イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

(追記あり) ビルボードジャパン首位のSnow Man「BREAKOUT」、指標構成やポイント前作超えからデジタル解禁の重要性を説く

(※追記(8月23日19時56分):ビルボードジャパンソングチャートの記事が訂正されたことに伴い、記事URLを掲載したポストを差し替えています。また元記事では動画再生指標の掲載がありませんでしたが訂正後に記載されたため、『記事では「BREAKOUT」がフィジカルセールスおよびラジオ2指標のみでチャートを制したとありますが、実際は』の文言を削除しています。)

 

 

 

最新8月7日公開分(集計期間:7月29日~8月4日)のビルボードジャパンソングチャートでは前週首位に到達したTHE RAMPAGE from EXILE TRIBE24karats GOLD GENESIS」が18位に後退、Snow Man「BREAKOUT」が100位以内再登場にして首位に立ちました。

この曲は、デジタルを解禁していれば今年度最大規模の週間ポイントを獲得できたものと捉えています。

 

フィジカルセールス(初週1,088,373枚)およびラジオで首位、動画再生は3位に上昇。フィジカルセールスは前作「LOVE TRIGGER」(初週1,224,902枚)に次ぐ初週ミリオンを達成したのみならず、フィジカル初加算時のポイントは「LOVE TRIGGER」の12,458ポイント(2月21日公開分)を上回る13,105ポイントに達しています。

 

 

Snow Manはダウンロードやサブスクが未解禁。STARTO ENTERTAINMENT所属歌手ではSixTONESやなにわ男子、Aぇ! group等も同様で、フィジカルセールス初週20万枚以上を見込める歌手はそのほとんどが未解禁を続けていますが、仮に解禁すれば、特にSnow Manビルボードジャパンソングチャートでフィジカルシングル表題曲がほぼ常時首位を獲得できるものと考えます。動画再生指標の動向から、そう断言可能です。

 

上記は2024年度第3四半期におけるビルボードジャパンソングチャートの動画再生指標、週間上位20曲の動向。濃い青がSnow Man「BREAKOUT」、薄い青がその他STARTO ENTERTAINMENT所属歌手による作品を示しています。「BREAKOUT」は6月26日公開分でこの指標を初登場で制し、2週前までトップ10内をキープ。前週は13位に後退するも当週3位に急浮上しています。

上記は最新8月7日公開分のビルボードジャパンソングチャート、上位10曲の指標構成ですが、動画再生(赤で表示)はストリーミング(青)と比例する傾向にあります(なお上記は各指標20位までが表示、またback number「新しい恋人達に」は現時点でミュージックビデオ未公開)。このことはSnow Man「BREAKOUT」がサブスク解禁していればストリーミング指標でも上位に進出できた可能性を示唆しています。

 

そして、「BREAKOUT」は当週が総合ソングチャートにおいて100位以内再登場であり、初登場ではありません。動画再生指標が初加算された週に66位に初登場し、翌週も84位にランクインしています。動画再生指標の強さだけで総合ソングチャート100位以内に入ることは異例ですが、実はその動画の強さに伴いSnow Manはストリーミング指標を獲得したこともありました。

2022年リリースのフィジカルシングル「ブラザービート」はストリーミング指標が一時的に300位以内に。これはYouTubeをオーディオストリーミングで聴取した方の多さが理由であり、動画もフルバージョンだったことが影響しているといえます。

現時点ではサブスクユーザーの増加により全体のストリーミング再生回数も上昇しているため「ブラザービート」のような事態は発生しませんが、これもサブスク解禁すればよりポイントを獲得できたと断言可能な理由です。

 

そして、Snow Man「BREAKOUT」ではフィジカルセールス初加算週に動画再生指標が大きく上昇しています。

これは当週の集計期間内にダンスプラクティス動画が用意されたことが大きく影響した形ですが、実はアイドルやダンスボーカルグループにおいてフィジカルセールス初加算週に動画再生指標が上昇することは多くない印象です。THE RAMPAGE from EXILE TRIBE24karats GOLD GENESIS」が首位を獲得した前週、以下のように言及しています。

24karats GOLD GENESIS」はフィジカルリリースの前週に下記動画も用意していますが、当週この指標が300位以内に達していない点からはライト層の接触行動があまり起きておらずコアファンとの乖離が発生していること、そしてコアファンの中でもフィジカルの購入やLINE MUSIC再生キャンペーンへ集中していることが読み取れます。

(※ 下記動画とはこちらを指します。)

フィジカルシングルにミュージックビデオを収録した映像盤が同梱されていれば視聴先が移行することが想起され、動画再生指標がダウンすることが少なくない中、Snow Man「BREAKOUT」はこの指標を伸ばしています。無論ダンスプラクティス動画の公開も大きいながら、コアファンのみならずライト層も視聴したことが、ここから読み取れるのです。

 

 

これらを踏まえれば、Snow Manはデジタル解禁に伴い、デジタルが安定した上でフィジカルセールスが上乗せされる形で、ビルボードジャパンソングチャートではフィジカルセールス指標初加算週に常時1万5千ポイント以上を獲得することができるのではというのが私見。1万5千ポイントが如何に大きな数字かは、下記表から理解できるでしょう。

 

 

STARTO ENTERTAINMENT所属歌手においては現在もフィジカルセールスリリース前にミュージックビデオを公開することが通例となっていますが、一方でその大半はショートバージョンとなっています(動画のタイトルに"YouTube Ver."等と掲載)。ミュージックビデオが作品や歌手の流布よりも(映像盤を同梱した)フィジカルの販促であるというのが、事務所側における動画の位置付けかもしれません。

しかしながら、Snow Man「BREAKOUT」のミュージックビデオはほぼフルの模様です(動画のタイトルに"YouTube Ver."はありません)。ともすればYouTube視聴(聴取)に伴いフィジカル購入を控えた方もいらっしゃるかもしれませんが、この状況下でフィジカルシングルが2作連続でミリオンに達したことは、デジタル先行公開でもフィジカルセールスが大きくは下がらないだろうことを示しているといえるでしょう。

また、Snow Man「BREAKOUT」がフィジカルセールス週にダンスプラクティス動画を公開したのは、複合指標から成る総合ソングチャート施策の一環ではと考えます。「BREAKOUT」はラジオ指標も制していますが、指標の基となるOAチャートでは『帯枠中心の番組/コーナー中心にオンエア』『多数番組へのコメント出演』が功を奏しており、こちらも総合ソングチャート施策と捉えていいでしょう(『』は下記記事より)。

フィジカルセールス指標初加算時における「BREAKOUT」のポイントが「LOVE TRIGGER」を上回ったことは、施策の効果も大きいと考えます。Snow Man側はビルボードジャパンソングチャートも意識しているといえるのではないでしょうか。

そしてデジタル解禁はフィジカルセールス指標2週目以降におけるチャート動向の安定に寄与するのみならず、TikTok等にて(再)ブレイクした際にはユーザーの所有や接触行動につながり、総合ソングチャートにも反映されやすくなります。デジタルはフィジカルと異なり基本的に廃盤の概念がないため、中長期での利益確保もできやすくなるのです。

 

 

Snow Manはフィジカルリリース日の翌日に英語(→こちら)で、その次の日にはタイ語(→こちら)で挨拶した動画付きポストを投稿しています。一方でデジタル未解禁は海外の音楽ファンがSnow Manに触れる機会を逸しかねません。STARTO ENTERTAINMENT所属歌手に限らずデジタル未解禁歌手が多いことは、海外音楽ファンの日本の音楽に対する信頼度にも影響するといえるでしょう。無論日本の音楽ファンに対しても、です。

Snow Man側のデジタル解禁の英断、そしてSTARTO ENTERTAINMENT側の考え方の変化を願うばかりです。