イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

ラジオから音楽番組が減る…2024年秋改編を踏まえ、音楽チャート等への影響を考える

基本的に春と秋が改編の時期となるラジオ業界では、次回の改編が少しずつ発表されています。その中で先週後半に発表された内容から、あくまで個人的にと前置きしますが音楽がよりOAされなくなっていくものと危惧しています。

 

 

既に発表されている改編の中で、音楽番組からお笑い芸人主体の番組に切り替わるところが複数あります。

ラジオ局J-WAVE(81.3FM)では、10月1日(火)より毎週月曜~木曜 22:00-24:00、加賀 翔(かが屋)、ダウ90000、福留光帆・前田裕太(ティモンディ)、エバースがナビゲーターを務める新番組『GURU GURU!』を放送開始いたします。

在京放送局のJ-WAVEにおいて、平日(金曜除く)22時台はあっこゴリラさんによる『SONAR MUSIC』が終了。新たな番組『GURU GURU!』では羊文学、乃紫さん、WurtSさんおよびなとりさんが日替わりでナビゲーター(DJ)を担当するコーナーが内包されていますが、その枠は10分となっています。

 

また在阪放送局のABCラジオは、平日(金曜除く)の帯番組として『ツギハギ』を開始。4組のパーソナリティのうち火曜はコミックロックバンドの超能力戦士ドリアンが担当しますが、これに伴い『ミュージックパラダイス』は終了。オリコンではこの新番組がトーク主体であると説明しています。

 

ともすれば今後発表される各局の新番組にて、それまでお笑い芸人が担当していた枠が音楽主体と成る可能性もゼロではありません。ただJ-WAVEの変更を踏まえれば、その可能性は薄いと感じています。

 

 

今回の変革を危惧する理由、そのひとつはビルボードジャパンソングチャートにおけるラジオ指標の存在感低下です。

ラジオ指標はプランテックによる全国31のラジオ局におけるOAチャートを基に、聴取可能人口等を加味して算出されます。対象となる放送局は聴取可能人口の多い放送局(東名阪等)に限られるのですが、ラジオ指標において長時間生放送音楽番組の終了は、この指標のウエイトそして存在感をさらに低くさせるものと考えます。なおこの指標は、2008年のビルボードジャパンソングチャート開始時から存在しているものです。

 

そしてそのラジオ指標では洋楽(K-POPを除く)の勢いが弱まっていますが、そのさらなる低下も容易に想像できます。洋楽がますます聴かれなくなり、総合ソングチャートでも洋楽の存在感がさらに弱まるというのがふたつ目の危惧です。

総合ソングチャートでの洋楽の低下はラジオで洋楽が流れなくなったことと比例し、そして洋楽の減少はラジオ局においてゴールデンタイムといえる平日朝昼帯の生ワイド番組でお笑い芸人の起用が増えたこととも比例していると捉えています。その上で今回、平日夜帯も音楽番組からお笑い芸人主体の番組に変化することになるのです。この傾向は以前にも記していますが、その際ラジオ業界の風潮についても指摘しています。

またこれは主観強めと前置きしますが、今のラジオはDJによる曲紹介時の技術や愛情が以前より重視されていないと感じます。イントロ乗せ技術、曲や歌手への知識の豊富さ、曲を大切に扱うことへの重要度が下がったと思うのです。

無論、すべてのお笑い芸人による番組が音楽をないがしろにしているわけではありません。しかしながらラジオ業界が全体的に上記で記したような、いわばラジオ技術を二の次にしたといえる状況がお笑い芸人の起用を増やし(一方では音楽専門のDJを減らし)、そのお笑い芸人にラジオ技術を磨くことをおそらく行っていないのではという状況が、最新曲もさることながら洋楽のOAを減らした(そして減らす)のではと感じています。

 

 

ネット時代は情報が手に入りやすいゆえ最新や流行の音楽をラジオで知るという機会が減っている、ということは容易に想像できます。しかし数多ある音楽、そして毎週沢山リリースされる新曲の中から受け手が良質な音楽を発掘するには、音楽に詳しく愛情の深い方の存在がより重要となるのではと考えるに、今のラジオ業界はそのことを軽視してはいないだろうかというのが厳しくも私見です。

音楽雑誌にて年間ベストアルバム企画が行われながらも、たとえば順位だけでもネットで紹介されない状況が続いているのは残念です。日本レコード大賞でもアルバム部門がなくなったゆえ尚の事、ネットを介してより多くの方にアルバムの魅力を伝え、きちんと評価することが必要でしょう。海外にはAOTYのようなサイトもあり、日本版が生まれてほしいと切に願います。

オールドメディアによる音楽情報の発信においては音楽雑誌に対しても違和感を抱いており、特に年間ベスト作品の紹介についてネットでの開示を以前から提案しています。良質な音楽が生まれてもそれを推薦するメディアや人は減っており、それが音楽ユーザー(リスナー)の耳をより肥えさせる機会を減らしていると考えます。もっといえば、ラジオにおける”ナビゲーター”や”DJ”という呼称は正しいのかとも感じてしまうのです。

 

 

ビルボードジャパンがソングチャートからラジオ指標を排する可能性は考えにくいとして、しかしゼロではないでしょう。この指標は現状において歌手側の施策が反映されがちであり、真にラジオ局が勧めたい曲や真の社会的ヒット曲が可視化されにくく、総合ソングチャートと乖離している状況が目立つことから、いずれ見直しが行われてもおかしくないと捉えています。ただ、指標排除の予感は当たらないでほしいものです。