最新6月11日公開分のビルボードジャパンソングチャートではSixTONES「BOYZ」を皮切りに、STARTO ENTERTAINMENT所属歌手作品が8曲エントリーを果たしています。SixTONESの3年ぶりとなるソングチャート制覇を含め、STARTO ENTERTAINMENT所属歌手作品のソングチャートにおける存在感上昇にはデジタルの解禁が影響しているとして、先週のエントリーにて8曲の動向を紹介しています。
今年度はデジタル(特にストリーミング)の人気の差、そして歌手側による取組の差が、アイドルやダンスボーカルグループにおける勢力図の変化につながっていると捉えています。最新チャートではこのジャンルの作品が他にも多くランクインしていることから、今回は当週50位以内に入った主要曲を採り上げ、ランクインの要因や気になる点を紹介します。なおBE:FIRSTによる2曲については、下記エントリーをご参照ください。
今回掲載するCHART insightは、有料会員が確認可能なものとなります。有料会員は総合および各指標20位未満の動向を確認可能であり、ビルボードジャパンは有料会員のみが知り得る情報の掲載を可能としています。また、CHART insight有料会員が確認可能な情報を踏まえた上で作成した、6月11日公開分ビルボードジャパンソングチャートのストリーミング表はこちらです。
つばきファクトリーによる真野恵里菜さんのカバー曲「My Days for You」が6月11日公開分ビルボードジャパンソングチャートで4位に初登場。一方、つばきファクトリーが所属するハロー!プロジェクトではフィジカルセールスに強いグループのサブスク解禁を未だ行っておらず、今回もストリーミング指標は未加算となります。
この曲のYouTube動画タイトルには”Promotion Edit”と記されており、他のハロー!プロジェクト所属歌手作品にもみられる傾向です。サブスク未解禁同様、ハロー!プロジェクトのフィジカルセールス優先という姿勢を示すといえるかもしれません。
NGT48「希望列車」が13位に初登場。他方、フィジカルセールスと他指標とで乖離がみられるのが特徴です。
AKBグループはフィジカルリリース後、フィジカルセールス指標が再浮上することが少なくありません。これはフィジカルセールスに特化した施策の影響と思われますが、しかしその施策が他指標をフックアップすることは乏しく、フィジカルセールスに伴い総合100位以内に返り咲いても再度降下することが目立ちます。
前週6月4日公開分ビルボードジャパンソングチャートではNMB48「チューストライク」が総合21位、AKB48「まさかのConfession」が同36位に再浮上しながら、当週は100位圏外へ後退。フィジカルリリース後のフィジカルセールス施策はAKB48グループ以外でもみられますが、この施策が累計売上枚数の順位と指標化後のそれとでの乖離につながるため、弊ブログではビルボードジャパンに対し改善提案を記しています(→こちら)。
櫻坂46が6月25日にリリースするフィジカルシングルの表題曲「Make or Break」が46→21位に上昇。ストリーミング指標(Streaming Songsチャートの指標化後の順位)は29→12位と推移し好調に映る一方、ストリーミング表をみればLINE MUSICと他のサブスクサービスとで乖離が発生していることが解ります。これはLINE MUSIC再生キャンペーン採用の影響に伴うものです。
・12thシングル『Make or Break』リリース記念・LINE MUSICプレゼントキャンペーン実施決定! | ニュース | 櫻坂46公式サイト(5月29日付)より
(※キャンペーン終了後に削除される可能性を踏まえ、キャプチャしたものを貼付しています。問題があれば削除いたします。なお上記リンク先では『抽選となるA賞については、たくさん聴いてくださった方は当選確率アップ!』とも記されています。)
櫻坂46のフィジカルシングル表題曲はLINE MUSIC再生キャンペーン効果もあり、フィジカルリリース前から存在感を高めています。この傾向は日向坂46においてもみられ、最新曲「Love yourself!」も好調に推移しているように映ります。
日向坂46「Love yourself!」のLINE MUSIC再生キャンペーンは6月10日で終了しており、ブログエントリー執筆時となる時点での最新デイリーチャート(6月15日付)では同曲が100位以内に入っていません。再生キャンペーンと対象期間が被らなくなる6月25日公開分ビルボードジャパンソングチャート(集計期間:6月16~22日)で「Love yourself!」が失速する可能性は低くはなく、やはり他のサブスクサービスでの人気獲得が必要です。
(上記はBUDDiiS「LÖVE ME」のCHART insight。曲名に”Ö”が用いられているため、6月11日公開分においては曲名が”L?VE ME”と表示されています。他方、6月4日公開分では「LOVE ME」と表記されており、ブログエントリー執筆時点ではCHART insightが別々に用意されているという状況です。)
LINE MUSIC再生キャンペーンの影響が大きく反映しているのはBUDDiiS「LÖVE ME」も同様で、再生回数のハードルが9,999回に設定されています(キャンペーンの内容はこちら)。スターダストプロモーション所属の男性アイドル/ダンスボーカルグループ、いわゆるEBiDANではM!LKをはじめ再生キャンペーンを多く採用していますが、上半期に若年層を主体に流行した「イイじゃん」もキャンペーン後急落しているという状況です。
ここまではデジタル自体が強くない、もしくはストリーミングがヒットしてもサービス間で偏りがみられる作品について紹介しましたが、一方でKAWAII LAB.所属歌手による作品はストリーミングヒットに伴い、総合チャートでの上昇や安定が目立ちます。
CANDY TUNE「倍倍FIGHT!」は2週連続でトップ20入り、またCUTIE STREET「かわいいだけじゃだめですか?」は35週連続で100位以内エントリーを果たしています。動画の強さがストリーミングに波及しているのみならず、後者においてはフィジカルセールスがほぼ毎週100位以内に入っていることも特徴です。
そして、ストリーミングヒットのフェーズに入っているのが=LOVE「とくべチュ、して」。フィジカルセールス初加算時に総合4位を獲得した同曲はその2週後に100位圏外へ後退しながら、動画を契機としたストリーミングヒットに伴い8週連続で100位以内エントリーを果たしています。
「とくべチュ、して」はミュージックビデオがキャリア最速となる45日間で1000万回を突破しながら、しかしソングチャートの動画再生指標は一度も加点されていません。動画再生指標のカウント対象となるISRC(国際標準レコーディングコード)が歌手側の公式YouTubeチャンネルにて対象動画に付番されていないことが原因とみられますが、これがヒットの拡大につながっていないことを勿体なく感じます。この改善は急務です。
その動画再生指標を獲得し、上昇し始めているのが超ときめき♡宣伝部「超最強」。2024年12月のリリース曲は前週総合92位に初登場すると、最新チャートでは44位に上昇。主要サブスクサービスでも乖離が大きくありません。今月に入りライブパフォーマンス映像を公開、また6月20日にミュージックビデオの公開を決定しティザー映像を次々発信する等、ヒットの手応えを掴んだ上での施策が目立ちます。
そしてアイドルやダンスボーカルグループにおいて、とりわけ強いのがHANAです。
初のフィジカルシングル表題曲「ROSE」は二度の週間チャート制覇を含め、10週連続でトップ10入り。さらにはカップリング曲の「Drop」が最新チャートで28位(最高位は4月16日公開分での19位)、「Tiger」が29位(最高位更新)を記録し、ソングチャートとアルバムチャートを合算したトップアーティストチャートでは9位に入っています。わずか3曲のリリースにて、このチャートで10週連続で14位以上に入っているのは驚異的です。
だからこそ、昨日付エントリーで記したように『NHK紅白歌合戦』の出場は確実というのが自分の見方です。
アイドルやダンスボーカルグループにおける出場歌手予想は下記をご参照ください。なおその際に記していますが、今後大ヒット曲が登場する可能性もあり、それによって状況はさらに変わるでしょう。
現時点にて、デジタル(特に接触指標群)を味方にし、そのための施策を徹底する歌手と、フィジカルにこだわる歌手とでアイドルやダンスボーカルグループのチャート動向は分かれているといえます。またデジタル施策においてはコアファンの熱量を意識したLINE MUSIC再生キャンペーンを主体とする歌手も少なくないのですが、接触指標は本来ライト層人気が長く反映されるという考えの下で施策を立てるほうが好いでしょう。