イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

ビルボードジャパンとオリコンの違いを、「アイドル」の動向およびダイヤモンド・オンラインのコラムから捉える

このブログではYOASOBI「アイドル」のリリース以降、ビルボードジャパンソングチャートとオリコン合算シングルランキングという複合指標から成るふたつのチャート(ランキング)における「アイドル」の動向を追いかけ、どちらがより社会的ヒットの鑑であるかを記載してきました。そのビルボードジャパンとオリコンについて紹介、比較を行ったコラムが先週登場しています。

コラムに対しては当初このように評価しましたが、そもそも『オリコン世代が知る由もない』と世代を十把一絡げにするタイトルはやはり良くないと感じます(自分はコラムの書き手が記している”オリコン世代”ゆえ、尚の事です)。見出しを強烈にすることでアクセス数を獲得する狙いがあったゆえの表現とは思いますが、ならばそういう業界の慣習はやめるべきでしょう。

このコラムには他にも疑問が浮かびます。2023年度上半期におけるビルボードジャパンソングチャートトップ5と比較されていたのがオリコンのフィジカル(CD、レコードおよびカセットテープ)によるシングルランキングでしたが、これは比較として正しくありません。オリコンは2010年代後半に合算シングルランキングを開始しており、そちらでなければデジタルのみリリースのシングル曲は入りません。

コラムではトップ5を比較した直後にオリコン合算シングルランキングを説明されており、混乱を招きかねないものと考えます。ゆえに当該コラムには正確性を強く求めたいですが、しかし有益な表現もみられたため巻末にて引用します。

 

 

では、YOASOBI「アイドル」初登場以降のビルボードジャパンソングチャートとオリコン合算シングルランキングを今一度比較します。

 

<YOASOBI「アイドル」初登場以降における

 ビルボードジャパンソングチャートとオリコン合算シングルランキングの比較>

 

双方の最新チャート(ランキング)記事はこちら。

YOASOBI「アイドル」はビルボードジャパンソングチャートにて初登場から20連覇を達成。一方でオリコン合算シングルランキングではフィジカルセールスがおよそ10万枚以上記録すればデジタル関連がどんなに強い曲でも前者が勝るというチャートポリシー(集計方法)ゆえ「アイドル」の首位は1週にとどまっています。そして最新のオリコン合算シングルランキングではトップ5から初めて後退しました。

ビルボードジャパンソングチャートでは動画再生指標の上昇によりポイントがアップした「アイドル」ですが(上記エントリー参照)、次週はHIKAKINさんによるUGC(ユーザー生成コンテンツ)動画効果が薄れることでポイント下落幅は大きくなる可能性があります。SixTONES「CREAK」、もしくは金曜にリリースされるや同日付の日本のSpotifyデイリーチャートを制したKing Gnu「SPECIALZ」に初めて首位の座を譲るかもしれません。

一方でオリコン合算シングルランキングではデジタルヒットを続ける曲が勢いをキープしやすいことから、YOASOBI「アイドル」の次週におけるトップ5内返り咲きも十分考えられます。それでもフィジカルセールス指標のウエイトが高いこのランキングではSixTONES「CREAK」の首位登場が確実視され、またしばらくはフィジカルセールスに強い曲が代わる代わる首位に至るだろうことは、下記表からも明らかでしょう。

(こちらはビルボードジャパンソングチャートにおける週間フィジカルセールス10万枚以上記録曲、もしくは今後発売される曲で週間10万枚以上が予想される曲のリストですが、オリコンでも似た数値となる可能性が高いため掲載しています。)

 

 

YOASOBI「アイドル」の動向のみならず、オリコンでは合算シングルランキングを制しても翌週急落する曲がビルボードジャパンに比べても多いことを踏まえれば、ビルボードジャパンソングチャートが社会的ヒットの鑑なのは自明でしょう。ビルボードジャパンがチャートポリシーを時代(音楽の触れ方や買われ方)に即して変更していることを踏まえれば、オリコンのフィジカルセールスにおけるウエイト変更は必要なはずです。

ただここで1つ、オリコンビルボードについて頭に入れておきたいポイントがある。オリコンのルーツはそもそも関係者向けの「音楽業界誌」だった点だ。オリコン社は、創業時はレコード会社や芸能事務所、レコードやCDショップを対象に、市場調査のデータとしてチャートを提供していた。

他方でアメリカのビルボード社のルーツは、移動遊園地やサーカスなどのアミューズメント情報を一般市民に向けて発信する情報誌だった。もともと「B to B」企業と「B to C」企業だったと考えると、この大きなギャップも腹落ちする。

冒頭で紹介したダイヤモンド・オンラインのコラムでは、オリコンが音楽業界誌であったことが記されています。このブログにおいても”オリコンは売上面という視点で見れば有効”という意見もいただいたことがありますが、それもまた音楽業界的には有益という視野からの指摘だったのではと感じています。そしてこの背景が、オリコンランキングのフィジカルセールス重視という姿勢に納得感をもたらしかねません。

その点は理解できるとして、しかしなぜその売上ランキングが長らくの間、時代とそぐわなくなったとしてもヒットの尺度として使われ続けたのか、ビルボードジャパンが登場しなければ社会的ヒットを測るチャートはなかったままではないか等の疑問が浮かびます。このことはダイヤモンド・オンラインのコラムが登場したタイミングでもポスト(ツイート)しました(→こちら)。

 

オリコンは雑誌発刊時代にジャニーズ事務所所属歌手を多く表紙に起用したことも、連綿と続く良好な関係性の一因と考えます(上記参照)。フィジカルセールス一辺倒の音楽ランキングが社会的ヒット曲と乖離を拡げる今でも合算ランキングを優先しない等の措置を取り続けているならば、両者の忖度や保身ゆえと思われておかしくないはずです。

ジャニーズ事務所所属歌手の大半がデジタル未解禁に徹するのは、メディアが批判しないことも大きな理由と考えます。しかしそのメディアが辞めた方やライバルを同列に並べない以上、彼らに客観的な視点を持って批判し改善を求めることを望むのは難しいでしょう。健全な批判がないことで競争という意識が生まれず、自分が勝てるところでだけ勝てればいいという不健全な意識を醸成してしまったものと考えます。

(※ここでいう”上記”とはこちらのエントリーを指します。)

ジャニーズ事務所前社長による性加害問題についてはメディアもまた問題であると第三者機関が公表したばかりですが、音楽業界において切磋琢磨が生まれにくかった状況についても似た背景があること、音楽ランキング自体が変わらなかったことが、業界全体の緩やかながら着実な失速、世界に目を向けなくていい等の悪い意味でのガラパゴス化につながっていると捉えています。デジタル未解禁が多いのも頷けてしまうのです。

 

 

業界誌出身ゆえこのようなランキングに成るとして、オリコンランキングが社会的ヒットから乖離していると考えれば、まずメディアはビルボードジャパンソングチャートを用いるよう徹するべきです。そのためには、ビルボードジャパンが自身の信頼度を上昇させるべくミスを極力減らす等の管理の徹底も求められます。

一方でオリコンはセールス重視という姿勢やそれによって得られるつながり等について、優先することを手放すことが必要です。保身と呼べるようなこだわりを捨て、合算シングルランキングを真に社会に即したものに変更すべきと考えます(ただしそれができないならば、オリコンの立ち位置を一度はっきり表明する必要があるとも考えます)。

しかし本来は業界全体がオリコンに対し、ビルボードジャパンが登場する以前から、ビルボードジャパン的なソングチャートを構築するよう促すべきだったと考えます。

ともすればこのポスト(ツイート)には反発もあるかもしれませんが、実際に改善提案を行っていたのならばその過程をきちんと提示することを願います。

 

そして、自分が冒頭のポスト(ツイート)で記していたように、”そもそもビルボードジャパンとは何か?”を知るきっかけとなる記事は少なく、その点においては今回紹介したダイヤモンド・オンラインのコラムが有益だと考えます。今後、たとえば『日経エンタテインメント!』や『関ジャム 完全燃SHOW』といったメディアが、ビルボードジャパンソングチャートについて紹介し深く掘り下げるようになることを強く希望します。