ビルボードジャパンソングチャートのラジオ指標は、全国の主要ラジオ局(県域放送局)におけるオンエアチャート(プランテック調べ)を基に、各ラジオ局の聴取可能人口等を加味した上で算出されます。その指標化の基となるオンエアチャート、10月8日公開分の記事では興味深い文言を確認できます。
2位はAdo「風と私の物語」が前週13位から浮上した。映画『沈黙の艦隊 北極海大海戦』主題歌で、宮本浩次(作詞作曲)とまふまふ(編曲)との豪華コラボでも話題の同曲。映画公開当日9月26日の配信リリースに大きく先がけ、同9日よりオンエアが開始されると9月8日~9月14日チャートで121位に初登場。その後順調に上昇し続け、チャートイン4週目を迎えた今週、前週比166%のオンエア増で最高位へと順位を上げた。
週を追うごとにオンエア範囲を広げいき、今週は74.2%のステーションへと波及。話題性もさることながら、長期にわたるオンエアで上がっていった楽曲認知度に比例し、リクエストオンエア数が伸び続けている点も特筆すべきだろう。次週以降のチャートアクションにも期待したい。
プランテックでは、Ado「風と私の物語」におけるラジオオンエアチャート4週目での2位到達を『長期にわたるオンエアで上がっていった』と紹介しています。チャート上昇に要した時間が他の曲よりも長いという意味での形容かもしれませんが、それでもこの紹介は気になっています。
ソングチャートを構成する指標のうち、ラジオは接触指標の中でも聴き手(リスナー)に選曲権が基本存在しない受動的、特殊なものとなります。社会的ヒット且つロングヒット曲の要となり、ソングチャートにおけるポイント構成比の過半数を占めるストリーミング指標とは異なり、ラジオは同じ接触指標ながら4週ランクインで”ロングヒット”と捉えられているということが、先述した記事からみえてきます。
そもそも、上記CHART insightでは緑で示されるラジオ指標は、他指標(所有指標よりもともいえるかもしれません)に比べてロングヒットしにくいことが特徴です。その中にあってCreepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」は10月に二度300位圏外になったことを除き、常時加点されていました。この指標での最高位は6位と決して高くはないのですが、安定することの重要性をこの曲の動向から理解することができます。
このブログではプランテックによる年間のラジオオンエア(エアプレイ)チャートを昨年末に紹介していますが、当週のプランテックによる記事を踏まえれば、Creepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」が如何にロングヒットしたかがよく解るでしょう。
ラジオ指標の基となるラジオオンエアチャートにおいて4週がロングヒットの目安だとすれば、放送局で月間パワープレイ(ヘビーローテーション)に選ばれている曲、またパワープレイと位置付けられていなくとも歌手側の施策(ラジオ局側の協力もあって)により長期オンエアに至る曲もまた、ラジオにおいてはロングヒットしたと捉えられるのかもしれません。
ただロングヒット直後に急落するならば、施策以外を要因とするオンエアが乏しくラジオ局側の支持を受けていないといえるでしょう。

その最たる例がTREASURE「PARADISE」。interfmにおけるパワープレイについては前週トップ10初登場曲の最新動向と、TREASURE「PARADISE」が2週連続で10位を記録した要因について(9月20日付)で紹介するも、10月8日公開分でラジオが3位から300位未満へと急落し、他指標もカウントされていない状況です。最新10月8日公開分ビルボードジャパンソングチャートのデータがないのは、構成指標がすべて300位未満のためです。
パワープレイやそれに準じた扱いを受けるべく施策を打つ歌手側が、ラジオでの4週ランクインに満足するのならばそれは違うと考えます。ラジオ業界に真に愛されるためには局側との良好な関係も保ちつつ、歌手のコアファンだけではなくラジオを介して好きになってくれたライト層からのリクエストを増やし、オンエアを持続させることがまずは大事なのではないでしょうか。
米ビルボードソングチャートではラジオがストリーミング(動画再生含む)、ダウンロード(フィジカルセールス含む)と共に指標の一員となり、その影響力はストリーミング並に大きいといえます。また支持を集める曲は急落しにくいのも特徴です。
自分はラジオの影響力等現状を踏まえ、この指標をビルボードジャパンソングチャートから外す可能性を議論するよう提案していますが(2025年度の集計開始日に、ビルボードジャパンへの改善提案をまとめる(2024年11月25日付)参照)、日本のラジオ業界が歌手側からの施策に左右されすぎることなく、好い曲を純粋に推す姿勢を採るならば、ロングヒットの概念も変わっていくものと捉えています。
