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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

timelesz『Hello! We're timelesz』がビルボードジャパンアルバムチャート制覇、その背景や意味を考える

2020年からポッドキャストBillboard Top Hits (通称:ポッドチャート)】を毎週発信しています。ビルボードジャパンがアルバムチャートの発表を木曜に変更したことを踏まえ、ポッドキャストにおいても今年から公開時間を木曜19時に設定しています(YouTubeでの公開はわずかですが遅れます)。

今回はポッドキャストでも紹介した、最新のビルボードジャパンアルバムチャートについて分析します。

 

 

昨日発表されたビルボードジャパンアルバムチャート(3月5日公開分(集計期間:2月24日~3月2日))では前週首位のAぇ! group『D.N.A』が100位圏外へ後退、timelesz『Hello! We're timelesz』が首位初登場を果たしています。

本作は、2月28日にリリースされたデジタルコンピレーションで、Sexy Zone時代の楽曲も含んだ12曲が収録されている。ダウンロード数7,576DLでダウンロード1位、そしてストリーミングでも1位となり2冠を達成した。

timelesz『Hello! We're timelesz』の首位獲得を、非常に興味深く感じています。

 

 

2025年度のビルボードジャパン各種チャートは、集計期間を52週と仮定すれば当週が第2四半期初週となります。第1四半期の動向については以前まとめていますが、その際アルバムチャートのデータも紹介しています。

またビルボードジャパンアルバムチャートでは、昨年末よりストリーミング指標を導入しています。

これらから解るように、リニューアル後のビルボードジャパンアルバムチャートではMrs. GREEN APPLE『ANTENNA』の強さが際立っています。フィジカルセールスが週間10万枚台後半以上を記録した作品はデジタルが強くなくとも、またデジタル未解禁であっても週間単位で総合チャートを制することは可能ですが、翌週は急落傾向に。その中にあって聴かれ続けている『ANTENNA』が総合首位に立つことも少なくありません。

そのMrs. GREEN APPLE『ANTENNA』を、当週timelesz『Hello! We're timelesz』が総合で、そしてストリーミング指標でも上回っています。後者において、『Hello! We're timelesz』は『ANTENNA』から初めて首位の座を奪取した作品となります。

 

 

timelesz『Hello! We're timelesz』のアルバムチャート制覇を、非常に興味深く感じています。今回の結果は、今後の音楽業界にとって大きな意味を持つかもしれません。

 

まずは先述したストリーミング指標の制覇。『Hello! We're timelesz』は2月28日金曜にデジタル解禁された作品であり、わずか3日分の集計で制したことになります。

このことはソングチャートの構成指標のうちダウンロード、ストリーミングおよび動画再生の合計ポイント増加順に並べたHot Shot Songsチャートにて、8名体制での初リリース曲「Rock this Party」(総合ソングチャート5位)や『Hello! We're timelesz』収録曲(Sexy Zone時代の作品を含む)等、トップ20内に9曲がランクインしたことからも予想できたことではありますが、やはり勢いの大きさを感じずにはいられません。

 

一方で、今回のデジタルコンピレーションアルバムをベストアルバムの一種と捉えるならば、ベストアルバムがストリーミングで強いという状況は異例といえます。ストリーミングで強さを誇る歌手のベストアルバム(Mrs. GREEN APPLE『5』やback number『アンコール』)は、一部のオリジナルアルバムほど順位が高くはありません。

ダウンロード/ストリーミングについて

(中略)

③Hot Albumsのストリーミング数は、どのように合算していますか?

 各DSPから報告される収録アルバム情報を元に、どのアルバムに収録された楽曲が再生されたのかを特定・集計しています。なお、アルバムによって収録曲数が異なりますが、弊社による検証の結果、チャートに係数を乗じることによって、大きな影響はないことが判明しました。それにより、該当アルバムに収録された曲のストリーミング数を合算して係数を乗じ、各ポイントを算出しています。

アルバムチャートのストリーミング指標は、収録曲がどのアルバムを介して聴かれたかが重要となります。Mrs. GREEN APPLEやback numberの作品はオリジナルアルバムからの聴取が多いと考えられ、またサブスクサービスのプレイリストを介して聴いた場合、そのプレイリスト収録曲がどのアルバム経由でリストインしたかも鍵となるはずです。

timeleszはサブスク解禁時に、オリジナルアルバムやシングルをすべて解禁しているわけではありません。ゆえに『Hello! We're timelesz』収録の既発曲はすべてこのデジタルコンピレーションアルバムのストリーミングとして加算されます。デジタルが強いことに伴いベストアルバム的な作品がアルバムチャートを制したという今回の背景には、timeleszの解禁方法が影響したともいえるでしょう。

 

ベストアルバム的といえるデジタルコンピレーションアルバムの制覇は、サブスク解禁に前向きではない歌手を刺激するのではと感じています。

timeleszが所属するSTARTO ENTERTAINMENTには、デジタルを全く解禁していない、もしくは解禁しても十分とはいえない歌手が少なくありません。昨秋「One」をデジタル解禁したSnow Manは、今年はじめにリリースしたベストアルバム『THE BEST 2020 - 2025』がフィジカルで初週ミリオンセールスを記録しながら100位以内エントリーはわずか4週にとどまり、デジタル未解禁がチャート動向に大きく影響しています。

timelesz『Hello! We're timelesz』の総合アルバムチャート制覇は、”まずは代表曲を解禁することで良好なチャートアクションが生まれる”という事例の誕生を意味すると捉えています。デジタルに後ろ向きながらも解禁は必要だと考えている歌手にとって、今回の事例はデジタル解禁に対する心理的ハードルを下げることにつながるかもしれません。『Hello! We're timelesz』の存在はその点において、大きな意味を持つはずです。

 

 

timelesz『Hello! We're timelesz』でのストリーミング数の多さ、そして既発曲で構成されたアルバムのダウンロード数の多さ(以前からのコアファンの多くは既にフィジカルを持っていると想起)を踏まえれば、新メンバー募集オーディションを機にtimeleszを気になった方が増え、デジタル解禁が彼らの熱量の受け皿となったことで総合チャート制覇につながったと考えます。また、コアファンのサブスク聴取も影響しているでしょう。

無論、どの作品も2週目以降の動向を踏まえ、真の社会的ヒット作品に至るかを判断する必要があります。timelesz『Hello! We're timelesz』についても同様ですが、それでも今回のチャート制覇をとても興味深く感じています。『Hello! We're timelesz』がアルバムチャートにおけるヒットの8段階でどの位置まで上昇するか注目すると共に、デジタルニーズの高まりを受けて完全な形でいつデジタル解禁するかも注視していきます。