昨日は時折お手伝いさせていただいているラジオ番組にて、BE:FIRSTの特集を組む機会をいただきました。お聴きくださった皆さん、この場所を用意してくださった方々に感謝申し上げます。
この番組は新旧洋邦、名曲から迷曲までを網羅する番組ですが、時折スタッフのレコメンド特集もお送りしています。実はBE:FIRSTにおいては10ヶ月ぶり二度目という短いスパンでの再特集となりました。前回の特集内容は下記ブログエントリーにてまとめています。
昨年11月14日放送分では手持ちの音源だけで番組構成分(およそ10曲)に届かなかったものの、デビュー曲「Gifted.」の衝撃(この曲がJ-Popとして、日本の音楽業界に放たれた意義)について紹介し、想起する作品群も交えてプレゼンしています。多くの方から反応いただき、心より感謝申し上げます。
BE:FIRSTはフィジカルシングルの表題曲となる「Gifted.」「Bye-Good-Bye」、そして先週リリースされた初のアルバム『BE:1』からのリード曲「Scream」でビルボードジャパンソングスチャートを制覇。「Bye-Good-Bye」のカップリングでデジタル先行リリースの「Brave Generation」および「Betrayal Game」もトップ10入りを果たし、フィジカルシングル収録の3曲がトップ10入りするという稀有な状況も生んでいます。
BE:FIRST側は動画投稿タイミングやキャンペーンを熟知し週間チャートでの最大成果を得ることに長けています。LINE MUSIC再生キャンペーンはコアファンに過度な負担を強いる可能性もあり個人的には歓迎しかねる部分はありますが、歌手側やコアファンのチャートに対する意識の高まりそのものは海外のそれを彷彿とさせる意味でも歓迎すべきことです。
ビルボードジャパンは社会的ヒットの鑑を目指し、より長くヒットする曲が真のヒット曲となるべくチャートポリシー(集計方法)をその都度変更しています。BE:FIRSTの最大のヒットとなる「Bye-Good-Bye」はソングスチャート100位以内在籍が23週(3月16日~8月17日公開分)となり、他の曲に比べて長いとは言い切れませんが、しかしJ-Popのアイドルやダンスボーカルグループの中では非常に強いと言えます。
「Bye-Good-Bye」というヒット曲にしてライト層への名刺代わりとなる作品、そして以前ラジオで特集を組んだ「Gifted.」というジャンルやJ-Popの枠を超えコアファンをより喜ばせる作品も収録したBE:FIRST『BE:1』は、明後日発表のビルボードジャパンアルバムチャートで初登場首位の座に就こうとしています。アルバムにおいても様々な施策がみられ、マーケティング的にも興味深いグループと言えます。
データについては、ジェイ・コウガミさんがビルボードジャパンに寄稿したコラムがBE:FIRSTのアルバムリリースまでを追うのに解りやすい内容となっていますのでそちらも是非チェックしてみてください。
<コラム>記録更新が続くBE:FIRST 1st AL『BE:1』への期待に加えて「成長度合い」にも注目 https://t.co/ko1DhFxQrk pic.twitter.com/PB5bYZ0vjf
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) August 29, 2022
今回はニューアルバム『BE:1』から、個人的なお勧めをベースにお届けしました。
・9月4日放送『わがままWAVE It's Cool!!』
(FMアップルウェーブ 日曜17時)
音楽特集【BE:FIRST】
<お送りした曲目>
01. BE:FIRST「Bye-Good-Bye」
02. BE:FIRST「Shining One - Re-recorded」
~ここから特集~
特集前半OP. BE:FIRST「BF is...」
03. BE:FIRST「Gifted.」
04. BE:FIRST「Scream」
05. ジョナス・ブルー feat. BE:FIRST「Don't Wake Me Up」
特集後半OP. BE:FIRST「Brave Generation」
06. BE:FIRST「Softly」
07. BE:FIRST「Milli-Billi」
08. BE:FIRST「Message」
~ここまで特集~
09. BE:FIRST「To The First」
特集前の2曲は、BE:FIRSTの作品の中でもより多くの方に知られているだろう作品を配置。アルバムのインタビュー等では「Gifted.」制作の段階で既に「Bye-Good-Bye」が存在し、プレデビュー曲の「Shining One」に続いて「Bye-Good-Bye」を用意した場合のイメージを考えていた模様。ゆえにデビュー曲に「Gifted.」を用意したSKY-HIさんの采配は、BE:FIRSTに多面的な魅力をもたらした意味でも見事と言えます。
勿論、「Bye-Good-Bye」や「Shining One」の支持の大きさは素晴らしいことです。たとえば前者においては、BTSの英語詞曲「Dynamite」「Butter」そして「Permission To Dance」の流れも汲んでいる印象があります。
また「Shining One」(今回お送りしたのはアルバムリリースに合わせて再レコーディングしたバージョン)は、今の流行の一端である2000年前後の音楽の踏襲が垣間見えます。この曲から想起したのはキャンディ(Kandi)による「Don't Think I'm Not」。R&Bグループ、エクスケイプの一員であり、プロデューサーのシェイクスピアと組んで短期間に大ヒット曲を量産した彼女が用いたサウンドがブラッシュアップされています。
「Gifted.」については、今回のブログエントリー冒頭で紹介した昨年11月の特集内容を是非ご覧ください。そして前半オープニング曲の「BF is...」~「Gifted.」に続いてお送りしたのが「Scream」。その歌詞からはBE:FIRST、そして彼らを輩出したSKY-HIさんの思いが見えてきます。また同名異曲にはマイケル・ジャクソンとジャネット・ジャクソンによる共演版があり、米ビルボードソングスチャートで最高5位を記録しています。
マイケル兄妹版「Scream」は、デビュー後しばらくはヒット曲が生まれず"マイケルの妹"と揶揄されたジャネットが、プロデューサーのジャム&ルイスと組んだ『Control』(1986)で一気に大スターとなり、そのジャム&ルイス制作曲でマイケルをフックアップしたとも位置付けられる作品。チャート首位には至れずも、大きな意義のある曲と感じています。
そのジャネット・ジャクソンは、特に『Rhythm Nation 1814』(1989)以降においてアルバムの曲間にインタールードを挿入し、アルバムの世界観をより強く打ち出してきました。今回のBE:FIRST『BE:1』においては冒頭の3曲、また「Milli-Billi」~「Spin!」~「Move On」に代表されるような前後の流れを意識した作品が(インタールードの挿入なく)配置され、ジャネットの作品群を思い出した次第。
『Rhythm Nation 1814』にはジャム&ルイスが直接関わっていない作品も登場します。それがシングル化もされた「Black Cat」で、アルバムの中でもロックテイストが強い異色のナンバー。BE:FIRST『BE:1』においても、ロックフェス出演のタイミングで制作された「BF is...」同様にイントロからロック色の強い作品が収録されています。それが「Brave Generation」です。
(上記はリリックビデオ。)
「Brave Generation」のプロデュースを手掛けたのが、今の日本のヒップホップ業界に欠かせない存在となったKMさん。USヒップホップでもロックテイストが取り込まれている傾向があり、そのトレンドも反映したと言えます。KMさん制作曲では、Daichi Yamamotoさんとの共演作でCrystal Kayさんががっつりラップを披露している「Gimme Some」が特にお勧めです。KMさんの作品群はSpotifyでプレイリスト化されています。
アルバムには今の日本でダンスミュージックやヒップホップを支える制作陣が多数参加していますが、特に惹かれたのが「Moment」におけるLOARさんやfofuさんの存在。毎月セレクトしている私的トップ10ソングスでは彼らの「How We Gonna」を選出したので尚の事です(下記ブログエントリー参照)。
参加しているのは若手だけではありません。日本を代表するR&Bグループ、Full Of HarmonyのHIROさんがソングライトやボーカルディレクションに参加したのが、BE:FIRSTのユニット曲となる「Softly」。RYUHEIさん、LEOさん、MANATOさんそしてJUNONさんによるラブソングで、ここで意識していたのが1990~2000年頃のR&Bとのこと。
この時代はR&Bグループが雨後の筍の如く登場し、セクシーなラブソングも多く誕生。R&B誌では優等生なボーイズIIメンに対しジョデシィのやんちゃっぷりを支持する声も少なくありませんでしたが、こういう色気の強い曲をファーストアルバムで歌いこなせることが、R&B好きにとっては嬉しくなります。
個人的な白眉はJUNONさんの、ファルセットでも地声と変わらない力で歌い上げる姿勢。1980年代にはなりますが、シェリックがそのような声の持ち主だったと思い出しました。加えて、実力派4名によるラブソングはクインシー・ジョーンズの下で誕生したバリー・ホワイト、アル・B・シュア!、ジェイムス・イングラム & エル・デバージ「The Secret Garden (Sweet Seduction Suite)」を彷彿。実力を重ね、「Softly」をより深い歌声で届けてくれるようになるものと期待しています。
(シェリックの公式動画はYouTubeにないため、後述するSpotifyのプレイリスト等をご参照ください。)
BE:FIRSTのユニット曲としてはもう1曲、SHUNTOさん、RYOKIさんそしてSOTAさんによる「Spin!」もありますが、今回「Softly」に続いてお送りしたのが「Milli-Billi」でした。おそらくはミリオン(Million)とビリオン(Billion)をかけ合わせた造語であり、フィジカルのミリオンセールスのみならずサブスク時代における億単位の再生回数等人気の測り方が多様化される今、その全てを勝ち取るべく邁進する姿勢を示した曲と言えます。
BE:FIRSTを輩出したSKY-HIさんは、Stray Kids内ユニットである3RACHAを迎えた「JUST BREATHE」を今年リリース。そのStray Kidsの来日公演にBE:FIRST共々観に行った際、3RACHAのみならずメンバー全員がラップを披露したことに感銘を受けたそう。歌、ダンスそしてラップまで果敢に挑む彼らの姿勢にこそ、受け手は感銘を受けるのです。
特集最後にお届けした「Message」は、Spotifyの新曲プレイリスト"New Music Wednesday"(8月31日更新分)や"New Music Friday Japan"(9月2日更新分)に選出され、同プラットフォームで再生回数を伸ばしてきた作品。「Softly」よりも直球で明るいラブソングであること、またポップな曲調は、アルバムでこの曲に続く「Bye-Good-Bye」共々人気を博しそうです。
今回の選曲は昨日の朝までに終えたのですが、その後番組の生放送までにアルバムを聴き返すうち、他の曲も紹介したいという思いが強まった自分がいます。特に「Kick Start」(フィジカルシングル「Gifted.」のカップリング曲でアルバム『BE:1』には未収録)のアンサーソングとして制作された「Grateful Pain」の高揚感たるや。シンプルなトラックだからこそ、7名の滾る思いがよりダイレクトに届きます。
音楽特集を経て最後にお送りしたのは「To The First」。SKY-HIさんによる曲は、BE:FIRSTを輩出したオーディション番組"The First"で課題曲に用いられ、参加した11名が披露していました。
「To The First」はアルバム『BE:1』初回限定盤のボーナストラックとして収録。SKY-HIさんはアルバムをフィジカルでもデジタルでも楽しんでもらうべく様々な仕組みを用意していますが、この曲はフィジカル購入につながる大きな武器になるでしょう。そして『BE:1』は、Twitterのスペース(音声配信機能)にて数回コラボしている、ブログ【ただの音楽ファンがみる音楽業界】の管理人RYOさんも絶賛しています。
BE:FIRST(@BEFIRSTofficial )のアルバム「BE:1」の全曲レビューをしました。
— RYO@音楽ブログ (@yo19930223) September 3, 2022
1曲1曲のクオリティの高さ。これ以上にない素晴らしい曲順。アルバムとしても最高の1枚でした。是非、アルバムを聴くきっかけに。#BEFIRST #Scream #BE_1 #ビーワン https://t.co/PSlVmd3JMy
ジャンルの多様さ、デビュー以降さらに高めた実力、1曲1曲の高クオリティそしてオリジナルアルバムとしての訴求力等、『BE:1』は特筆すべき事項が多いと言えますので、一聴することをお勧めします。今回のラジオ特集やブログエントリーが、触れるきっかけになったならば幸いです。
最後に。『BE:1』が、そしてBE:FIRSTが日本の音楽業界に放たれた意義を汲み、高クオリティに素直に心動かされた方は、もっと声を上げてほしいと願います。彼らが未だ満足いく活動ができない場所があることは、彼らをはじめとするダンスボーカルグループのみならず日本の音楽業界全体が発展に至れないという点で大きな損失であることを、その場所にいる方に考えていただきたいと強く願います。
今回紹介した曲を含むプレイリストは、【BE:FIRST『BE:1』& reminds me of the songs】としてSpotifyに作成しています。是非ご活用ください。