イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

MUSIC AWARDS JAPAN、視聴率や受賞曲の再生回数推移にて”数値をよく見せようとしていないか”疑問視する

今月開催されたMUSIC AWARDS JAPAN 2026については、その成功を数字面で大きく見せよう(魅せよう)としていないかという疑問が浮かんでいます。

 

 

昨日ビデオリサーチ社が紹介した関東地区の視聴率一覧にて、同社はMUSIC AWARDS JAPAN 2026を”大きな盛り上がりを見せました”と表現しています。一方で今年開催分(6月13日放送)は第1部(19時30分~20時55分)が個人視聴率3.6%/世帯視聴率5.9%、第2部(21時30分~22時50分)が3.7%/6.3%となります(上記ポスト内リンク先参照)。

時間帯や尺が異なるゆえ単純比較はできませんが、昨年開催分(2025年5月22日木曜放送)は第1部(19時30分~20時45分)が個人視聴率3.5%/世帯視聴率6.1%、22時からの第2部(22時~22時45分)が2.7%/4.9%となります(ビデオリサーチ社のデータはこちら)。今年はネットでもタイムラグなく配信していたゆえ音楽賞の視聴者数は上昇したといえるいかもしれませんが、地上波テレビだけをみれば第1部の世帯視聴率は下がっています。

そしてMUSIC AWARDS JAPAN 2026がおそらく意識しているであろう『輝く!日本レコード大賞』(TBS)は、2024年開催分(2024年12月30日放送)が第1部(17時30分~19時)にて個人視聴率4.8%/世帯視聴率7.7%、第2部(19時~22時)が7.6%/11.2%。第1部および第2部の時間帯が同じ2025年開催分025年12月30日放送)では順に5.0%/7.9%、8.0%/11.3%となっています(ビデオリサーチ社のデータは2024年分がこちら、2025年分がこちら)。

(視聴率比較の目的にてビデオリサーチ社関東地区調査データを掲載しました。問題があれば削除いたします。)

日本レコード大賞に比べて視聴率が低いMUSIC AWARDS JAPAN、その今年開催分についてビデオリサーチ社の公式Xアカウントが”大きな盛り上がり”と形容したことを疑問視しています。ともすればその形容は視聴率ではなくイベント自体を指すのかもしれませんが、このような表現と数字とが単純に結びつかないという印象です。

 

 

仮にビデオリサーチ社による形容が”数値をよく見せよう”とするものだったならば、昨日のnoteで採り上げた内容ともリンクするというのが厳しくも私見です。

 

Spotifyは6月19日に、以下の内容を自身のホームページにて発表しています。

6月13日、トヨタアリーナ東京およびSGCホール有明にて、国内最大規模の国際音楽賞『MUSIC AWARDS JAPAN 2026』(MAJ)の授賞式が開催されました。約2,000作品/アーティストの中から主要6部門を含む全78部門の受賞者が発表され、放送・配信を通じて一部地域を除く全世界へその模様が届けられました。

その熱狂は、Spotify上のデータにも鮮明に表れています。授賞式後、Spotifyで配信している『MAJ』公式プレイリストへのアクセスは1513%増を記録。当日パフォーマンスを披露したアーティストや受賞楽曲にも、リスナーの動きが数字となって現れました(※)。

 

(中略)

 

(※)『MUSIC AWARDS JAPAN 2026』受賞前28日間の平均ストリーム数と受賞日、または翌日のストリーム数の比較

 

この内容を3日後にオリコンが記事化しているのですが(『MUSIC AWARDS JAPAN 2026』授賞式後、Spotifyで楽曲再生数が急伸 公式プレイリストは1513%増 | オリコンニュース(ORICON NEWS)(6月22日付)参照)、しかしながら※印の補足内容は掲載していません。ゆえに、いつといつとを比較したのかが不明瞭なデータ提示となっています。

 

そしてそれ以前に、Spotifyの記事自体を疑問視しています。そもそも※印の補足内容が最下部に記載されているため分かりにくいという点も問題です。

そしてその比較期間について。受賞前28日間と受賞式当日または翌日の比較と成っていますが、日本のSpotifyでは平日より土曜や日曜(主に日曜)の再生回数が高くなる傾向にあるため、このような比較では受賞式当日または翌日の数値が高くなることは自然でしょう。まして”受賞日、または翌日”という表記ではどちらか高い方と比較したとも捉えられかねず、やり方がずるいと思われかねません。もっといえば、比較対象となる再生回数が国内でのものか海外のみなのか、それとも世界全体でなのかも不透明です。

(日本のSpotifyにおける特性については新曲が初登場しやすい曜日は、”50位の壁”とは...日本におけるSpotifyデイリーチャートの特徴をまとめる (2025年9月版)(2025年9月24日付)にてまとめています。)

ちなみに記事では『「最優秀楽曲賞」含む5冠を達成したサカナクション「怪獣」は33%増、「最優秀 J-POP 楽曲賞」の米津玄師「IRIS OUT」は17%増、「最優秀ボーイズアイドルカルチャー楽曲賞」「最優秀バイラル楽曲賞」など受賞のM!LK「好きすぎて滅!」は17%増』とあります。これら楽曲を日本での再生回数推移(5月16日土曜~6月12日金曜の平均と6月13~14日の平均)にて比較すると、サカナクション「怪獣」は22.0%増、米津玄師「IRIS OUT」は13.6%増、そしてM!LK「好きすぎて滅!」は10.4%増となります。

 

この問題を踏まえ、Spotifyに対し以下の提案を行いました。

 

そしてこの件について簡潔に取り上げた昨日付noteでは、次のようにまとめています。

その伸長を(事実だとしても)より訴求したいがために、比較対象を濁したり違和感を抱かせる演出は用いてはならないということ。それを行うだけでもSpotifyの信頼度は下がります。そして仮にMUSIC AWARDS JAPAN / CEIPA側の指示があったならば、同賞の信頼度も下がるというのが私見です。

 

さすがにMUSIC AWARDS JAPANや主催するCEIPA(一般社団法人カルチャー アンド エンタテインメント産業振興会)から記事やプレスリリースの発し手に対し指示はなかったと信じたいところでしたが、その後のビデオリサーチ社による発信からは違和感が拭えなくなったというのが率直な私見です。

 

 

(ABOUT | MUSIC AWARDS JAPANより。)

MUSIC AWARDS JAPANが4つのコンセプトのひとつに”透明性”を掲げたことについて、日本レコード大賞における選考方法との比較として挙げたものと捉えています。筆者は日本レコード大賞における大賞等候補選出の不明瞭さ、審査員のジェンダーや業種における偏り等について、日本レコード大賞の結果に対する納得度の高さと、一方で全体的な違和感が拭えなかったことについて(2025年12月31日付)にて疑問視しています。

一方で、MUSIC AWARDS JAPANは昨年そして今年もGrand Ceremony終了時に、透明性や公平性という言葉を用いて同賞の姿勢をスクリーンに大きく掲げていましたが、今回のSpotifyやビデオリサーチ社による発信内容から感じたのは”大げさ”や”まぎわらしい”という日本広告審査機構(JARO)が疑問視する表現であり、姿勢でした。

大々的に行っていること(特に多数の企業がパートナーとして参加している状況)、そして日本レコード大賞を意識しているだろうことを踏まえれば、早々に成功を収めたいという思いがMUSIC AWARDS JAPANにはあるかもしれません。しかしながら”数字は信頼の上に付いてくる”という考えの下、複数年計画にてどっしり構えてほしいとというのが筆者の強い希望です。無論データの発し手にも、紛らわしくない発信を強く願います。

 

 

なおMUSIC AWARDS JAPANに対しては、パートナーを重用”しすぎる”と感じる点も否めません。その点の改善提案は後日掲載する予定です。