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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

【ビルボードジャパン最新動向】YOASOBI「アイドル」20連覇の理由、そしてLE SSERAFIM「UNFORGIVEN」の動向を考える

最新8月30日公開分ビルボードジャパンソングチャート(集計期間:8月21~27日)ではYOASOBI「アイドル」が初登場から20週連続で首位を獲得。単独最長首位記録をさらに伸ばし、大台に突入しました。

最新チャートでは全体的にポイントが前週より低下する傾向にあって、YOASOBI「アイドル」は前週比108.3%と増加しています。ただしダウンロードは前週比1割以上、またストリーミング指標の基となる再生回数も5%以上ダウンしています。

一方で、CHART insightでは赤で表示される動画再生指標においては、再生回数が倍以上となっています。この指標の数値は基本的に発表されないものの、ビルボードジャパンの最新ポッドキャストにて今回は紹介されており、それだけ特筆すべき動向だったといえるでしょう。

ビルボードジャパンでは動画再生指標増加の理由について、音楽フェス等の効果を挙げています。実際、YouTubeの企画"YouTube Music Weekend"のトリとして集計期間最終日に動画を公開し、「アイドル」も披露されていました。

一方でこの動画は集計期間最終日の公開ゆえ、やはり今回の動画再生指標増加にはHIKAKINさんの効果が大きいと捉えています。動画がポイントに影響する可能性については前週のブログエントリーにて記載していますが、その効果は予想以上といえるかもしれません。

歌ってみたや踊ってみた等歌手の公式ではない動画はUGC(ユーザー生成コンテンツ)と呼ばれ、楽曲の動画再生指標にはカウントされませんが、先述したように比較等を目的に再生する方が増えるだろうことが予想されます。実際、HIKAKINさんの再現動画に関してはSEKAI NO OWARI「Habit」という事例もあります(「Habit」公開の際もHIKAKINさんはこの曲に関するヘッダーを用意していました)。

UGCを対象とするビルボードジャパンのTop User Generated Songsチャートでも、YOASOBI「アイドル」は最新8月30日公開分にて首位をキープしています。

このタイミングでのHIKAKINさんによる動画の公開も的確だったといえます。仮にこのままYOASOBI「アイドル」のポイントが減少を続けていれば(加えて乃木坂46「おひとりさま天国」のデジタル指標群がもう少し伸びていれば、でもあるのですが)、「アイドル」は初めて首位の座を譲った可能性も考えられたわけです。

HIKAKINさんとYOASOBI側とで公開タイミングを協議したか等、公開前のコンタクトがあったのかは分かりかねますが、結果的にフィジカルセールスのハーフミリオンが確実視された(そして実際に71万枚以上売り上げた)乃木坂46「おひとりさま天国」のリリースに公開が重なったことで、HIKAKINさんの動画が「アイドル」の動画再生指標増強に寄与し、20連覇達成のひとつの原動力となったと断言していいでしょう。

 

 

さて、今回気になる動きとしてLE SSERAFIM「UNFORGIVEN」も取り上げます。

総合6位に初登場したバージョンと登場17週目で69位に上昇したバージョンとでは、日本語版かオリジナルバージョンかという違いのほか、Adoさん参加の有無も差となっています。ビルボードジャパンでは言語のみが異なる場合は合算しますが、共演やフィーチャリングが追加されたバージョンやアレンジが異なる場合は(基本的に)オリジナルバージョンと分けられるため、このような事態が発生します。

 

Stray KidsがLiSAさんを迎えた新曲「Social Path」がフィジカルEPリリースに先駆けて公開されたばかり。TOMORROW X TOGETHERは幾田りらさんを迎えた作品もリリースしている等これまでにもK-POP歌手の作品にJ-POP歌手が参加することがありましたが、今後この流れはさらに加速するかもしれません。

この"K-POP×J-POP"という動きは主に日本向け作品において行われており、J-POP歌手の知名度等を用いて広く音楽ファンに浸透させることも意識した起用とも考えられます。他方音楽チャートにおいては「UNFORGIVEN」のポイントが割れる事態となっており、社会的ヒットの鑑であるこのチャートでさらなる上位進出を逃したのは勿体無いというのが厳しくも私見です。

LE SSERAFIMは「UNFORGIVEN」のフィジカルリリースにおいて、仮にAdoさん未参加の日本語版を1曲目、Adoさん追加版を2曲目としていれば、フィジカルセールス指標は以前からランクインしているほうに合算されることとなり、最新のソングチャートにて4位以上への上昇も十分考えられたはずです。実際、日本の音楽番組ではAdoさん未参加の日本語版が披露されているゆえ、できなくはなかったものと考えます。

 

その一方で、「UNFORGIVEN」の結果判明以前から唱えていたビルボードジャパンに対するチャートポリシー変更提案についても、今一度記す必要があると考えます。

たとえば、米ビルボードソングチャートで最高10位を記録したジェイク「Golden Hour」については藤井風さんをはじめ、フィリピンのSB19やニュージーランドのシャーリー・セティア等様々な地域の歌手とコラボレーションを実施。このようなリミックスは、各国や地域でジェイクの名を(現地の人気歌手とコラボすることで)浸透させるのに有効といえます。

そして200以上の国や地域のデジタルヒットを可視化した米ビルボードによるグローバルチャートにおいても、リミックスは有効に作用します。グローバルチャート(Global 200、およびGlobal 200から米の分を除いたGlobal Excl. U.S.)では米ビルボードソングチャート同様、リミックスは合算対象となるのです(下記リンク先参照)。ゆえに先述した「Golden Hour」においても様々なバージョンが合算対象となります。

一方でビルボードジャパンはリミックスに関するチャートポリシーがグローバルチャートと異なります。これにより「UNFORGIVEN」はふたつのバージョンが100位以内に存在する形となりましたが、仮にチャートポリシーがグローバルチャートと統一されていれば合算されることになります。またアレンジ違いにより合算対象外のはずのTHE FIRST TAKE動画が合算される矛盾も、変更を実施することで解消できるはずです。

 

ビルボードジャパンに対するチャートポリシー変更提案についてはこのブログにて幾度か述べています。チャートの集計開始日を金曜にすることも含め、ビルボードジャパンの決断を強く期待します。