イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

前週トップ10初登場曲の最新動向と、aespa「Dirty Work」における再生キャンペーン後の推移について

昨年夏以降再開したこのエントリーですが、先週よりタイトルを”前週トップ10初登場曲の最新動向”に変更した上で、副題を新たに設けています。前週の内容はこちら。

 

ビルボードジャパンソングチャートの動向を分析する者として、真の社会的ヒット曲とはロングヒットする、年間チャートで上位に進出する作品と考えます。週間単位で上位に入るのは好いことですが、他方で所有指標が極度に強い曲は加算2週目に、また接触指標が所有指標的な動きをなぞる曲(主にLINE MUSIC再生キャンペーン採用曲)はキャンペーン終了後に指標が大きく後退し、総合でも急落することが少なくありません。

この急落は毎週のようにみられます。ソングチャートのトップ10は多いときで5曲程度が毎週入れ替わり、ロングヒットするか否かが極端に分かれる状況です。主にライト層の支持が反映されるストリーミングがロングヒット曲では強い一方、急落する曲はコアファンとライト層との乖離が大きいのですが、これらを1週分のチャートの順位およびポイントのみで判断することは、現状では難しい状況です。

そのため、このブログエントリーではビルボードジャパンに対しチャートポリシー(集計方法)の改善も提案していますが、あくまで自分なりのと前置きしつつもチャートの見方を提示したいと考えたのが、エントリー掲載の理由です。

 

<2025年7月16日公開分 ビルボードジャパンソングチャート

 前週初めてトップ10入りした作品の、前週および当週におけるCHART insight>

 

※CHART insightの説明

 

[色について]

黄:フィジカルセールス

紫:ダウンロード

青:ストリーミング

黄緑:ラジオ

赤:動画再生

緑:カラオケ

濃いオレンジ:UGC (ユーザー生成コンテンツ)

 (Top User Generated Songsチャートにおける獲得ポイントであり、ソングチャートには含まれません。)

ピンク:ハイブリッド指標

 (BUZZ、CONTACTおよびSALESから選択可能です。)

 

[表示範囲について]

総合順位、および構成指標等において20位まで表示

 

[チャート構成比について]

累計における指標毎のポイント構成

 

TWS「はじめまして」

 7月9日公開分 1位→7月16日公開分 22位

モーニング娘。'25「気になるその気の歌」

 7月9日公開分 2位→7月16日公開分 100位未満

・aespa「Dirty Work」

 7月9日公開分 4位→7月16日公開分 14位

Mrs. GREEN APPLE「Carrying Happiness」

 7月9日公開分 8位→7月16日公開分 19位

 

当週のストリーミング表はこちら。


ストリーミング指標未加点が続くTWS「はじめまして」については、ラジオ指標の強さが総合における下落幅を抑えた要因といえます。この点は(追記あり) ビルボードジャパンソングチャート上位3曲は僅差…Mrs. GREEN APPLE「breakfast」が急伸した背景(7月17日付)でも述べたように、主に男性アイドルやダンスボーカルグループにおけるラジオ施策が活きたものと捉えていますが、やはりデジタルの強化は課題でしょう。

 

最も大きく後退したモーニング娘。'25「気になるその気の歌」(総合2位→100位未満)については、以前指摘した内容がそのまま当てはまります。

一方でつばきファクトリー「My Days for You」が総合4位から100位未満へと後退したのは、ストリーミングの未解禁が大きいと考えます。所属するハロー!プロジェクトではフィジカルセールスに強い歌手のサブスク未解禁が続いていますが、そこには以下の背景が考えられます。

この曲のYouTube動画タイトルには”Promotion Edit”と記されており、他のハロー!プロジェクト所属歌手作品にもみられる傾向です。サブスク未解禁同様、ハロー!プロジェクトのフィジカルセールス優先という姿勢を示すといえるかもしれません。

 

(※ YouTubeにて"Promotion Edit"と検索すると、ハロー!プロジェクト所属歌手関連曲が上位に登場します。検索結果はこちら。)

 

前週トップ10初登場曲の最新動向、およびサブスクを解禁することの重要性について(6月21日付)より

ハロー!プロジェクトにおいては、2020年に解散したこぶしファクトリーのサブスク解禁が始まったばかりですが、現役で活動し且つ高いフィジカルセールスが見込める歌手のサブスク解禁は未だ行われていません。

ハロー!プロジェクト側がなぜサブスク解禁に懐疑的なのか、音楽業界側から問う声が上がることを切望します。

 

 

さて当週はaespa「Dirty Work」が総合4→14位に後退していますが、同曲では今回のチャート集計期間2日目までLINE MUSIC再生キャンペーンが行われていました。

7月2日水曜からの1週間を対象に、『aespa「Dirty Work」をLINE MUSICアプリでフル尺で627回以上再生』『aespaを「My推し」に設定』等の条件を満たした方の中から抽選でミートアンドグリートイベントに招待というのが再生キャンペーンの企画内容であり、また1回再生すれば『全員に直筆メッセージ画像をプレゼント』という企画も用意されていました(『』内はいずれも上記記事より)。

LINE MUSIC再生キャンペーンの集計期間は同サービスにおける週間チャートの集計期間と完全に合致しており、その企画終了後には前週の4位から32位に後退しています。しかしながら再生キャンペーン終了後の順位としては高いほうであり、またAmazon Musicを除き週間40位以内に入っていることは好調の証といえるでしょう。

今後aespa「Dirty Work」がロングヒットに至るかの注視は必要ながら、LINE MUSIC再生キャンペーンの副作用と呼べるような急落は免れた形です。再生キャンペーンを採用する歌手においての理想形と言うには大げさかもしれませんが、しかし好調な動向であることには間違いないでしょう。尤も、ファンダムに過度な負担を与えないという意味でも再生キャンペーンに頼らない形でのヒット輩出がより好いと考えます。