファーストアルバムと比べてみましょう。なお2作品のCHART insightは初登場からの11週分を示しています。
SixTONES『1ST』は登場から8週目、Snow Man『Snow Mania S1』は5週目にトップ10から離れています。順位については他のアルバムの動向も影響するため、週毎の推定売上枚数でも比較してみます。
1週目のセールスはSnow Man『Snow Mania S1』が勝る一方、2週目以降は常時なにわ男子『1st Love』が上回る状態が続いています。SixTONES『1ST』や『Snow Mania S1』のような売上回復(前週より上昇)の状態は見られませんが、しかしこの動向は特筆すべきと言えます。
なにわ男子『1st Love』については、以前からビルボードジャパンがポッドキャストにてその動向を注目していることが伺えます。そしてジャニーズ事務所所属歌手による作品がビルボードジャパンソングスチャートの動画再生指標において好調であることも、何度か紹介されていると記憶しています。
そこで、SixTONES『1ST』がリリースされた昨年度第1四半期から今年度第3四半期(前週分まで)の動画再生指標トップ20におけるジャニーズ曲のランクイン状況をみてみます。なにわ男子はピンクで、その他のジャニーズ事務所所属歌手は青で表示していますが、デビュー曲「初心LOVE」以降はほぼ毎週、なにわ男子の作品が動画再生指標で20位以内に入っていることが判ります。
ジャニーズ事務所所属歌手が動画再生指標に強くなったのは2021年度第3四半期以降。同年度第4四半期にリリースされたSnow Man『Snow Mania S1』はアルバムリリース前にユニット曲等もランクインしていましたが、初登場(2021年10月6日公開分)以降8週間におけるアルバム収録曲のチャートインは「EVOLUTION」の1週のみにとどまります。一方でなにわ男子は『1st Love』から7週連続でトップ20以内に送り込んでいるのです。
(上記動画はどちらもフル尺のダンスバージョン。)
フィジカルシングルとなった「初心LOVE」および「The Answer」(後者は「サチアレ」とダブルAサイドですが、フィジカル関連指標が加算されるのは「The Answer」のみ)は先述した動画再生指標(CHART insightでは赤で表示)、そしてルックアップが好調に推移し、動画チェックやレンタル回数の多さが見て取れます。デジタルを解禁していれば総合チャートでさらにロングヒットしたと考えるのは自然なことです。
シングルの好調なアクションが需要の増加につながり、なにわ男子のファーストアルバム『1st Love』はアルバムチャートで好調に推移したと捉えていいでしょう。
なにわ男子『1st Love』の今後の動向も気になりますが、個人的にはビルボードジャパンが今後米ビルボードのようなチャートポリシーを採用し、単曲ダウンロードならびにストリーミング(動画再生を含む)の各指標をアルバム換算分に追加するかが気になります。仮にそれが叶えば、デジタル未解禁の作品群は不利となります。
直近ではBE:FIRST『BE:1』の事例、並びに優里『壱』のチャート推移を踏まえ、チャートポリシーの変更を議論する必要があると紹介しました(上記ブログエントリー参照)。Spotifyにおける直近のアルバムチャートをみると、ビルボードジャパンのアルバムチャートとはラインナップが比較的大きく異なることが解ります。
9月2~8日を集計期間とする、日本におけるSpotifyアルバムチャート。
— Kei (@Kei_radio) September 9, 2022
1位 #Ado『#ウタの歌 #OP_FILMRED』
2位 #BTS『#Proof』
3位 #優里『#壱』
4位 #BEFIRST『#BE_1』
5位 #TaniYuuki『#Memories』
6位 #YOASOBI『#THEBOOK』
7位 #あいみょん『#瞳へ落ちるよレコード』
7位までは前週と変わらず。
9月2~8日を集計期間とする、日本におけるSpotifyアルバムチャート(続き)。
— Kei (@Kei_radio) September 9, 2022
8位 (前週9位) #Vaundy『#strobo』
9位 (8位) #Ado『#狂言』
10位 (11位) #嵐『#嵐5x20』
「#死ぬのがいいわ」を含む #藤井風『#HELPEVERHURTNEVER』は28→13位へ上昇。
ビルボードジャパンが米ビルボードアルバムチャートのチャートポリシー(集計方法)を採用すれば、ヒット曲を含む作品はより上位に登場し、且つ安定した推移となるでしょう。そうなるとデジタル未解禁作品はこれまでよりも弱くなりますが、しかしアルバムチャートにおける社会的ヒットとの乖離が(ソングスチャートより)小さくないことを踏まえれば、検討の余地はあるはずです。
デジタル時代にあっては、歌手の方々には前向きになってほしいと願います。これは先述したツイートでも取り上げた藤井風「死ぬのがいいわ」の東南アジアをきっかけとしたバズ発生が好例であり、いつ何時昔の曲がフックアップされてもいいようにデジタルを開いた状態にすることが有効です。また海外でのヒットは市場の著しい拡大につながり、利益を大きく伸ばすことも可能です。
ジャニーズ事務所所属歌手はメディア露出が多く、また過去曲も披露されることが少なくありません。その意味では過去曲のフックアップやバズの可能性は他の歌手より多い(大きい)はずです。その意味でもデジタルに前向きになることを願っていますし、それを促す意味でもビルボードジャパンは前向きなチャートポリシー変更を考えるべきです。
仮にチャートが米ビルボードのチャートポリシー方式に変わったとしても、なにわ男子『1st Love』がデジタル解禁すればより上位に、且つ安定した状況となることでしょう。