イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

米津玄師、藤井風…ヒット作品が過去作を動かし、”リカレントルールの壁を破る”ことについて

この1ヶ月において、ビルボードジャパンソングチャートでは米津玄師「IRIS OUT」が3連覇を達成し、10月1日公開分では6指標化後の最多週間ポイントを獲得。また「IRIS OUT」とダブルAサイドとしてフィジカルシングルに収録された宇多田ヒカルさんとの「JANE DOE」もソングチャートにて2週連続2位を獲得しています。一方アルバムチャートでは藤井風『Prema』が初登場から3連覇、且つ5週連続で2位以内に入っています。

(上記CHART insightは有料会員が確認可能なもので、20位未満の指標順位も明示されています(ビルボードジャパンでは有料会員が知り得る情報の掲載を許可しています)。また、以下に紹介するCHART insightも同様に、有料会員が確認可能なものとなります。)

 

このようなヒット曲/アルバムの誕生は過去作の上昇にもつながりますが、注目はその勢いが”リカレントルールの壁を破る”といえることにあります。

 

 

最新10月8日公開分ビルボードジャパンアルバムにおける、米津玄師さんおよび藤井風さんの総合100位以内エントリー作品をチェックします。なお後者においては先述した『Prema』を除きますが、ここで挙げる6作品には共通の特徴が見て取れます。

 

<10月8日公開分ビルボードジャパンアルバムチャート

 米津玄師および藤井風(『Prema』を除く)の100位以内エントリー作品>

 

※共に敬称略。

 

※CHART insightの説明

 

[色について]

黄:フィジカルセールス

紫:ダウンロード

青:ストリーミング

 

[表示範囲について]

総合順位、および構成指標等において100位までを表示

直近60週分を表示

 

[チャート構成比について]

累計における指標毎のポイント構成

 

・米津玄師『STRAY SHEEP』(2020) (総合16位)

 (100位以内登場211週目 ストリーミング指標13位)

・米津玄師『BOOTLEG』(2017) (総合30位)

 (100位以内登場227週目 ストリーミング指標23位)

・米津玄師『LOST CORNER』(2024) (総合31位)

 (100位以内登場59週目 ストリーミング指標27位)

・米津玄師『YANKEE』(2014) (総合96位)

 (100位以内登場245週目 ストリーミング指標88位)

・藤井風『HELP EVER HURT NEVER』(2020) (総合28位)

 (100位以内登場229週目 ストリーミング指標29位)

・藤井風『LOVE ALL SERVE ALL』(2022) (総合29位)

 (100位以内登場181週目 ストリーミング指標30位)

 

注目はストリーミング。昨年最終週に初めて組み込まれたこの指標は、現在ではソングチャート同様にロングヒットの要となっています。一方で今年6月4日公開分にて上記6作品のストリーミング指標はすべて後退していますが、これはビルボードジャパンがリカレントルールを導入したことに伴うものです。

ビルボードジャパンによるリカレントルールは、Streaming SongsチャートおよびStreaming Albumsチャート(後者は未公表)を指標化する際、ソングチャートは総合100位以内に52週、アルバムチャートでは同26週ランクインした作品に、翌週以降減算処理を施すもの。これにより新たなロングヒット作品はいわば不利になったといえますが、米津玄師さんおよび藤井風さんの過去作ははっきり上昇していることが読み取れます。

もっといえば、ここで挙げた多くの作品において、ストリーミング指標はリカレントルール適用直前の順位近くに戻ってきています。仮にリカレントルールが存在しなければ順位はもっと上がったはずですが、”リカレントルールの壁を破る”だけでも勢いの大きさを感じるに十分です。冒頭でお伝えした「IRIS OUT」や『Prema』のヒットを機に、米津玄師さんや藤井風さんの作品に如何に注目が集まっているかがこの点から解ります。

 

 

社会的ヒット作品はその輩出歌手の過去作にも光を当てることにつながることが今回明らかになったといえます。言い換えるならば、(これは意地悪な見方かもしれないと前置きした上で述べますが)チャート上でヒットしたように映る作品であってもその歌手の過去作の動きが乏しいならば、そのヒット規模は大きいといえない、もしくはライト層やコアファンを動かしているとは言い難いといえるかもしれません。