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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

2024年度第3四半期、ソングチャートを中心にビルボードジャパンの各種データ一覧表を掲載する

2024年度のビルボードジャパン各種チャートは、8月28日公開分(一部は8月29日公開分)にて第3四半期が終了しています(なお今年度は集計期間が53週となる可能性があります)。今回は第1四半期、第2四半期(下記参照)に続き、第3四半期のデータを紹介、また簡単な解説を掲載します。

 

 

まずは総合ソングチャート、1~5位の定点観測データを紹介します。

ビルボードジャパンは3月にCHART insightの仕様を変更したことで、指標の基となるチャートが公開されているフィジカルセールス、ダウンロードおよびストリーミングを除き、各指標20位未満の順位は記事掲載分を除き可視化されなくなりましました。よってそのような場合、”(20↓)”という表記を用いています。CHART insightのリニューアルについては上記リンク先をご参照ください。

(なお、CHART insightのリニューアル以降でも各指標20位未満の順位を掲載することがあります。これはビルボードジャパンによる各種記事に100位までの順位が掲載されているためです。)

また総合チャートが折れ線ではなく棒グラフで表示されたことにより、総合100位未満(300位圏内)なのかそれとも300位圏外なのかが判別できなくなりました。そのため前週順位の掲載は今回控えています。

Creepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」が週間1万ポイントを割り込んだこともあり、上位にアイドルやダンスボーカルグループの作品が登場することが増えています。一方でそれら作品のヒットは持続が難しい状況であり、Mrs. GREEN APPLEライラック」の上位安定が際立っています。集計分では「Bling-Bang-Bang-Born」が101,848ポイント、「ライラック」が101,770ポイントと、僅差になっています。

フィジカルシングル10万枚以上の作品(それが見込める作品を含む)リストを上記に。これら作品はセールス初加算週に総合ソングチャートでピークに到達するものの、デジタル(特にストリーミングや動画再生といった接触指標群)が強ければポイントのさらなる増加、且つロングヒットにつながったでしょう。デジタル未解禁歌手ならば尚の事であり、これらについては先月記した"ヒットの7段階"でも説明しています。

週間単位の上位進出も素晴らしいながら、真の社会的ヒット曲とはロングヒットし年間チャートにランクインする作品であるというのがチャート分析者としての見方です。このことはビルボードジャパン、また米ビルボードにおいてもコアファンの過度な熱量を反映しにくい形にチャートポリシー(集計方法)を変更し続けているため断言可能です。

 

 

では、ソングチャートの各指標動向をみてみます。フィジカルセールスについてはその影響度が特に一時的であることを踏まえ、その他5指標(ダウンロード、ストリーミング、ラジオ、動画再生およびカラオケ)のトップ20推移をまとめています。

ダウンロードは第3四半期において首位が毎週入れ替わり、フィジカルセールス同様に所有指標であることを実感できます。ただしアイドルやダンスボーカルグループ以外の歌手も首位に立っていること、映像作品タイアップ曲が強いことが特徴です。またフィジカルセールスよりもロングヒットする傾向にあります。

ソングチャート構成指標の中で影響力が最も大きいストリーミングでは、Creepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」が3週、Mrs. GREEN APPLEライラック」が10週首位を記録。その「ライラック」は前半3週で2位、「Bling-Bang-Bang-Born」は後半9週で2位となり、この期間の2強であることはここからも解ります。また「青と夏」(2018)のトップ5入りを始め、Mrs. GREEN APPLEによる新旧様々な作品の好調が見て取れます。

接触指標ながらユーザー(リスナー)に選曲権のないラジオは特殊であり、チャート推移が激しくなる傾向にあります。社会的ヒット曲でも上位にとどまり続けることや連覇が難しいのですが、THE RAMPAGE from EXILE TRIBE24karats GOLD GENESIS」が9週続けてトップ20入りを果たしたのは注目すべき点であり、この前例を踏まえてラジオにおける歌手側の施策が今後強化される可能性も考えられます。

動画再生はストリーミングと順位が比例する傾向が高く、デジタル未解禁がまだ多いSTARTO ENTERTAINMENT所属歌手作品も上位安定の傾向にあります。第3四半期は同事務所所属歌手のフィジカルリリースは多くなかったのですが、Snow Manの上位安定が目立つ形です。そして元Sexy Zone中島健人さんがキタニタツヤさんと組んだGEMNによる「ファタール」のロングヒットが見て取れます。

カラオケについては入れ替わりが多くはなく、Creepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」とVaundy「怪獣の花唄」が常時トップ2を占め、tuki.「晩餐歌」が3位に12週在籍。今年リリース曲のランクインは「Bling-Bang-Bang-Born」、Mrs. GREEN APPLEライラック」そしてOmoinotake「幾億光年」に限られ、新曲にとって狭き門であることが解ります。

 

ソングチャートの構成指標には含まれないものの主に接触指標群に影響を与える、"踊ってみた"等に代表されるUGC(ユーザー生成コンテンツ)、およびTikTokチャートの動向を上記に。UGC人気を示すTop User Generated Songsチャートのほうが総合ソングチャートと比例するように感じます。ここでも先述したGEMN「ファタール」や、こっちのけんと「はいよろこんで」が第3四半期後半に人気を博しています。

ニコニコ動画についてはサイバー攻撃による被害を踏まえ、第3四半期2週目以降現在までチャートが公開されていない状況です。

 

ビルボードジャパンが昨秋開始したGlobal Japan Songs Excl. Japanも紹介。米ビルボードによるグローバルチャートのうちGlobal 200から日本市場分を除いた上で日本の楽曲を抽出したこのチャートでは、XGの強さが際立っています。ただ日本の楽曲全体の勢いは下がっており、最新8月31日付Global 200にて日本の楽曲がチャート新設以降はじめてゼロに。この状況は日本の音楽業界が総出で考える必要があるというのが私見です。

 

アルバムチャートも紹介。総合および構成2指標の最上位を掲載したこの表においては、2指標の合計売上数(ユニット数)およびユニット数におけるダウンロード数の割合を追加しています(このリニューアルについては、King & Princeデジタル解禁やアルバムチャート動向から、STARTO ENTERTAINMENT全体のデジタル解禁を提案する(5月20日付)にて紹介しています)。

フィジカル1枚と1ダウンロードでは後者のウエイトが高いものの売上数はフィジカルがかなり大きく、ゆえにフィジカルに強い作品が総合首位に進出しやすい状況です。加えて最近はリリースから時間が経った作品が施策に伴いフィジカルセールス上昇、総合でも首位に立つ事例が登場していますが、デジタルとの乖離が目立っています。ブログでは真の人気作品を把握すべく、ストリーミング指標の導入検討を提案しています。

ほぼ毎週フィジカルセールスに強い作品が登場するゆえに総合での連覇や2週以上の首位獲得が難しいこのチャートですが、一方でNumber_iやAdoさん、米津玄師さんが2指標完全制覇を達成しています。特にNumber_iはソングチャート共々、ダウンロードの強さも際立っている状況です。

 

最後に、トップアーティスト(Artist 100)の週間1~5位リストも掲載。こちらはソングチャートとアルバムチャートを合算したものです。

トップアーティストチャートでは第3四半期13週のうち9週をMrs. GREEN APPLEが制し、今年度は39週中25週で首位に。またback numberやYOASOBI等の強さも目立つ一方、アイドルやダンスボーカルグループはフィジカルセールス指標初加算時に上位進出しながら翌週には急落するという傾向が目立っています。

 

 

以上、簡潔ながら各種データについて紹介しました。

今回の説明はあくまで各種データの上位からみえてくるものを記しており、データを細かく見れば色々な気付きが得られるはずです。分析をお勧めするとともに、ビルボードジャパンのCHART insightサービスを是非活用していただきたいと願います。