ビルボードジャパンソングチャートでは、ある指標に特化して強い曲が時折登場します。K-POP男性ダンスボーカルグループのTREASUREによる「YELLOW」は、ラジオでの強さが特徴です。
TREASURE「YELLOW」は3月7日金曜にリリースされたEP『Special Mini Album Pleasure』のリード曲。ビルボードジャパンソングチャートでは3月10日月曜からを集計期間とする3月19日公開分で22位に初登場を果たすと、当週まで46→36→46位と推移。一方でロングヒットの要となるストリーミングは3月19日公開分にて57位に初登場すると翌週は88位に後退、直近2週は加点されるものの100位未満となっています。
TREASURE「YELLOW」において好調なのが、上記CHART insightにて黄緑で表示されるラジオ指標。リリース後3月9日までが集計対象となる3月12日公開分では300位以内に入らず加点されていませんが、3月19日公開分以降は1→3→1→2位と好調に推移。CHART insightからは、TREASURE「YELLOW」の累計ポイントにおいて半分以上をラジオが占めていることが解ります。
このラジオの好調については、プランテックの記事から読み取ることができます。
2位はTREASURE「YELLOW」が前週6位から浮上した。3月7日リリースのミニアルバム「PLEASURE」からとなる同曲は、3月10日~3月16日チャートで6位に初登場後、13位、6位、2位と推移。固定番組/コーナーなど帯放送枠を中心に、定期オンエアを積み上げながら4週目を迎えた今週、オンエア総数/獲得ステーション数ともに減じたものの、ほぼ関東エリアFM局のみでの大量オンエアをキープしたことで、チャートイン以来の最高位を記録したかっこうだ。
(※ビルボードジャパンソングチャートのラジオ指標はプランテックによるラジオOAチャートを基に、対象各局の聴取可能人口等を加味して指標化しています。)
ラジオ指標は日本の男性アイドルやダンスボーカルグループが主にフィジカルリリース週に強く、『固定番組/コーナーなど帯放送枠を中心に、定期オンエアを積み上げ』ることが背景にあります。ただこのような場合はOAが短期的になりがちですが、TREASURE「YELLOW」は4週連続で強い状況です。これは『ほぼ関東エリアFM局のみでの大量オンエアをキープした』ことが要因となります(『』内はプランテックの記事より)。
この”関東エリアFM局”とは、interfmを指すものと考えられます。
interfmはOA曲を中期に渡り、歌手別に検索することが可能です。そこでTREASURE「YELLOW」のOA動向を、EPリリース日からブログ執筆段階までの範囲で検索した結果が上記となります(キャプチャは1ページ目の冒頭部分を指します)。
interfmにおけるTREASURE「YELLOW」OA回数は3月10~16日、および3月27日~4月6日において1日最低4回流れていることが解ります。3月27日にはOA数が10回に達した一方、EPリリース日の3月7日から9日日曜にかけて、および3月17日月曜から26日水曜にかけてはOAされていない状況です。
プランテックによるラジオOAチャートの記事でTREASURE「YELLOW」について言及されたものが最新週のみであり、interfmがOAしない時期にどの局でOAされたかは解りかねますが、「YELLOW」のinterfm大量OAからは様々なことがみえてきます。
TREASURE「YELLOW」のinterfmOA分107回のうち平日27~29時のOAが多いことが検索結果から解ります。この時間帯は『THE GOOD MIXER』という番組が流れ、”最新の邦楽・洋楽のヒット曲を中心に、各年代のヒット曲もバランス良くミックス”と説明されているのですが、たとえば3月31日からの週では4月2日放送回(二度OA)を除き、1回の放送で三度OAされている状態です。これを”バランス良く”と言えるか、疑問を抱きます。
またTREASURE「YELLOW」は3月7日金曜にリリースされながら、interfmでのOAは3月10日月曜以降に。先程はラジオ指標について『リリース後3月9日までが集計対象となる3月12日公開分で300位以内に入らず加点されていないのですが、3月19日公開分以降は1→3→1→2位』と記したのですが、OA開始日からは3月10日からのパワープレイが行われたこと、また音楽チャートを意識して施策開始日を設定した可能性が読み取れます。
パワープレイ(ヘビーローテーション)はラジオ局側による選定のみならず、レコード会社側の推薦も影響すると認識しています。TREASUREは日本においてエイベックス関連レーベルの所属となるのですが、そのエイベックスにはラジオが強い男性ダンスボーカルグループが他にも存在。特にTHE RAMPAGE from EXILE TRIBEは複数曲で強さを発揮しており、下記エントリー等で紹介してきました。ここではinterfmの名前も登場します。
推測の域は出ないと前置きしつつ、THE RAMPAGE from EXILE TRIBE、そして今回のTREASURE「YELLOW」においてはエイベックス側の(主にinterfmへの)ラジオ施策がビルボードジャパンソングチャートのラジオ指標を高め、総合ソングチャートでの複数週ランクインにつながったと読み取ることができるかもしれません。無論、他指標や他のレコード会社でも施策は行われており、極端なものでなければ施策自体自由といえます。
とはいえ、ラジオ指標ばかり強くとも他指標が伴わないことには真の社会的ヒットとは言い難いと考えます。THE RAMPAGE from EXILE TRIBE「24karats GOLD GENESIS」ではラジオ指標が6位から300位圏外に急落していますが、ここまでの急落は施策以外でもOAされている曲では考えにくいでしょう。今回紹介した施策ではライト層(曲は気になるが歌手のファンではない方)が育ちにくいと言っても過言ではないはずです。
ラジオ施策が突出した曲は、アイドルやダンスボーカルグループにおける【ヒットの8段階表】において第2段階にとどまります。複合指標から成るビルボードジャパンソングチャートではラジオ指標が少なからず有効に作用することが今回あらためて解りましたが、ソングチャートでロングヒットさせ歌手のコアファンを増やすためにはストリーミング主体にどうすべきかきちんと考えることこそ、より重要ではないでしょうか。
interfmでは4月7日以降、TREASURE「YELLOW」のOAがありません。OA先が他局に移行した可能性もありますが、同日を集計期間初日とする4月16日公開分ビルボードジャパンソングチャートにて「YELLOW」のラジオ指標が300位圏外となり未加算となったならば、施策効果は限定的と言わざるを得ないでしょう。TREASURE「YELLOW」の次回のチャート結果を注視する必要があります。
同時にビルボードジャパンに対し、施策により左右されやすい指標についてそのままでいいかどうかを議論することを希望します。個人的にはより多くのラジオ局を集計対象とすることで施策効果は薄れると考えますが、ラジオ局側(主に地方局)のシステムや人員を考慮すれば難しいでしょう。もしくはソングチャートとの乖離を踏まえ、ラジオ指標のウエイトをもう少し引き下げることも検討していいのかもしれません。