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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

2024年度第4四半期、ソングチャートを中心にビルボードジャパンの各種データ一覧表を掲載する

2024年度のビルボードジャパン各種チャートは、11月27日公開分(一部は11月28日公開分)にて第4四半期が終了。2024年度の集計期間は52週となります。今回は第4四半期のデータを紹介すると共に、簡単な解説を掲載します。第3四半期までのデータは下記リンク先をご参照ください。

 

 

まずは総合ソングチャート、1~5位の定点観測データを紹介します。

ビルボードジャパンは3月にCHART insightの仕様を変更したことで、指標の基となるチャートが公開されているフィジカルセールス、ダウンロードおよびストリーミングを除き、各指標20位未満の順位は記事掲載分を除き可視化されなくなりましました。よってそのような場合、”(20↓)”という表記を用いています。CHART insightのリニューアルについては下記リンク先をご参照ください。

また総合チャートが折れ線ではなく棒グラフで表示されたことにより、総合100位未満なのか完全にカウントされなくなったかは判別できなくなりました。そのため前週順位は掲載を控えています。

Creepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」のような常時強い曲がなくなったことで毎週首位が後退していましたが、世界的にヒットするロゼ & ブルーノ・マーズ「APT.」が年度末に2連覇を達成しています。一方、フィジカルセールスに強い曲がその加点に伴い上位に進出しながらもその直後に急落するという事態が続いています。

週間セールス10万枚以上のフィジカルシングルを上記表にまとめています。フィジカルセールス指標加算対象曲はセールス初加算週に総合ソングチャートでピークに達するものの、デジタル(特にストリーミングや動画再生といった接触指標群)が強ければポイントのさらなる増加、且つロングヒットにつながるはずです。この点については以前紹介した"ヒットの7段階"でも説明しています。

週間単位での上位進出も素晴らしいながら、真の社会的ヒット曲とはロングヒットし年間チャートにランクインする作品であるというのがチャート分析者としての見方です。

 

 

ソングチャートを構成する各指標の動向をみてみます。フィジカルセールスについてはその影響度が特に一時的であることを踏まえ、その他5指標(ダウンロード、ストリーミング、ラジオ、動画再生およびカラオケ)のトップ20推移をまとめています。

ダウンロードは第4四半期でも首位が毎週入れ替わる形に。ベテラン歌手もさることながら、Snow Manのデジタル初解禁曲「One」も首位を獲得しています。

ストリーミングはソングチャート構成指標の中で影響力が最も強く、週間トップ3入りした曲は総合チャートでもロングヒットしています。

ラジオは接触指標ながらユーザー(リスナー)に選曲権のないため特殊であり、歌手側によるプロモーションの影響力も相まって入れ替わりが激しくなる傾向です。ロングヒット自体難しい中、ロゼ & ブルーノ・マーズ「APT.」が年度末に5週連続トップ3入り、且つ最終週に首位に到達したことはこの曲の社会的人気を物語るに十分です。

動画再生はストリーミングと順位が比例する傾向が強い一方、デジタル未解禁が今も多いSTARTO ENTERTAINMENT所属歌手作品も上位に進出する傾向があります。第4四半期で目立つのはSnow ManEMPIRE」やGEMN「ファタール」、そしてTOBE発となるNumber_iのロングヒット。弌誠「モエチャッカファイア」も安定しています。

カラオケは安定傾向にあり、新曲のランクインが難しいのが特徴。第4四半期はVaundy「怪獣の花唄」が首位をキープし、あいみょんマリーゴールド」も3位以内に入り続けています。その中で他指標よりも先に、12月前の段階からback number「クリスマスソング」が上位に進出しているのは興味深い傾向です。

 

ソングチャートの構成指標には含まれないものの主に接触指標群に影響を与える、"踊ってみた"等に代表されるUGC(ユーザー生成コンテンツ)、およびTikTokのチャート推移を上記に。いずれのチャートも、上位曲は以前よりロングヒットする傾向にあるのではと捉えています。その中で、UGCは先述した弌誠「モエチャッカファイア」、TikTokはCUTIE STREET「かわいいだけじゃだめですか?」の安定が目立ちます。

なお、TikTok Weekly Top 20チャートは2024年度にて終了となり、12月2日のサイトリニューアル以降はアーカイブが確認できなくなりました。理由は現時点で明らかになっていませんが、2025年度からは新たにHot Shot Songsチャートが始まっています。

ニコニコ動画についてはサイバー攻撃による被害から復旧し、第4四半期2週目から再開。新曲は安定しないことが多く、サツキ「メズマライザー」等ロングヒット曲が存在感を示しています。

 

ビルボードジャパンが昨秋開始したGlobal Japan Songs Excl. Japanは、米ビルボードによるグローバルチャートのうちGlobal 200から日本市場分を除いた上で日本の楽曲を抽出。XGの複数曲ランクインが目立つほか、Creepy Nuts「オトノケ」はGlobal Japan Songs Excl. Japanの基となるGlobal 200でも200位以内ランクインを続けており、Global Japan Songs Excl. Japanでは2位以下を大きく引き離しているものと考えます。

 

 

アルバムチャートも紹介。総合および構成2指標の最上位を掲載したこの表では、2指標の合計売上数(ユニット数)およびユニット数におけるダウンロード数の割合も表示しています。

フィジカル1枚と1ダウンロードでは後者のウエイトが高いものの売上数はフィジカルがかなり大きく、ゆえにフィジカルに強い作品が総合首位に進出しやすい状況です。加えて最近はリリースから時間が経った作品が施策に伴いフィジカルセールス上昇、総合でも首位に立つ事例が登場していますが、デジタルとの乖離が目立っています。ブログでは真の人気作品を把握すべく、ストリーミング指標の導入検討を提案しています。

ほぼ毎週フィジカルセールスに強い作品が登場するゆえ総合での連覇や2週以上の首位獲得は難しく、今年度フィジカルで唯一初週ミリオンを達成したSnow Man『RAYS』も連覇はできませんでした。そのSnow Manをはじめ、第4四半期も男性アイドルやダンスボーカルグループの強さが際立っています。

 

 

最後にトップアーティスト(Artist 100)の週間1~5位リストも掲載。このチャートはソングチャートとアルバムチャートとを合算したものです。

トップアーティストチャートでは第4四半期13週のうち8週をMrs. GREEN APPLEが制し、今年度は52週中33週で首位に。アルバムチャート首位初登場に伴い男性アイドルやダンスボーカルグループがトップアーティストチャートでも首位に立ちながら翌週には比較的大きく順位を落とすため、前週2位のMrs. GREEN APPLEが返り咲くという状況が続いています。

 

 

以上、簡潔ながら各種データについて紹介しました。これらデータが、ビルボードジャパン2024年度年間チャートを読み解くための参考資料となるならば幸いです。なお年間チャートは12月6日午前4時に発表され、このブログでも同日午前7時までに解説エントリーを掲載します。

今回の説明はあくまで各種データの上位からみえてくるものを記しており、データを細かく見ればより多くの気付きを得ることができるはずです。このデータ資料、そしてビルボードジャパンのCHART insightサービスを是非活用していただきたいと願います。