最新8月28日公開分のビルボードジャパンソングチャートでは、アイドルやダンスボーカルグループの作品において気になる動きがみられます。
65万枚以上のフィジカルセールスを獲得した乃木坂46「チートデイ」は総合2位に初登場しています。実はこの曲、フィジカルリリースに先駆けて7月19日にデジタル解禁されているのですが、当週ストリーミング指標は300位以内に達せず加点されませんでした。ストリーミング300位以内に入り、その加点が大きくなればNumber_i「INZM」に肉薄したものと考えます。
CHART insightではストリーミング指標は青で表示されるのですが、「チートデイ」においてこの指標が加点されたのは4週前に100位未満ながら300位圏内に入った一度のみです。
乃木坂46において、フィジカルセールス指標初加算週にストリーミングで加点を逃したのは前作「チャンスは平等」に続く形に。他方、当週は日向坂46「絶対的第六感」が、ストリーミング指標が牽引する形で総合48位に初登場を果たしています(当該指標は100位未満(300位圏内)→40位に上昇)。同曲はLINE MUSIC再生キャンペーンを採用していますが、そのハードルが46回と低いことも上位進出の一因といえるかもしれません。
9月18日(水)発売、
— 日向坂46 (@hinatazaka46) 2024年8月15日
12thシングル「絶対的第六感」が
各音楽配信サイトにて順次先行配信スタートしました🎧✨https://t.co/NezG1HCMgC
さらに!配信を記念し、
LINE MUSICにてキャンペーンの実施が決定♬
詳細はURLをご確認ください☀https://t.co/81GM7DTuSP#日向坂46_絶対的第六感…
「絶対的第六感」についてはLINE MUSIC再生キャンペーン終了後の動向を踏まえて社会的ヒットに至るかを確認する必要があり、また「チートデイ」はキャンペーン未採用であることも考慮すべきですが、後者における動画再生指標の大きくなさからも同曲のライト層支持が多くないだろうことを感じています。乃木坂46は『NHK紅白歌合戦』の常連ですが、今年は他の坂道グループ等とその座を競うことになるかもしれません。
最新のビルボードジャパンソングチャートではSnow Man「EMPIRE」が初登場。ニューアルバム『RAYS』(10月30日リリース)のリード曲は、動画再生指標(CHART insightでは赤で表示)のみで日向坂46「絶対的第六感」のひとつ上となる47位に付けています。
Snow Manは最新シングル「BREAKOUT」もこの指標のみで総合100位以内に2週入った実績があり、フィジカルを心待ちにしているコアファンのみならずライト層の注目も集めているだろうことが見て取れます。一方でSnow Manは「BREAKOUT」や「EMPIRE」にて、以前「ブラザービート」(2022)で獲得できていたストリーミング指標が加点されていないことが気になります(下記参照)。
ストリーミング指標はYouTubeをオーディオストリーミングで用いた(聴いた)方が多ければ加点されることがあります。当週「EMPIRE」は高い動画再生数を誇っていることがオリコンの記事(→こちら)やデジタルクリエイターズのポスト(→こちら)から推測できますが、ストリーミング指標獲得に至れなかったのは近年ストリーミング全体の再生回数が上昇したことで300位圏内に到達しにくくなったためと考えられます。
それでも、フィジカルリリース前の動画再生回数の大きさ、「ブラザービート」におけるストリーミング指標加点等はSnow Manのサブスク需要の大きさを物語るに十分でしょう。Snow Manがデジタル解禁を前向きに検討することを願うばかりです。
ONE OR EIGHT「Don't Tell Nobody」が当週のビルボードジャパンソングチャートで37位に初登場。"グローバルデビュー"と謳われた同曲はワンリパブリックのライアン・テダー等が手掛け、世界の主要な最新曲を網羅するSpotifyの"New Music Friday"プレイリストにも収録。メディアもそれらについて採り上げています。
一方で、「Don't Tell Nobody」が当週獲得したポイントはすべてラジオ指標に因るものであり、ストリーミングやダウンロード等は獲得できていません。ラジオ指標は3週連続で加点されており、他指標との乖離が目立ちます。
ラジオ指標はプランテックによる全国主要ラジオ局のOAチャートを基に、各局の聴取可能人口等を加味して算出。ONE OR EIGHT「Don't Tell Nobody」は当週OAチャートを制していますが(ラジオ指標では2位)、『主に帯コーナー/番組などの定期枠で大量に』、また『オンエア開始後3週目となる今週からリクエストオンエアが確認され始めた』点から(『』内は下記記事より)、歌手側の施策が反映されたと捉えていいでしょう。
「Don't Tell Nobody」についてはメディア報道も目立ちますが(Yahoo! JAPANで"ONE OR EIGHT"をニュース検索した結果はこちら)、Spotifyプレイリストへの選出やビルボードジャパンHeatseekers Songsチャート制覇の発信はラジオOAの好調と同様、歌手側(レコード会社や芸能事務所)の施策に因るものと捉えていいのかもしれません。
無論それ自体は悪いことではなく、プレスリリースは他の歌手でも行っています(一方でプレスリリースがないとほぼ報じないメディアの姿勢は問題でしょう)。ただラジオ以外の指標がゼロという状況は気掛かりです。また新曲プレイリストがチェックされているわけではない(新曲がリリース週に聴かれているわけではない)ことが可視化されたといえる状況からは、日本のリスナーのいわば保守性も見えてきたのではないでしょうか。
ちなみに、Spotify"New Music Friday"プレイリストに日本の歌手による作品がリストインすることは珍しいことです。米津玄師『LOST CORNER』リリース時にその収録曲は含まれませんでした。ONE OR EIGHTの活動をSpotify側が考慮したことがリストインの理由かもしれませんが、本来は日本の楽曲がもっとこのプレイリストに収録されなければ、日本の音楽作品が世界に轟くことは難しいのではと考えます。