今月9日、Spotifyにおける今年上半期の人気曲ランキングが発表されました。集計期間は元日から6月30日までとなります。
Spotifyは日本での人気、および日本の楽曲や歌手の海外での人気を測る4つのランキングを用意していますが、”国内で最も再生されたアーティスト”部門を制したMrs. GREEN APPLEは”海外で最も再生された国内アーティスト”部門ではトップ10に入らず、他方海外部門で首位を獲得したAdoさんは国内部門でトップ10入りを果たしていません。
Mrs. GREEN APPLEにおいては、米ビルボードのGlobal 200(世界の主要デジタルプラットフォームによるストリーミング(動画再生含む)およびダウンロードで構成)に基づくビルボードジャパンのGlobal Japan Songs Excl. Japan(Global 200から日本市場分を除いた上で日本の楽曲を抽出したチャート)では未だ週間20位以内に作品を送り込んでいません。その克服が海外展開の鍵を握るのではというのが私見です。
Adoさんは今年4月に『Adoのベストアドバム』をリリースしたこともあり、国内でも上位進出してよかったのではと考えます。日本を含むワールドツアーの人気が海外再生トップに至った要因と捉える一方、「唱」(2023)以降の大ヒット曲が登場しているとは言い難い状況です。新曲のヒットが過去曲のフックアップにつながると考えればAdoさんの課題はこの点にあり、これはYOASOBI(海外歌手部門3位)等にも当てはまるでしょう。
さて、主要サブスクサービスにおける上半期ランキングについては、今月初めにAmazon Musicがいち早く発表しています。その際、このようなことを記しています。
さて、気になるのはK-POP部門で50位に入ったJIMIN「Who」について。この曲は日本のSpotifyで圧倒的な人気を誇り、昨年夏に同チャートで述べ20日間に渡り首位を獲得しています。現時点でもデイリー10位前後をキープしている「Who」ですが、Amazon MusicのK-POP部門では可視化される範囲で最も低い順位となっています。
JIMIN「Who」が日本のSpotifyで極端に強いことについて上記エントリー等で分析した上で、日本のSpotifyにおける(他サービスに比べての)偏りを抱いています。Spotifyでは上位曲の日々の再生回数が可視化されることや推し活に用いられるStationheadと連動していること、またSpotify自体でもリスニングパーティーを開始するようになったことで、ファンダムの熱量が注入されやすくなったことが背景にあると考えられます。
・2025年上半期楽曲ランキングの動向から、Amazon Musicの動向を読む(7月5日付)より
日本での楽曲部門では2位にJIMIN「Who」が入ったほか、8位にはNumber_i「GOD_i」も登場していますが、他のサブスクサービスと大きく乖離していることは上記引用内リンク先でも記した通りです。他にもJIN「Don't Say You Love Me」やNumber_i「GOAT」「BON」「INZM」等にてデイリー推移が他のランクイン曲と異なり、他サービスと乖離する動きも目立ちますが、これはファンダムによる熱量の大きさゆえと捉えています。
海外では音楽チャートを熟知するファンダムが多くの歌手に存在していますが、日本では先述した歌手(JIMINやJINが所属するBTS含む)がいち早く取り組んでいるといえます。またSpotifyは(同サービスを活用したStationheadにとどまらず)自身がリスニングパーティーを開催、さらにMUSIC AWARDS JAPAN一般投票部門の投票フォーマットとなり有料会員の投票数を無料会員のそれより増やす等、ファンダムの囲い込みに努めています。
ライト層(歌手のファンではないが曲が気になる方)の人気が可視化され、ロングヒットが自然のストリーミングチャートにあって、Spotifyでは真の社会的ヒット曲が見えづらくなっているのではというのが厳しくも私見です。(特にチャートでの上位進出を願い動く)ファンダムから反発を招かれかねませんが、ブログで毎週公開するストリーミング表等データからもその状況はみえています。ファンダムの囲い込みは他のサブスクサービスでも目立ちますが、その度合を強めるSpotify側に自省と再考は必要ではと考えます。
同時に、サブスクサービスにおけるファンダムを意識した施策が音楽チャートに及ぼす影響をビルボードジャパン側が常に把握し、ソングチャートやアルバムチャートにおけるストリーミング指標のチャートポリシー(集計方法)変更につなげるかどうかを議論し続けることも重要です。


