(※追記(13時41分):TOKIONのインタビュー記事を紹介した際、”Spotify Japanの芦沢紀子さんによるインタビュー記事”と記載しましたが、正しくは芦澤紀子さんでした。訂正し、お詫び申し上げます。)
藤井風「死ぬのがいいわ」が、Spotifyによる最新9月4日付グローバルチャートで159位に初登場を果たしました。
(上記は公式オーディオ。)
藤井風「死ぬのがいいわ」のSpotifyのグローバルおよび各地域におけるランクイン状況は下記リンク先で確認できます。ただしこのサイトは非公式の可能性があり、いずれ更新されなくなるかもしれません。
「死ぬのがいいわ」は藤井風さんのファーストアルバム『HELP EVER HURT NEVER』に収録された曲で、デジタルシングルではない作品。この曲がアルバムリリースから2年後になってフックアップされたのは、海外でのバズに因るものでした。
【先ヨミ・デジタル】Ado「新時代」まだまだストリーミング首位独走中 藤井 風「死ぬのがいいわ」速報トップ100に初登場 https://t.co/qnl7d8nOEL pic.twitter.com/KjmsCtuPg3
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) September 2, 2022
「死ぬのがいいわ」は『TikTokでは7月下旬から8月にかけてタイを中心に本楽曲を使った動画が急増。Spotifyでも東南アジア各国のバイラルチャートの上位にチャートインした』ことが影響し『日本でも逆輸入的に注目』(『』内は上記ツイート内のリンク先より)。明日発表される9月7日公開分(9月12日付)ビルボードジャパンソングスチャートのストリーミング指標、そして総合でも100位以内エントリーを狙える位置にいます。
この藤井風「死ぬのがいいわ」のバズがSpotifyではじめて可視化されたと言えるのがタイのバイラルチャート(7月27日付で57位に初登場)。バイラルチャートはSNS等のヒットを示す一方、デイリーチャート200位以内進出に至れる曲とそうでないものとが分かれる印象がありましたが、タイでは翌日にデイリー101位に初登場を果たすと最新9月4日付では30位、現段階で最高23位を記録しています。
その後東南アジアを機にヨーロッパ等へ飛び火した藤井風「死ぬのがいいわ」は、9月3日付米Spotifyバイラルチャートでも5位に初登場。このまま米でデイリーチャートにランクインすれば、グローバルチャートでのさらなる上昇も期待できるのです。
このチャートアクションについては、藤井風さんの動向を追いかけるコアファンの方々が随時SNSで発信されています(情報の網羅に感心し、参考にさせていただいております。この場を借りて感謝申し上げます)。そこで確認した情報を含め、「死ぬのがいいわ」がSNSでのバズを再生回数上昇につなげたと言える要因を取り上げます。
「死ぬのがいいわ」がSNSのバズにとどまらずストリーミングの再生回数に大きくつながった理由は、藤井風さん側がそのバズを意識し、再生回数増加も招くべくいくつかの戦略を行ったからと捉えています。そのひとつが、ライブ映像の公開でした。
死ぬのがいいわ [Shinunoga E-Wa]
— 藤井 風 (@FujiiKaze) August 22, 2022
Live at 日本武道館(2020)
アジアでご好評につき公開致します❤︎
Amazed by all your love for this song❤︎https://t.co/Q0wpvvCJf2 pic.twitter.com/FqDsgL5yCT
ツイートの内容からも、海外でのバズを意識したものであることが解ります。
この公開により「死ぬのがいいわ」の魅力をより広くそして深く伝えることができたと言えますが、元来藤井風さんが冒頭で紹介した公式オーディオをきちんと用意していることも大きなポイント。J-Popではそこまで多くない印象がある公式オーディオをアップしていることで、TikTokからストリーミング(オーディオ/動画)の流れができていたと言えます。ライブ動画はその流れをより大きく、太くするものでもあるのです。
8月末から9月頭にかけて、藤井風さんはSpotifyでのプロフィール欄に英語も追記した模様。それも日本語より前に置くというのが、海外も意識していることの何よりの証明かもしれません。なお本日5時過ぎの段階で、Spotifyの今月のリスナー数では東京に次いでタイのバンコクが2位、インドネシアのジャカルタが4位に登場しており、「死ぬのがいいわ」のバイラル→デイリーチャート登場の効果を実感します。
そして、現地レコード会社の対応にも注目です。
@universalmusicindonesia Banyak yang bilang, ini lagu ganteng nih ❤️ #fujiikaze #shinunogae_wa #viral #laguviral #lagujepang #japansong #viralbanget #fyp #fypシ゚viral ♬ Shinunoga E-Wa - Fujii Kaze
藤井風さんはユニバーサルミュージック所属ですが、インドネシアの同グループが「死ぬのがいいわ」のライブ映像を、対訳を追記した形でTikTokアカウントに今月はじめにアップ。Instagram(→こちら)でも同種の対応をされています。
【記事掲載のお知らせ】#グリフィン「#TieMeDown」(with #エリー・ドゥエ)が発売から4年を経過して日本でヒットした理由を @uDiscoverJP に寄稿しました。きっかけはTikTokですが、その好機を逃さないレコード会社、そして楽しもうとする歌手側の姿勢がさらなるバズにつながっています。 https://t.co/W4zYeXX52E
— Kei (@Kei_radio) April 6, 2022
この対訳付き動画については、ユニバーサルミュージック側が効果の大きさを既に実感されています。グリフィン with エリー・ドゥエ「Tie Me Down」が日本でヒットした理由についてのコラムを今年春に寄稿したのですが、その際判明したのはレコード会社による追加投稿の重要性でした。インドネシアのユニバーサルミュージックによる動画投稿は、まさにその好例をなぞったものと言えるでしょう。
なお日本においても、藤井風「死ぬのがいいわ」は9月2日付Spotifyデイリーチャートで初のトップ50入り(42位ランクイン)を果たすと、26→18位と推移。日本においてはトップ50プレイリストの影響が大きく、50位の壁を突破した曲はその後数日間急上昇する傾向があることについては以前紹介しています。
ともすれば日本での50位以内ランクインにおいても、現地レコード会社のSNS動画投稿等による話題(が逆輸入されたこと)が影響したと言えるかもしれません。
SpotifyのグローバルデイリーチャートにおけるJ-Popのランクインはこれまでほぼなかったものと思われます。Spotify Japanの芦澤紀子さんによるインタビュー記事がこの春TOKIONに掲載されていますが、バイラルヒットには言及された一方、デイリーについては記載がみられません。海外ではEve「廻廻奇譚」が最も多く聴かれたJ-Popとして紹介されていますが、グローバルデイリーチャートでは200位以内に登場していません。
藤井風「死ぬのがいいわ」のグローバルデイリーチャート初登場が如何に特筆すべきことか、Spotify Japanは訴求する必要があると考えます。またSpotifyはグローバルや米英の週間チャート等を定期的に画像付きで紹介していることもあり尚の事、日本でも視覚的に解りやすい表示を徹底してほしいと願います。なおバイラルチャートについてはその表示が行われていますが(下記参照)、しかしながら不定期でのアップの模様です。
↗️"#VIRALTop50 Japan" 更新↗️
— Spotify Japan (@SpotifyJP) September 5, 2022
9月3日は...
🥇 "#チグハグ"
🥈 "#Attention"
🥉 "Hype Boy"
SNSで注目の音楽を#Spotify のバイラルチャートで🎧
▶︎https://t.co/gZ4vsbmGDu@supafuru_info@NewJeans_ADOR @NewJeans_jp @official__INI @fantastics_fext pic.twitter.com/NeZJDPvoJk
藤井風「死ぬのがいいわ」のSpotifyグローバルデイリーチャートへの登場は、このブログで毎週追いかけている米ビルボードによるグローバルチャート200位以内ランクインの可能性を高めたものと考えます。グローバルチャートは世界200を超える地域の主要デジタルプラットフォームにおけるダウンロードおよびストリーミングで構成。ストリーミングには公式動画も含まれるため、ライブ動画の公開もプラスに作用します。
Global 200、およびGlobal 200から米の分を除いたGlobal Excl. U.S.というふたつのグローバルチャートにおいて、J-Popのランクイン自体は少なくありません。藤井風「きらり」もランクインした実績がありますが、J-Popのランクイン曲は日本における所有/接触が獲得ポイントの大半であり、ロングヒットに至りにくい、またロングヒットしてもトップ10入りが難しいというのが現状でした。
J-Popのトップ10入りは、Global Excl. U.S.では3曲にとどまります(全編日本語詞のBTS「Film out」も登場していますが、K-Popアクトのため除いています)。明日公開予定の9月10日付でAdo「新時代」が3週目のトップ10入りを狙っていますが、これまでのトップ10最長滞在はLiSA「炎」の5週。主に所有指標に長けた一方、接触指標は高くないのが特徴でした。
K-Popにおいては接触指標も強くなっていますが失速も目立ち、初週に所有指標が強いことの反動も相俟ってランクダウンが速い傾向がありました。その中でBLACKPINKのメンバー、リサ(Lisa)による「Money」は接触指標の盛り上がりでグローバルチャートを駆け上がるという、K-Popとしては珍しい現象を起こしています。
この流れは今年デビューしたNewJeans「Attention」にも言えることで、K-Popのチャートアクションにおける新潮流ではないかと捉えていますが、J-Popにおいては藤井風「死ぬのがいいわ」がはじめてこの動きを示してくれるものと期待しています。