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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

最新ソングチャート、「BOYZ」をはじめとするSTARTO ENTERTAINMENT作品が存在感を高める背景

最新6月11日公開分(集計期間:6月2~8日)のビルボードジャパンソングチャートでは前週首位に初登場したBE:FIRST「GRIT」が6位に後退、SixTONES「BOYZ」が首位初登場を果たしています。

 

さて、ビルボードジャパンは今年度下半期よりソングチャートおよびアルバムチャートにて、長期エントリー作品のストリーミングに関してはその指標化時に減算処理を行うリカレントルールを採用しています。このルールについてはRealSoundのコラム、および下半期初週となる前週の動向を紹介したブログエントリーをご参照ください。

 

話をSixTONESに戻すと、彼らのソングチャート制覇は「わたし」(2022年6月15日公開分)以来3年ぶりとなります。そしてこの制覇にはデジタル解禁が大きく関わっています。

 

 

SixTONESは5月17日に一部作品をデジタル解禁。その後の動向はデジタル解禁2週目のSixTONESにおけるチャート動向と、最新曲のフィジカル/デジタル同時リリースについて(6月4日公開分)等で紹介していますが、デジタル解禁以降初となるフィジカルリリース作品では表題曲に限り、フィジカルリリース日にデジタル解禁を行っています。

本作はアニメ『WIND BREAKER Season 2』オープニングテーマ。初週のCDセールス枚数は358,770枚で、デビューから15作連続で首位デビューを果たした。その他の指標を見ると、ダウンロード5位、ストリーミング93位、ラジオ17位、動画48位という結果に。

デジタルを解禁したことで、「BOYZ」の総合ソングチャート100位以内初登場時にダウンロードおよびストリーミング指標が加わった形です。なお先述したように、ストリーミングにおいてはStreaming Songsチャートの指標化時にリカレントルールが採用されています。これによりStreaming Songsチャートで100位未満だった「BOYZ」は、指標化後に100位圏内へのランクインを果たしています。

上記はSixTONES「BOYZ」の、有料会員が確認可能なCHART insight。有料会員は総合および各指標20位未満の動向を確認可能であり、ビルボードジャパンは有料会員のみが知り得る情報の掲載を可能としています。

(以下に掲載するCHART insightも、同様に有料会員が確認可能なものとなります。)

SixTONESは前作のフィジカルシングル「バリア」が3月26日公開分にて初登場。フィジカル374,475枚を売り上げた一方で獲得ポイントは7,785となり、総合ではMrs. GREEN APPLEライラック」(7,938ポイント)に次ぐ2位に。今作「BOYZ」はフィジカルセールスが358,770枚と若干下がるも8,736ポイントを獲得し、Mrs. GREEN APPLE「breakfast」(7,337ポイント)を上回り総合首位を獲得しています。

上記CHART insightでは累計ポイント構成比が確認可能。前週以前も加算されている動画再生指標(赤で表示)が目立ちますが、ダウンロード(紫)やストリーミング(青)の存在感も小さくありません。次週以降はフィジカルセールス(黄)が落ち着くことで、デジタルの存在感は高まるでしょう。

SixTONES「BOYZ」の総合ソングチャート初登場に伴い、前作のフィジカルシングル「バリア」も100→96位に上昇。ストリーミングは順位を下げるもフィジカルセールスやダウンロードが上昇していることが解ります。

 

さて重要なのはロングヒットであり、まずは上位進出した翌週の動向に注目です。SixTONESは前作「バリア」が2位到達の翌週にダウンするも、STARTO ENTERTAINMENT所属歌手のシングル曲としては高位置といえる20位にランクインしていることから、「BOYZ」がデジタル解禁に伴い下落幅を抑えられるか注目です。このデジタル解禁に伴う下落幅の減少は、前週上位進出を果たしたこの曲からもみえてきます。

フィジカルセールス指標初加算に伴い前週2位に初登場したHey! Say! JUMP「encore」は当週24位に後退するも、前フィジカルシングル「UMP」が2024年10月2日公開分で首位初登場を果たした翌週に100位未満へ後退したことに比べると良好に推移しているといえます。昨年11月にデジタル解禁したHey! Say! JUMPは、「encore」においてフィジカルシングル表題曲をフィジカルリリース日に解禁したことが功を奏しています。

 

STARTO ENTERTAINMENT所属歌手による、最新6月11日公開分ビルボードジャパンソングチャート100位以内登場作品は上記にとどまりません。

なにわ男子「ギラギラサマー」は来月リリースのアルバム『BON BON VOYAGE』から6月1日日曜に先行配信。解禁2日目以降が当週の集計期間対象となりダウンロード指標が分散されてしまった点は否めませんが、総合65位に初登場。なにわ男子はデジタル解禁後もストリーミングが強いとはいえませんでしたが、今作では同指標100位未満ながら加点対象となっています。

Travis Japan「バーニング・ラヴ」は、映画『リロ&スティッチ』の日本版エンドソングとして6月4日にデジタルリリース(同曲を収録したサウンドトラックはフィジカルアルバムとしても登場)。ストリーミングは300位未満につき未加点ながらダウンロードは2位を記録し、総合80位に初登場を果たしています。

 

さらには、以下の曲もランクインしています。

NEWSによる2012年リリースのフィジカルシングル「チャンカパーナ」が英語詞版の初加算に伴い、1月29日公開分(100位)以来となる総合ソングチャート返り咲きを果たしています。リミックス等様々なバージョンはビルボードジャパンにて基本的に合算されないものの、歌詞の言語のみが異なる場合は合算対象に。またオリジナル版と英語詞版とでメンバー構成が異なりながらも合算されることが、今回の結果から判明しています。

NEWSは昨年9月以降にデジタルを解禁したことで、解禁前からカラオケで人気だった「チャンカパーナ」がロングヒット。総合ソングチャート100位以内から後退した後もカラオケ(緑で表示)が人気を維持し、またデジタル解禁に合わせてミュージックビデオも充実させたことで動画再生(赤)がストリーミング的な人気を維持しています。その後も接触指標群は加点され続け、今回の英語詞版登場により再浮上に至った形です。

 

カラオケ人気が続くタイミングでデジタル解禁しソングチャートで上位進出するという例は、KinKi Kids「愛のかたまり」(2001年リリースのフィジカルシングル「Hey! みんな元気かい?」カップリング曲)も同様。先月の解禁に伴いソングチャートで100位以内初登場を果たすと、5週連続でランクインしています。

 

そして、8人体制下で初の作品となるtimelesz「Rock this Party」は当週100位に入り、3週ぶりに返り咲き。リカレントルール導入後ゆえのフックアップの側面もありつつ、次週のアルバムチャートで『FAM』が初登場することから同作収録曲が再び注目を集めたと考えられます。STARTO ENTERTAINMENT所属歌手作品のソングチャート通算13週ランクインは、デジタルヒットだからこそ成し遂げられたといえるでしょう。

 

 

フィジカルセールス指標加算時におけるポイントの上昇、フィジカルセールス指標加算2週目におけるダウン幅の縮小、アルバムリード曲の総合チャート登場、過去曲のフックアップ、そしてロングヒット化…これらはデジタル解禁ゆえに可能になったと捉えていいでしょう。STARTO ENTERTAINMENT所属歌手作品は当週のソングチャートに8曲ランクインしており、デジタルに明るくなって以降存在感を高めています。

 

 

最後に。次週のアルバムチャートではtimelesz『FAM』が初登場を果たします。ビルボードジャパンのアルバムチャートはフィジカルセールスのみで20万枚近くを売り上げれば総合を制しやすいといえますが、他方オリコンが発表した6月10日火曜付デイリーアルバムランキングでは『FAM』が好セールスを記録したことがアナウンスされています。本日発表のビルボードジャパンによる速報値(水曜までの売上動向)にも注目です。

『FAM』は現時点でデジタル解禁の予定がなく、timelesz側の意図は解りかねます。デジタル解禁に伴いフィジカルセールスのインパクトが薄れる可能性を踏まえての措置かもしれませんが、しかし早くとも来週のデジタル解禁が望ましいというのが私見。デジタル未解禁作品はアルバムチャートでの急落が目立つこと、またデジタルに強いアルバムは収録曲がソングチャートでも好成績に至る可能性があることがその理由です。

『FAM』の件は、ビルボードジャパン上半期チャート振り返り時にも記載しています。

アイドルやダンスボーカルグループの勢力図においては、デジタルに明るくなって来きたSTARTO ENTERTAINMENT所属歌手の動向が気になります。しかしながら現時点で未だWEST.やAぇ! groupはデジタル解禁に至らず、また先述したSnow Manやtimeleszをはじめ、先月デジタル解禁したSixTONESも、デジタルアーカイブが完全ではありません。

それらの解禁なるかに注目すると共に、デジタル解禁後のフィジカルリリース作品におけるデジタル取扱について注視する必要があります。timeleszによる8人体制初のアルバム『FAM』は、現時点でデジタルリリースの予定がありません(前週のトップ10初登場曲が真のヒット曲に成るか、CHART insightから読む (2025年4月9日公開分)(4月12日付)参照)。デジタル解禁もアーティストパワー上昇に貢献したと考えれば、フィジカル優先の姿勢が歌手、そしてSTARTO ENTERTAINMENT全体に今後どう影響するか、注目です。

アイドルやダンスボーカルグループは特に女性歌手にて、ストリーミングヒットに伴い勢力図に変化が生まれているといえます。他方、男性歌手ではSTARTO ENTERTAINMENT所属歌手がデジタルに明るくなることで存在感が高まっていることが、最新チャートからもみえてきます。デジタルの充実のみならず、フィジカルリリース時にデジタルをきちんと解禁するか、それにより勢いをさらに高められるか…今後の動向に注目です。