イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングスチャートなどを紹介します。

オリコン年間ランキングを踏まえ"合算ランキングは廃止すべき"と考える理由、そして必要な引導について

昨日早朝、そして今朝、オリコンが年間ランキングを発表しました。

上記は昨日発表分、そして下記が本日発表分となります。

まずは一連のツイートを紹介しましたが、最初に貼付したツイートにおけるキャプチャから芽生えた違和感は、現在も抱えたままです。

 

違和感の理由は4つ。デジタルシングル年間首位曲が不明なこと、合算シングルおよびアルバムランキングにおける首位作品が不明なこと、そもそも合算ランキング単独の記事がアップされていないこと、そしてインタビューにおけるビルボードジャパンとの差です。合算ランキング記事がないことは、合算がフィジカルセールス単独のランキングよりも重視していないということをオリコンが示したと言えるでしょう。

年間ランキングをまとめた特設サイト(上記リンク先参照)、King & Princeがタイトルになっているリンク先の1ページ目に総括と各チャートのリンク先が掲載されていますが、合算シングルランキングを制したKing Gnuへの言及は総括記事の一番最後、簡単な記載にとどまっています。キャプチャにKing Gnuの紹介がないのも頷けてしまいます。

 

オリコンの合算ランキングを主体とする問題については、一昨年そして昨年もブログエントリーにて指摘しています。その違和感が全く拭えていないこと、そして合算ランキングの軽視を踏まえれば、オリコンは合算ランキングを止めるべきだと提言します。

 

 

実際、軽視は合算ランキングだけではありません。オリコンはシングルおよびアルバムの合算ランキングを含め、デジタル関連の年間ランキング公開を10位までにとどめています。これではヒットの基準と言えるストリーミング1億回再生突破作品は可視化されません(ストリーミング年間10位の優里「ドライフラワー」は2億超え)。ストリーミングの注目度が高まる中で公開を限定することにより、真のヒットが見えにくくなります。

 

また、合算ランキングの計算方法が発足時から大きく変わっていないことも問題です。

2019年度にスタートした合算ランキングの発足当時における計算方法は上記リンク先に、現段階の計算方法は下記リンク先に掲載。ストリーミングの有料会員による1回再生と無料会員によるそれとでウエイトが異なるようになりましたが、フィジカルセールスの比重は変わっていません。

(オリコンの記事への引用を行わないのは、無断使用を固く禁じるとホームページ下記で示されているためです。この措置にも時代錯誤感を抱いています。)

合算ランキングにてフィジカルセールスの係数処理(一定以上の売上枚数を超える分を対象とするもので、ビルボードジャパンはこの仕組みを2017年度以降に採り入れたことにより社会的ヒット曲の鑑に成ったと捉えています)をオリコンが採用しないことを含め、オリコンが時代に即した計算方法変更をほぼ行っていないことも問題です。

 

加えて、合算シングルランキングの2曲併記も問題。これは単曲ではなくフィジカルがベースになっていることの表れです。King Gnuの「一途」と「逆夢」は共にデジタルヒットしたことで合算ランキング首位に立ちましたが、これではどちらがより人気なのかが見えてきません。この姿勢も、SixTONES「Imitation Rain」とSnow Man「D.D.」を分けなかった2020年度から変わっていません。

 

そのSixTONESSnow Man等が所属するジャニーズ事務所との関係性にも疑問を覚えます。今回の年間ランキング紹介ツイートにおいても、各歌手の名前と共に"#ジャニーズ"が用いられていますが、これは本来不要なものでしょう。その理由は以前にも記して続けています。

たしかにシングルランキングを制したKing & Princeやアルバムランキング首位のSnow Manジャニーズ事務所所属ですが、ツイートにもそれを載せる必要性は高くないでしょう。これはたとえば映像作品にグループのメンバーが個別で出演してもクレジットにグループ名が記載されることに対して抱く違和感に似ています。グループの活動にフィードバックさせるためと聞きますが、絶対に必要なものではないはずです。

オリコンではシングルランキングを制したKing & Prince、アルバムおよびアーティストランキング首位のSnow Manがインタビューに応じていますが、Snow Manビルボードジャパン年間アルバムチャートも制しながら同社のインタビュー記事はありません(岩本照さんのコメントのみ)。ソングチャート首位のAimerさん、トップアーティストチャート首位のAdoさんによるインタビューは用意されており、この差も違和感の理由です。

(ビルボードジャパン年間チャート、AimerさんやAdoさんのインタビュー記事、Snow Man岩本照さんのコメントは上記ブログエントリーから辿ることができます。)

"#ジャニーズ"の使用やビルボードジャパンとの扱いの差から見えてくるのは、オリコンとジャニーズとの強固な関係性です。オリコンは雑誌『オリ☆スタ』を2016年に休刊しネットに特化していますが、その関係性が続いている言えます。またジャニーズ側にとっても、得意なフィジカルセールスで首位を獲りやすいオリコンをプラスに感じているものと思われます。インタビューに応じるかの差もここにあると考えていいでしょう。

ビルボードジャパンは時代の流れに応じてストリーミング等デジタルに強い作品が週間単位でも首位を獲得する形へ変化しており、フィジカルに強い歌手はそれをデジタルの補強とすることで週間首位もロングヒットも狙うのが今のヒットの理想形となります(この点はビルボードジャパン年間チャート総括エントリーにて、米津玄師「KICK BACK」を例に紹介)。デジタル未解禁歌手は週間単位でも首位獲得が難しくなりました。

ならばデジタル解禁を行わない歌手が多いジャニーズ事務所側がどちらのチャートを意識し、重視するかは自ずと解るはずです。時代の変化に応じずオリコンが体制を変えないこともジャニーズ側の安心感を招き、両者が今後も強固な関係性を築くと考えます。しかしチャートに求められるものは、客観性と独立性です。

 

 

合算ランキングを重視していないこと、合算ランキングがフィジカル(セールス)主体であること、特定の芸能事務所との強固な関係性が続くこと…デジタルの時代にあってもフィジカル最優先というチャートポリシーを貫いている点を踏まえれば、オリコンは合算ランキングを手放すべきだと考えます。そしてメディア等エンタテインメント業界はビルボードジャパンのチャートを用いるべきです。

 

そのためには、ビルボードジャパンの奮起が必要です。たとえば『NHK紅白歌合戦』(NHK総合ほか)の出場歌手発表時にこのブログではビルボードジャパン各種チャートを踏まえた初出場歌手の妥当性を触れましたが、いただいたリアクションにはビルボードジャパンを詳しく知らない方によるものが少なくありませんでした。まず何より、ビルボードジャパン自体の認知度向上が極めて重要でしょう。

そしてビルボードジャパンにはシステムの徹底も求めます。直近では12月9日午前4時発表の年間チャートにおける紹介ツイートにエラーや遅れが発生しており、大きな問題と捉えています。この点は年間チャート発表の翌日に改善提案を記しました(なおビルボードジャパンはこのTwitter上のエラーについて、昨日朝までにアップされたポッドキャスト最新回(下記YouTube参照)にて原因を説明しています)。

オリコンは最新チャート発表を午前4時に統一しており、チャートをチェックする方の習慣化につながっていると言えます。SNS活用の徹底、チャート発表時間の統一化等、ビルボードジャパンはオリコンを見習うべき点が少なくないため、この乖離の解消も重要です。

そしてポッドキャスト最新回にてチャートディレクターの礒崎誠二さんが語ったことは、オリコンとの差別化のみならずオリコンの合算ランキング廃止に引導を渡す意味でも早急に形にすべきと考えます。

ビルボードジャパンソングチャートはフィジカルセールスおよびラジオの2指標による複合チャートとして2008年にスタートしましたが、それ以前を含む2000年代のソングチャートを作りたいと礒崎さんは表明されています。フィジカル(主にCD)セールスがダウンしてからチャートが新設されるまでの間のヒット曲が可視化されれば、ゆくゆくは2000年以降のオールタイムチャートの作成も可能になるはずです。

(音楽チャート分析や予想を行うあささんのブログで示されたダウンロード年間チャート等は、フィジカルセールスのみのランキングではヒット曲を示しにくくなっていた時代において真の社会的ヒット曲を照らしたものと考えます。それゆえビルボードジャパンには参考にしてほしいと強く願っています。)

SNS発信の徹底や過去分を含むオールタイムチャートの作成により、メディアから信頼を得られるようになるでしょう。特に音楽番組で過去データを取り上げるテレビ局ではオリコンのデータを用いていますが、そのデータの信憑性は2000年前後を境に大きく異なります。ビルボードジャパンが過去分のチャートを作成しオールタイムチャートを用意することで、メディアが2000年頃を境としてオリコンビルボードジャパンを棲み分けるようになるのではないでしょうか。そうなればオリコンは、得意なフィジカルセールスランキングに特化することができるようになります。

 

 

合算ランキングの"廃止"、また"引導"という表現はこれまでになく強いものですが、しかしこれまでのオリコンの姿勢を踏まえれば今のヒット曲を貪欲に調査するという気概はないと思わざるを得ません。またそもそも客観性を欠いた時点で音楽チャートとして正しくないゆえ、厳しい表現を用いた次第です。

このブログエントリーでは以前から合算ランキングのスタンスに疑問を呈してきたため、改善がみられない以上は廃止はやむなしと考えます。ビルボードジャパンには奮起していただき、知名度やシステム力を高めること、メディアからの信頼を得ること、そして音楽チャートに詳しくない方にもオリコンを凌駕しているという印象を与えることに尽力してほしいと願います。