イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

前週のトップ10初登場曲が真のヒット曲に成るか、CHART insightから読む (2025年3月5日公開分)

昨年夏以降再開したこのエントリー、今年に入ってからタイトルを一部変更しています。前週の内容はこちら。

 

ビルボードジャパンソングチャートの動向を分析する者として、真の社会的ヒット曲とはロングヒットする、年間チャートで上位に進出する作品と考えます。週間単位で上位に入るのは好いことですが、他方で所有指標が極度に強い曲は加算2週目に、また接触指標が所有指標的な動きをなぞる曲(主にLINE MUSIC再生キャンペーン採用曲)はキャンペーン終了後に指標が大きく後退し、総合でも急落することが少なくありません。

この急落は毎週のようにみられます。ソングチャートのトップ10は多いときで5曲程度が毎週入れ替わり、ロングヒットするか否かが極端に分かれる状況です。主にライト層の支持が反映されるストリーミング指標がロングヒット曲では強い一方、急落する曲はコアファンとライト層との乖離が大きいのですが、これらを1週分のチャートの順位およびポイントのみで判断することは、現状では難しい状況です。

そのため、このブログエントリーではビルボードジャパンに対しチャートポリシー(集計方法)の改善も提案していますが、あくまで自分なりのと前置きしつつもチャートの見方を提示したいと考えたのがエントリー再開の理由です。

 

 

<2025年3月5日公開分 ビルボードジャパンソングチャート

 前週初めてトップ10入りした作品の、前週および当週におけるCHART insight>

 

※CHART insightの説明

 

[色について]

黄:フィジカルセールス

紫:ダウンロード

青:ストリーミング

黄緑:ラジオ

赤:動画再生

緑:カラオケ

濃いオレンジ:UGC (ユーザー生成コンテンツ)

 (Top User Generated Songsチャートにおける獲得ポイントであり、ソングチャートには含まれません。)

ピンク:ハイブリッド指標

 (BUZZ、CONTACTおよびSALESから選択可能です。)

 

[表示範囲について]

総合順位、および構成指標等において20位まで表示

 

[チャート構成比について]

累計における指標毎のポイント構成

 

・櫻坂46「UDAGAWA GENERATION」

 2月26日公開分 1位→3月5日公開分 17位

サカナクション「怪獣」

 2月26日公開分 2位→3月5日公開分 3位

 

当週におけるストリーミング等動向表はこちら。

 

 

櫻坂46「UDAGAWA GENERATION」とサカナクション「怪獣」については前週のチャート動向を採り上げた際、当週の予測を行っています。

櫻坂「UDAGAWA GENERATION」は前作のフィジカルシングル「I want tomorrow to come」(2024年10月30日公開分1位→翌週38位)ほど大きくはランクダウンしていません。一方で気になるのはストリーミングの推移であり、この指標の基となるStreaming Songsチャートでは当週の集計期間前半3日間の段階にて4位につけながら(下記記事参照)、最終的には21位に後退しています。

前週もお伝えしたように、「UDAGAWA GENERATION」では3月3日までLINE MUSIC再生キャンペーン(→こちら)を開催していました。一定再生回数をクリアすればプレゼントへの応募が可能となり、そのうちA賞については再生回数が多いほど当選確率が上がるというのがその内容です。

しかしながら、当週の前半で4位だったストリーミングが最終的に21位で決着した状況からは、「UDAGAWA GENERATION」のLINE MUSIC再生キャンペーンに参加したユーザーで応募資格を満たしたタイミング、もしくは応募者全員が当選するほうのプレゼントに、期間終了前に応募した方が多いことが想起されます。キャンペーン終了後、最新3月7日付のLINE MUSICデイリーチャートではこの曲は100位以内に入っていません。

これらからはコアファンとライト層(歌手のファンというわけではないが曲が気になる方)との乖離に加えて、コアファンにおいてもその聴取がLINE MUSIC再生キャンペーン参加を主目的とする方が少なくなかっただろうと読み取れます。次週はストリーミングを上位にとどめることができるか、注視する必要があります。

 

 

一方でサカナクション「怪獣」についても、ストリーミング速報値では首位となりながら最終的には2位となっています。この点については一昨日のエントリーにて紹介し、分析しています。

今後は「怪獣」がストリーミングで上位をキープし、ロングヒットに至ることができるかが鍵となります。サカナクション側は複数の発信に伴い、コアファンとのエンゲージメントの確立、そしてライト層への波及に努めている(努めようとしている)ことが、以下の対応から読み取れます。

 

サカナクションは「怪獣」のミュージックビデオを撮影していることを発信しており、公開され話題となればストリーミングにも波及するものと考えます。

ミュージックビデオの話題がストリーミングを押し上げる例として、米津玄師「BOW AND ARROW」のミュージックビデオに羽生結弦さんが出演し、公開翌日のSpotifyの動向に波及した例があります。「BOW AND ARROW」がオープニング主題歌に使われているテレビアニメ『メダリスト』と羽生さんによる演技とのシンクロ等が話題となっており、次週以降のビルボードジャパンソングチャートへの反映に注目です。

 

もうひとつ、サカナクション「怪獣」における様々な記録については所属レコード会社側も積極的に発信しています。

今回の記録については、音楽プロダクションのHIP LAND MUSICが運営するSENSA、またCDJournalでも採り上げられていますが、おそらくはビクターエンタテインメント側の発信に基づいているものと想起します。

ブログでは以前、記録達成から音楽メディアで採り上げられるまでのタイムラグを踏まえ、メディア発信はレコード会社のプレスリリースに基づくことが多いとの仮説を立てました。米津玄師やDISH//の記録報道、そのタイムラグに違和感…音楽メディアの迅速な対応を求める(2022年10月19日付)で記したようにメディアの自発的な記事化を願いつつ、今回のビクター側の発信はメディアを介しコアファン等にリーチすると考えます。

 

サカナクション「怪獣」がストリーミングでの減少を抑え、上昇に転じることができるか、今後の動向に注目です。