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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

前週および当週の上位初進出曲におけるCHART insightから、真のヒット曲に成るかを読む (2023年8月30日公開分)

今回のエントリーでは、ビルボードジャパンソングチャートにおいて前週上位に初めて進出した曲の翌週動向、そして最新週における上位初進出曲の状況をチェックし、真の社会的ヒット曲に成るかを読みます。前週(8月23日公開分)のエントリーはこちら。

最新のソングチャートに関する記事は、以下をご参照ください。

 

まずは前週のエントリーにて紹介した上位初登場曲の、最新チャートにおける動向をCHART insightを用いて紹介します。このCHART insightについては、下記ポスト(ツイート)にて簡潔に説明しています。

 

<2023年8月23日公開分 ビルボードジャパンソングチャートにて

 20位までに初めて登場した作品の、翌週におけるCHART insight>

 

亀梨和也「Cross」 前週3位→100位未満(300位圏内)

・カラフルダイヤモンド「あまキュン」 前週5位→100位未満(300位圏内)

星野源「生命体」 前週7位→52位

FANTASTICS from EXILE TRIBE「Tell Me」 前週11位→82位

・BLACK IRIS「That That That」 前週12位→300位圏外

 

BLACK IRIS「That That That」のように、総合20位以内に初登場を果たした曲が翌週全指標未加点という状況はほぼみたことがありません。同曲はフィジカルセールス(推定売上53,828枚)で加点した一方で他指標未獲得の状況にて前週総合12位に入っており、この状況を踏まえるにフィジカルセールス指標のウエイトは下げる余地があるのではというのが厳しくも私見です。このことは、例えばAKB48の最新曲動向からもいえることです。

 

なお、先述した前週の初上位進出曲において当週最も高い位置にいるのは星野源「生命体」ですが、それでも50位を割り込んでいます。あくまで私見と前置きしますが、この曲が新たなテーマ曲となった『世界陸上』(TBS 本来の名称は世界陸上競技選手権大会)においては、その大会開始当初にでてきたこのような記事の登場が、曲の認知拡大に至る際のブレーキにつながった可能性はゼロではないと感じています。

 

 

続いて、最新ソングチャートにおいて初めてトップ20入りした作品のCHART insightをチェックします。

<2023年8月30日公開分 ビルボードジャパンソングチャート

 20位までに初めて登場した作品のCHART insight>

 

・2位 (前週39位) 乃木坂46「おひとりさま天国」

・3位 (初登場) WOLF HOWL HARMONY「Sweet Rain」

・4位 (初登場)  THE JET BOY BANGERZ「Jettin'」

・5位 (初登場) KID PHENOMENON「Wheelie」

6位 (初登場) LE SSERAFIM feat. ナイル・ロジャース、Ado「UNFORGIVEN -Japanese ver.-」

・8位 (前週53位) IMP.「CRUISIN'」

・13位 (初登場) JUNHO (from 2PM)「Can I」

・20位 (初登場) 藤井風「Workin' Hard」

 

LE SSERAFIM feat. ナイル・ロジャース、Ado「UNFORGIVEN -Japanese ver.-」については昨日のエントリーにて取り上げています。

 

LDH発の新グループ3組が総合3~5位にランクインを果たしています。フィジカルセールスにおいてはWOLF HOWL HARMONY「Sweet Rain」が最も低くなっていますが、総合ソングチャートでは最も高いというのは特筆すべき点です。これは、ビルボードジャパンソングチャートにおいてロングヒット曲の最重要ポイント獲得源となるストリーミング指標が、3曲では唯一100位以内に入っていることも大きく影響しています。

また「Sweet Rain」ではラジオ指標も最も高くなっています。実はこの指標においてはIMP.「CRUISIN'」も2位に入り、4位までを男性アイドル/ダンスボーカルグループが占めている状況です。この点については、ラジオ指標の基となるプランテックのOAチャート記事を是非ご参照ください。

 

さて、LDH新グループにおいてはこのような企画が行われていました。企画についてはビルボードジャパン側も把握していることが解ります(ポッドキャストの14分17分以降にて確認可能)。

企画内容は、YouTubeの概要欄にも記載されています。

(※概要欄についてはキャプチャしています。今後動画が消去される可能性を踏まえたものです。問題があれば削除いたします。)

3組いずれもトップ10入りを果たし、歓喜する姿を動画で確認することができます。

 

その3組のデビュー曲ではすべて、LINE MUSIC再生キャンペーンが実施されていました。

LDH新人3グループ デビュー曲におけるLINE MUSIC再生キャンペーンの概要>

(※キャンペーンページが消える可能性を踏まえ、キャプチャした画像を貼付しています。問題があれば削除いたします。)

 

・WOLF HOWL HARMONY「Sweet Rain」

・THE JET BOY BANGERZ「Jettin'」

・KID PHENOMENON「Wheelie」

いずれの曲もフィジカルリリース週の8月21日月曜にデジタルリリース。LINE MUSIC再生キャンペーンは8月27日までを対象期間としており、最新8月30日公開分ソングチャートの集計期間最終日に設定されています。ミュージックビデオも21日月曜20時台に相次いで公開され(下記リンク先参照)、フィジカルリリース週(すなわちフィジカルセールス指標初加算週)にポイントを最大化させる形でスケジュールが組まれています。

 

フィジカルとデジタルの解禁を同週に合わせるという施策は、たとえばLiSA「炎」で採られています。当時は現在とチャートポリシー(集計方法)が異なるものの、同週解禁が首位獲得の大きな原動力となりました(LiSA「炎」は首位獲得が確実に…チャートアクション最大化に繋げる施策をまとめる(2019年10月19日付参照)。

LiSA 「炎」は首位登場からわずか6週で、年間ソングチャートトップ10入りを果たしました(上記エントリー参照)。これは高い瞬発力のみならず、持続力が加わった結果といえます。

週間チャートでの上位進出は素晴らしいことです。そしてそれ以上に、先述したようにロングヒット曲の最重要ポイント獲得源となるストリーミング指標を伸ばす(すなわちコアファンのみならずライト層からの曲の支持を得る)ことによって上位を維持し、中長期のチャートにて上位にランクインすることがより重要となります。

 

【前週および当週の上位初進出曲におけるCHART insightから、真のヒット曲に成るかを読む】というエントリーを7月以降毎週掲載していますが、フィジカルセールスのみが強い作品は同指標加算2週目において急落が著しい状況です。またLINE MUSIC再生キャンペーンはライト層が主体となるストリーミング指標にコアファンの勢いを導入させることで瞬発力を高めることが可能ですが、大半の曲は企画終了後に急落しています。

めいちゃん「エンジョイ」はLINE MUSIC再生キャンペーン効果に伴い前週まで2週続けてトップ10内をキープしていましたが(再生回数のハードルを高く設けていたことも影響したといえるでしょう)、その間ストリーミング以外の指標を獲得することはできませんでした。これはコアファンとライト層との乖離が非常に強いゆえと考えます。

 

大半のLINE MUSIC再生キャンペーン採用曲における企画終了直後の急落を踏まえ、ビルボードジャパンに対しチャートポリシー(集計方法)変更を以前から提案していますが、「エンジョイ」の動向を踏まえればこの変更は必須と考えます。

チャート管理者には先述したフィジカルセールス共々ストリーミングにおいても、指標の中身を見直す議論をお願いしたいところですが、同時に【真の社会的ヒット曲とは高い瞬発力を誇る以上にロングヒットする作品であること】【上位初進出の翌週の動向を踏まえて社会的ヒットに至るかを見極める必要性】について、ビルボードジャパンが積極的に発信することを願います。

なお、最新8月30日公開分のビルボードジャパン各種チャートが2023年度における39週目となり、当週は第3四半期最終週と思われます。ビルボードジャパンは年間チャートのみならず上半期についても発表していますが、簡易的な形でも各四半期毎のチャートを発表すればロングヒットの重要性が歌手側、音楽ファンそして歌手のコアファンに対してもより伝わるものと考えます。ビルボードジャパンの発信を希望します。