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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

UGC、カラオケ、ストリーミング…HANAの人気上昇をビルボードジャパンのデータから読む

最新4月9日公開分ビルボードジャパンソングチャートでHANA「ROSE」が首位初登場を果たしたことについては、このブログで採り上げました。

この記録については、不定期更新であるビルボードジャパンポッドキャストでも紹介されているのですが、最新回での5分59秒以降における発言を興味深く感じています。

ビルボードジャパンのポッドキャストでMCを務めるチャートディレクターの礒﨑誠二さんは、HANA「ROSE」の強さの一因に”UGC”を挙げています。UGCとは”歌ってみた”や”踊ってみた”に代表されるユーザー生成コンテンツを指しますが、このUGCの強さを示すのがTop User Generated Songsチャートとなります。

総合ソングチャートトップ10の指標構成を示すCHART insightを上記に。茶色で表示されるのがTop User Generated Songsチャートの順位であり、HANA「ROSE」は13位を記録しています(なおUGCはソングチャートの構成指標ではありません)。このUGCの高さを踏まえ、礒﨑さんは「ROSE」が『一般層の人たちも動き始めている』『しばらくこの曲は上位に居続けるのではないか』と紹介していることを、興味深く感じた次第です。

 

このブログではUGCTikTokおよびソングチャートのカラオケ指標を”活用”という括りで紹介し、この活用が強い曲ほど社会的ヒット曲と成り得ると捉えています。特にYOASOBI「アイドル」やCreepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」においては活用人気が高く、たとえば運動会等のイベントや家族で出かけることの多い土日祝日にこれら作品が再生回数を伸ばす傾向について、このブログで採り上げています。

HANA「ROSE」は「アイドル」等と比べて子どもや家族への人気があるかは解りかねます(タイアップの有無も踏まえるに、2曲に比べれば子ども等へのリーチは難しいかもしれません)。ただ、UGC人気は動画再生やストリーミングにリーチしやすい、そして実際に接触指標群が強いことを考えれば、HANA「ROSE」はコアファンのみならずライト層(曲は気になるがファンではない方)も取り込み始めていると捉えていいでしょう。

 

 

ちなみにビルボードジャパンはTikTok関連チャートを2024年度でもって終了していますが(その点については米でのTikTok終了(可能性)はエンタテインメント業界における損失…最新チャート動向から断言可能(1月19日付)にて紹介しています)、オリコンには存在します。というよりも、オリコンTikTokが昨夏提携を結んでいました。

TikTok音楽チャートは『TikTokアプリ上で見られるほか、アプリと連動した日本初の公式週間楽曲チャートパートナーとして、オリコンからも毎週発表されます』とのことですが、ここからはTikTok側が以前提携していたビルボードジャパンを”公式週間楽曲チャートパートナー”とみなしていなかったと捉えることもできるかもしれません。この見方が正しいのならば、TikTokの姿勢には強い違和感を抱かざるを得ません。

 

 

さて、UGC以外にもHANAは”活用”で人気だということが、こちらから読み取れます。

上記はソングチャートとアルバムチャートを合算した、最新4月9日公開分のトップアーティストチャート(Artist 100)。実際は4月10日に公開されたものですが、こちらではHANAが86→9位に上昇しています。

最新週におけるHANAのトップアーティストチャート動向を上記に。上記画像では分かりにくいのですが、HANAは2月26日公開分以降最新週まで、カラオケ指標(CHART insightでは緑で表示)が100位未満ながら300位圏内となり加点され続けていることが解ります。これはプレデビュー曲である「Drop」が、この指標でポイントを獲得し続けていることが要因です。

アイドルやダンスボーカルグループではソングチャートのカラオケ指標における加点が難しいことを、男性歌手について先月検証しています。一方で女性グループの場合、総合ソングチャートを前週制した乃木坂46が、2020年12月2日公開分から始まったトップアーティストチャートにおいてカラオケ指標を一度も獲得していません。当週ソングチャートで3位を獲得したAKB48は加点されるも、連続加点は1月1日公開分以降となります。またNiziUは3年以上、ME:Iは1年近くに渡り、この指標を加点できていません。

HANAによる現時点でのリリース曲はプレデビュー曲の「Drop」とフィジカルデビュー曲の「ROSE」に限られています。つまりその2曲(のうち「Drop」だけ)でカラオケ指標を獲得し続けていることが、HANAの活用面での支持の高さを示しているといえるでしょう。

 

加えて、HANAは2曲のみでトップアーティストチャートのストリーミング指標が13位に達していることも大きなポイントです。

最新のソングチャートにおいて「ROSE」は878万強の再生回数を記録しストリーミング指標2位初登場、また「Drop」は同28位に上昇しています。トップアーティストチャートの基となるソングチャートは各指標300位までが加算対象となるため、仮にストリーミングの加算対象を500位までに拡大すれば状況は異なるでしょうが、言い換えれば他の歌手はもっとデジタルに注力すべきと言って差し支えないかもしれません。

 

 

ビルボードジャパンのポッドキャストをきっかけに今回のエントリーを記載しました。チャートディレクターの礒﨑誠二さんが指摘されたUGCの動向、そしてカラオケやストリーミングの強さからは、HANAがコアファン内での人気を確実に高めていると同時にライト層にも知名度が高まっていることが読み取れると断言していいでしょう。

先週金曜に公開されたダウンロードやストリーミングの速報値をみるに、HANA「ROSE」は次回4月16日公開分のビルボードジャパンソングチャートにおいて総合首位の座をMrs. GREEN APPLE「クスシキ」に譲る可能性は高いでしょう。4月23日のCDリリースに伴い、フィジカルセールス指標が初加算となる4月30日公開分で総合首位に返り咲くか、それまでストリーミング等を維持できるかが今後の注目点となります。