イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

日本でのヒップホップ人気を、ビルボードジャパンアルバムチャートが証明していることについて

ビルボードジャパンアルバムチャートにおいて、昨年最終週よりストリーミング指標が組み込まれています。また今年度下半期からは総合チャートに27週以上ランクインした作品において、Streaming Albumsチャート(このチャート自体は非公表)をストリーミング指標化する際に減算処理を施すリカレントルールを適用しています。

これらチャートポリシー(集計方法)の変更により聴かれているアルバムがフックアップされ、さらに下半期からは新しい作品へのスポットがより強く当たる形となっています。そしてこれらの変更が、ヒップホップ作品のヒットを可視化しています。

 

なお、今回採り上げるヒップホップ作品については、ポップジャンルおよびポップとクロスオーバーする歌手の作品を除いています。この判断基準にはnoteプロデューサー/ブロガーの徳力基彦さんによる下記エントリーも参考にしています。

(今回のエントリーで紹介する7月9日公開分ビルボードジャパンアルバムチャートのCHART insightは、有料会員が確認可能な20位未満の指標順位が明示されています。なお、ビルボードジャパンでは有料会員が知り得る情報の掲載を許可しています。なお各指標はフィジカルセールスが黄色、ダウンロードが紫およびストリーミングが青で表示されます。)

 

 

2025年度上半期のビルボードジャパンアルバムチャートでは、BAD HOP『BAD HOP』が10位にランクインしています。

昨年2月リリースの『BAD HOP』は同年2月14日公開分で総合21位に初登場すると、ダウンロード指標のみ(フィジカルは後発)で4週連続ランクイン。その後アルバムチャートにストリーミング指標が組み入れられた同年12月25日公開分で総合16位に返り咲くと、翌年1月8日公開分で最高位となる7位に到達しています。ストリーミング指標はリカレントルール適用に伴いダウンするも、現在も総合40位以内を走行中です。

解散したBAD HOPのメンバーのひとり、YZERRさんが今年2月にリリースした『Dark Hero』は2月19日公開分ビルボードジャパンアルバムチャートで総合11位に初登場すると、翌週はダウンロード指標が後退しながらストリーミング指標が11→9位に上昇し、総合でも10位に到達。登場16週目の上昇はリカレントルール適用作品の後退に伴うもので、21週連続でストリーミングおよび総合にて100位以内に登場しています。

 

昨年11月にリリースされたLANA『20』は同月ダウンロード指標のみで総合アルバムチャート84位に初登場した後、年末にはアルバムチャートへのストリーミング指標組入に伴い総合36位に返り咲き。今年4月に同指標が急伸したことに伴い総合でも11位まで上昇すると、リカレントルール導入および適用作品の後退に伴い6月11日公開分で総合8位に浮上。『20』はリカレントルール適用直前に初のトップ10入りを果たした形です。

 

今年5月にリリースされたKEIJU『N.I.T.O.』は上位で安定。ストリーミング指標は三度のトップ10入りを含め20位以内エントリーを続け、総合でも初登場時および5週目に10位を記録する等8週連続で20位以内にランクインしています。

 

Kaneee『Remember Me?』は昨年6月のリリースながら、ビルボードジャパン総合アルバムチャートへの100位以内ランクインはストリーミング指標が組み込まれて以降に。「Life Is Romance」のヒット(ビルボードジャパンソングチャートでは1月29日公開分で最高66位を記録)がアルバムも牽引し、『Remember Me?』はストリーミング指標最高30位、総合では33位を記録しています。

 

JJJ『MAKTUB』は一昨年5月に総合82位に初登場していますが、4月の訃報を受けてフィジカル以上にデジタル、特にストリーミング指標が急伸。4月23日公開分ビルボードジャパンアルバムチャートで総合19位に再登場した後もストリーミングは100位未満ながら聴かれ続け、リカレントルール開始および適用作品の後退を受けて再びストリーミング指標100位以内、総合でも52位に再浮上しています。

 

 

今年初開催されたMUSIC AWARDS JAPANでは、国内のヒップホップ2部門をCreepy Nutsが受賞しています(最優秀国内ヒップホップ/ラップアーティスト賞、および「Bling-Bang-Bang-Born」で最優秀国内ヒップホップ/ラップ楽曲賞を獲得)。最新アルバム『LEGION』は22週連続でランクインし、リカレントルールも現時点では適用されていませんが、ストリーミングの安定度はBAD HOP『BAD HOP』が勝るといえそうです。

一方、MUSIC AWARDS JAPANでは最優秀海外ヒップホップ/ラップ楽曲賞をケンドリック・ラマー「Not Like Us」が受賞していますが、そのケンドリックが昨年末にリリースした『GNX』は「Not Like Us」未収録ながら、日本でもストリーミングが牽引する形で総合チャートでも長期エントリーを果たしています。

そのケンドリック・ラマーも参加したプレイボーイ・カルティ(一部メディアではプレイボーイ・カーティと表記するところも)『Music』も、ストリーミング指標の加点(週間300位以内登場)は短いながらも聴かれており、初の1週間フル加算となった3月26日公開分にてストリーミング指標15位、総合では17位に到達しています。

 

 

ヒップホップ関連でアルバムチャートに登場している作品は他にもありますが、今回紹介したアルバムにおいてはいずれもストリーミング指標が牽引していることが解ります。つまりは聴かれ続けているということであり、日本のヒップホップが浸透しているだろうことはこの点からも読み取ることができるのではないでしょうか。

そして、ストリーミング指標上位に到達する洋楽(K-POPを除く)は多くない中、ケンドリック・ラマーやプレイボーイ・カルティが人気を博していることも注目といえます。後者による『Music』が初登場した際に以下のエントリーを公開していますが、高位置到達の一因として最初に”日本でヒップホップが浸透している”という点を挙げています。今回紹介したCHART insightは、そのことを証明するのに十分と捉えています。