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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

【ビルボードジャパン最新動向】YOASOBI「アイドル」単独最長首位記録達成…”異次元”ヒットに至った様々な要因

最新7月19日公開分ビルボードジャパンソングチャート(集計期間:7月10-16日)ではYOASOBI「アイドル」が初登場から14週連続で首位を獲得。連続での最長首位獲得記録を更新すると共に、不連続を含む首位獲得週数においてOfficial髭男dism「Subtitle」を上回り単独最長記録を樹立しました。

新記録についてはYOASOBI側もしっかりと反応しています。

今回は新記録を成し遂げた「アイドル」の動向を、今一度振り返ります。

 

 

YOASOBI「アイドル」の14週の動向は以下の通り。

 

「アイドル」の強さはまずなにより、週間そしてロングヒットの要となる接触指標群(ストリーミングおよび動画再生)の充実にあるといえます。ストリーミング(CHART insightでは青で表示)はこの1ヶ月間緩やかに減少するものの再生回数の下落幅は1割未満に抑えており、ポイント全体の6割以上を占めているのがポイント。そして「アイドル」は最新チャートにおいて、史上最速となるストリーミング3億回再生を突破しています。

またそのストリーミングや動画再生(CHART insightでは赤で表示)に影響を及ぼすTikTokUGC(”踊ってみた”や”歌ってみた”等に代表されるユーザー生成コンテンツ)も強いのが特徴。ビルボードジャパンによるTikTok Weekly Top 20およびTop User Generated Songsというふたつのチャートで「アイドル」は共に12連覇を達成。カラオケの強さも相まって、接触のみならず”活用”の強さも大ヒットにつながっています。

活用でのヒットは、上記の分割公開に代表されるYOASOBI側のデータ提供の巧さも大きく影響していることは間違いありません。

 

加えて「アイドル」は英語詞版をリリース。ビルボードジャパンではリミックス自体は合算対象外ながら、歌詞のみが異なる場合は合算されるというチャートポリシー(集計方法)を活かし、英語版の加算でポイントアップにつなげています。

(上記表は最新7月22日付までのグローバルチャートの動向。)

英語版のリリース、そしてそれが金曜解禁であったことは、その金曜を集計期間初日とする米ビルボードのグローバルチャートにも影響を及ぼし、「アイドル」は6月10日付Global Excl. U.S.(Global 200から米の分を除いたソングチャート)においてJ-POPで初の首位に立ち、これまで3度その位置に就いています。またGlobal Excl. U.S.制覇の報道は、ビルボードジャパンでの6月14日公開分のポイントキープにつながっています。

そして「アイドル」においては英語詞版も収録したフィジカルをリリース。その初加算に伴い、初登場から10週後にして2022年度以降における週間最高ポイントを達成しています。初週フィジカルセールスはYOASOBI史上歴代最多、且つ「怪物」の倍近い売上となっており、デジタルの大ヒットがフィジカルにも寄与した形です。

 

無論、YOASOBI「アイドル」はオープニングテーマに用いられた『【推しの子】』が4月クールのテレビアニメでいわゆる覇権を獲ったことが何より大きいのですが、接触、所有そして活用における大ヒット、また様々な施策の巧さが史上初の14週首位獲得につながったことは間違いないでしょう。

また、ビルボードジャパンが時代に即してチャートポリシーを変化させ、デジタルのヒット曲が週間単位でも最上位に到達しやすい状況に成ったことも「アイドル」の新記録樹立につながっています。チャートポリシーの相次ぐ変更ゆえにその変更前後の作品で単純比較することは難しいものの、今後オールタイムソングチャートが発信されることがあるならば「アイドル」が上位に進出する可能性は十分考えられます。

 

 

YOASOBI「アイドル」においては、首位獲得週数をいくつに伸ばすかが今後の注目点となります。そこで、まずはライバルと成るであろう曲の動向をチェックします。

 

最新7月19日公開分にて2位に初登場を果たしたBTSのジョングクによる、ラトーを客演に迎えた「Seven」がどうなるかがひとつのポイントと言えます。「Seven」は今回の集計期間5日目の日本時間13時に解禁され、およそ2日半の加算で2位に到達。次週は1週間フル加算となるため、ポイント上昇の可能性は十分です。

また次週は米津玄師「地球儀」が初登場予定。こちらは月曜解禁に伴い1週間フル加算されます。この曲については昨日付ブログエントリー(→こちら)で採り上げましたが、たとえばデイリー再生回数が可視化されるSpotifyにおいては最新7月18日付の段階で「地球儀」は10位に。一方で同日付ではジョングク feat. ラトー「Seven」が初の首位に立ち、「アイドル」が3ヶ月以上就いていた首位の座を奪取しています。

またビルボードジャパンの最新ポッドキャストにて、YOASOBI「アイドル」はUGC再生回数が比較的大きくダウンしていることが判明しています。活用はストリーミングや動画再生といった接触指標群に比べて移り変わりが激しいと思われること、またラジオでの勢いが弱まってきたこと(本来、日本ではラジオ指標が最も速くダウンする傾向にあります)等を踏まえれば、ポイント下落幅はしばらく1割以上が続くかもしれません。

 

その下落幅を抑えるべく、加点となる事案が生まれるかに注目です。「アイドル」は7月26日にアナログ盤がリリースされ、8月2日公開分のフィジカルセールス指標に加算されます。またYOASOBIは未だ「アイドル」をテレビでパフォーマンスしたことがないため、そのパフォーマンス次第ではポイントを伸ばす可能性も考えられます。ただ、ともすればそのテレビパフォーマンスは『NHK紅白歌合戦』が初となるかもしれません。

 

 

緩やかなポイントダウンの傾向にあるYOASOBI「アイドル」ですが、この曲のヒットはやはり”異次元”と呼べるものです。この表現はビルボードジャパンが4月26日公開分のソングチャートの記事にて用いており、YOASOBI側も反応していたことはブログエントリー(→こちら)にて記しています。そして今振り返るに、登場2週目におけるこの異次元という形容はまさにその通りだったと強く感じるのです。