ビルボードジャパンのチャートディレクターを務める礒﨑誠二さんは、ポッドキャストにてソングチャート100位までチェックすることの重要性を説いていました。最新のソングチャートでは今から16年以上前の作品が100位以内に再登場しており、チャートをこまめにチェックすることの楽しさをあらためて感じた次第です。今回はその曲を含め、最新チャートにおける注目作品を紹介します。
なお今回は、CHART insightの有料会員向け情報を掲載します。総合ソングチャートおよび構成指標における20位未満の順位はCHART insight有料会員のみが知り得る情報となります。ビルボードジャパンでは有料会員のみ知り得る情報の掲載を可能としており、今回紹介した次第です。
※CHART insightの説明
[色について]
黄:フィジカルセールス
紫:ダウンロード
青:ストリーミング
黄緑:ラジオ
赤:動画再生
緑:カラオケ
濃いオレンジ:UGC (ユーザー生成コンテンツ)
(Top User Generated Songsチャートにおける獲得ポイントであり、ソングチャートには含まれません。)
ピンク:ハイブリッド指標
(BUZZ、CONTACTおよびSALESから選択可能です。)
[表示範囲について]
総合順位、および構成指標等において20位まで表示
[チャート構成比について]
累計における指標毎のポイント構成
・いきものがかり「気まぐれロマンティック」
2008年12月にフィジカルリリースされた、いきものがかり「気まぐれロマンティック」が最新3月26日公開分ビルボードジャパンソングチャートで86位に再登場しています。興味深いのはストリーミングや動画再生といった接触指標群が2月12日公開分以降常に、加点対象となる300位以内にランクインしているということ。そのきっかけは、K-POP歌手によるカバーでした。
2008年発表のいきものがかり「気まぐれロマンティック」は、TWICEのNAYEONが2月1日・2日開催のイベント【BEAT AX Vol.5】でカバーしたことで注目を集め、ストリーミング再生数やUGC、TikTokでの楽曲使用率が一気に高まった。
【Hot Shot Songs】BE:FIRST「Spacecraft」首位、いきものがかり&レミオロメン“平成ソング”が急上昇 https://t.co/6uffhkPcmD
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) 2025年2月12日
この流れはNewJeansがライブのソロコーナーにて松田聖子「青い珊瑚礁」を歌い、同曲が再度注目されたことに近いかもしれません。そして注目度が高まったタイミングで、いきものがかり側は2月12日に「気まぐれロマンティック」のライブパフォーマンス映像を公開しています。
この速やかな施策投入も相まって、「気まぐれロマンティック」はカラオケ指標が2月12日公開分以降100位以内に登場。直近2週続けて同指標最高位となる28位につけています。
当週総合チャートで100位以内復帰を果たしたのはラジオ指標の急伸(100位未満(300位圏内)→20位)に伴う部分が大きく、この指標の不安定さを踏まえれば「気まぐれロマンティック」が次週以降も総合100位以内をキープできるかは不透明ですが、即座にライブパフォーマンス動画を公開したことで熱量が持続し、いつ何時でも総合100位以内に上昇できる体制が整ったといえそうです。
・MONGOL800「小さな恋のうた」
2001年リリースのアルバム『MESSAGE』収録曲、「小さな恋のうた」はカラオケ指標で人気を博し、ビルボードジャパンでは2021年末の段階でストリーミング1億回再生を突破しています。この曲が最新3月26日公開分ビルボードジャパンソングチャートにおいて、2023年9月27日公開分以来となるカラオケ指標トップ10入りを果たしているのです。
狩野さん、いやEIKO様‼️
— 【公式】千鳥のクセスゴ!🐥 (@kusesugogp) 2025年3月2日
4年半も本当にありがとうございました✨
必ず戻ってきます‼️‼️
前室でもカッコよかったEIKO様の写真を添えて… https://t.co/1ALqjsBDQp pic.twitter.com/X51TWxM4uw
「小さな恋のうた」のカラオケ指標は3月5日公開分にて17位を記録して以降、15→11→10位と推移しています。3月2日放送の『千鳥のクセスゴ!』(フジテレビ)にて狩野英孝さんがEIKO名義でこの曲をカバーしたことがこの曲の注目度上昇につながったほか、ともすればそのクセスゴな歌い方を真似したい人の欲求を刺激し、カラオケ指標上昇に至ったのかもしれません。
このタイミングでは他指標も動いており、ダウンロードは3月12日および3月26日公開分で100位未満ながら300位圏内に入り加点対象に。またラジオは3月12~19日公開分で100位未満ながらも加点されています。
・M!LK「イイじゃん」& aespa「Whiplash」
アイドルソング的パートからの突然の転換が話題となり、バイラルチャートでもヒットしているM!LK「イイじゃん」。最新3月26日公開分ビルボードジャパンソングチャートでは総合100位未満ながら、ストリーミング指標が引き続き加点対象となっています。
M!LKのストリーミング指標における強さは、M!LK(もっといえば彼らが所属するEBiDAN全般)がLINE MUSIC再生キャンペーンを採用する点にあるのですが、このキャンペーンは終了のタイミングでストリーミングが失速し、終了直後に300位圏外になりやすいという性質があります。
M!LKにおいては昨年ストリーミング指標100位以内に入った「Kiss Plan」「ブルーシャワー」「エビバディグッジョブ!」および「I CAN DRINK」のいずれもがキャンペーンを採用し、その影響力が途絶えたタイミングでストリーミング加点対象から外れているのですが、「イイじゃん」はキャンペーン対象期間と一切被っていない3月26日公開分において、急落しながらも加点対象となっているのです。
加えて「イイじゃん」では、先述した4曲で加点対象となっていない動画再生指標が安定。このことも曲の浸透を感じるに十分です。
尤もM!LK「イイじゃん」の転換パートはaespa「Whiplash」における歌い出しの部分を想起させるという声をよく耳にしますが、その「Whiplash」は3月に入りストリーミングや動画再生指標が上昇。2月最終週と比べて前者が34→26位、後者が45→34位に上昇しています。このブログでは似ているか否かの真偽は確かめませんし、また他の上昇要素もあるかもしれませんが、「イイじゃん」との連動は注目に値すると感じています。
今回は総合ソングチャートで上位に入っていないながら、注目すべき作品について紹介しました。再ブレイクにはきっかけがあり、そして変化のポイントはCHART insightから掴むことができます。CHART insight有料会員(CHART insight PRO)の月額料金は安価であることから、分析に用いることをお勧めします(詳細はこちらをご確認ください)。