昨日付のブログエントリーでは、ビルボードジャパンソングチャートで前週初めてトップ10入りした曲の当週動向を紹介。その際、総合10位をキープし好調に映るTREASURE「PARADISE」のヒットの背景について紹介しています。
TREASURE「PARADISE」の背景にはラジオでの局地的な強さがあることが判明していますが、一方で前週にてラジオ局の区別なくヒットし、ラジオ指標を主体として総合トップ10目前まで迫っていたのが山下達郎「オノマトペISLAND」でした。ただし同曲は当週、ラジオ指標1→13位、総合では11位→100位未満へ後退しています。
ラジオ指標は、ビルボードジャパンソングチャートの構成指標では特殊な存在です。接触指標ながら選曲権は聴き手(リスナー)になく、またロングヒットが極めて難しいのも特徴です。その中で、リリース週に帯番組/コーナーでのコメント出演をメインにオンエア回数を増やす作品が男性アイドル/ダンスボーカルグループ主体に増え、1局集中の形でラジオ指標を制したTREASUREの例も生まれています(冒頭のエントリー参照)。
そしてこの指標のさらなる特徴は、ベテラン歌手の作品が強いということ。全国放送のレギュラー番組を持っている歌手は特に強い状況です。しかし、これら傾向からは、放送局や番組サイドが好い曲を自信を持って推すという誇りがあまりみえてこないというのが厳しくも私見。ベテランの厚遇についてはラジオ以外においてもみられることであり、山下達郎「オノマトペISLAND」を軸に先日採り上げています。
山下達郎さんはサブスクに音源を解禁するつもりはない等、デジタルに厳しい姿勢を続けています。音楽業界やメディア内に氏への違和感を抱く方がいらっしゃるかもしれませんが、しかし『NHK紅白歌合戦』(NHK総合ほか)でも顕著なようにヒット規模に関係なくベテランを厚遇するのが日本全体の姿勢ゆえ、指摘は生まれないのではないでしょうか。その一端が一時的ながらラジオ指標に表れたというのが、自分の見方です。
さて、ラジオ指標にはさらなる特徴があります。それは一部の局で採用しているパワープレイ(ヘビーローテーション)です。一定の期間内に同じ曲を放送局全体を通して推すことで、その時期のラジオ指標が大きく上昇するというものですが、他方パワープレイ採用曲はその期間が終了するとこの指標で大きく後退してしまうことについては、先日お伝えしたばかりです。
そして、8月のパワープレイ採用曲においても同様の事態が起きています。
・ブランデー戦記 Official Web Site | 8/1(金)リリースの新曲「赤いワインに涙が・・・」ラジオ全国42局パワープレイ・ヘービーローテーションに決定!(8月1日付)より
ブランデー戦記「赤いワインに涙が・・・」は8月6日公開分のビルボードジャパンソングチャート以降、ラジオ指標が8→2→3→3→3位と推移し、総合でも登場2週目以降43→47→50→62位と4週連続でチャートインを果たしていました。しかし9月1日を集計期間開始日とする9月10日公開分ではラジオ指標が100位未満に急落しています。そして同曲はこれまで他指標が週間300位以内に一切入らず、カウントされていません。
ラジオ以外の指標がランクインしていないことからは、ラジオを用いた施策が複数週の音楽チャートでは有効に作用しても広く一般に伝わっているとは言い難いと捉えていいでしょう。歌手側の施策の見直しもさることながら、ラジオ局が自身の影響力について自問自答することが大事だと痛感します。
パワープレイによる影響力が限定的であることを踏まえ、こちらのエントリーを再掲します。ビルボードジャパンがラジオ指標を廃止することは非現実的かもしれませんが、ビルボードジャパンに対してはラジオ業界にモチベーションを与えるべく動いてほしいと願うばかりです。