イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

「シンデレラボーイ」「なんでもないよ、」はロングヒット候補…共にトップ20入りしたカラオケ指標に注目する

最新1月26日公開分(1月31日付)ビルボードジャパンソングスチャートで大きくポイントを伸ばした曲のひとつが、Saucy Dog「シンデレラボーイ」。ポイント前週比は119.9%となり、集計期間中に出演した『ミュージックステーション』(テレビ朝日 1月21日放送)の効果が大きく表れた形です。

最新ソングスチャートにおいてポイントは全体的にダウンが目立つ一方、同じく『ミュージックステーション』に出演したマカロニえんぴつによる「なんでもないよ、」はポイント前週比99.0%となり、勢いをキープ。同曲を収録した『ハッピーエンドへの期待は』は前週アルバムチャート7位に初登場しており、アルバムチャート2週目の動向に沿ってポイントを落とす可能性が考えられましたが、その不安は杞憂に終わっています。

 

この2曲の強さの秘訣、カラオケ指標にもあるのではないでしょうか。

 

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こちらは最新のビルボードジャパンソングスチャートを示したCHART insightとなります。

ソングスチャートの順位は一番左の黒で表示され、構成8指標は順にフィジカルセールス(黄色で表示)、ダウンロード(紫)、ストリーミング(青)、ラジオ(黄緑)、ルックアップ(オレンジ)、Twitter(水色)、動画再生(赤)そしてカラオケ(緑)で表示されます*1。各指標をクリック(タップ)すると、その指標の1位から並び替えることが可能であり、上記はカラオケ指標の1位から20位までを表示しています。

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最新のビルボードジャパンソングスチャートで存在感を示したSaucy Dog「シンデレラボーイ」はカラオケ指標が19→17位に、マカロニえんぴつ「なんでもないよ、」は18→13位にそれぞれ上昇しています。接触指標群であるストリーミングや動画再生が早くからヒットしていた2曲にあって、ここに来てカラオケが上昇を続けています。

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(優里「ドライフラワー」のCHART insightのうち、下のほうは総合300位以内登場週から11週目までを示します。)

この傾向は、昨年度のビルボードジャパン年間ソングスチャートを制した優里「ドライフラワー」にも当てはまります。「ドライフラワー」においても接触指標群が軌道に乗ったおよそ1ヶ月後にカラオケ指標が追随するというチャートアクションをみせていることから、Saucy Dog「シンデレラボーイ」そしてマカロニえんぴつ「なんでもないよ、」もロングヒットのフェーズに突入する可能性は高いでしょう。

 

ビルボードジャパンソングスチャートを構成する8指標の中で、最も流動性の低いのがカラオケ指標となり、ここ数年間でヒットした曲が上位にとどまりやすい状況です。最新ビルボードジャパンソングスチャートにおいて2021年解禁曲でカラオケ指標20位以内に登場したのは「シンデレラボーイ」や「なんでもないよ、」のほか、優里「ベテルギウス」やOfficial髭男dism「Cry Baby」、Ado「踊」、YOASOBI「怪物」に限られます。

(back number「水平線」はダウンロードやストリーミングは昨年解禁でしたがYouTube公開は一昨年のため、2021年解禁曲から外しています。また昨年度のビルボードジャパン年間ソングスチャートでトップ10入りした優里「ドライフラワー」やAdo「うっせぇわ」、さらに昨年の日本レコード大賞を受賞したDa-iCECITRUS」についてはフィジカルシングルに先駆けて、いずれも2020年10月にリリースされています。)

またカラオケ指標は昔から親しまれている曲もランクインしやすいのが特徴であり、高橋洋子残酷な天使のテーゼ」(1995年)をはじめ、2022年度には中島みゆき「糸」(1992年 6年後にシングル化)、スキマスイッチ「奏 (かなで)」(2004年)も20位以内に入ったことがあります。

これだけ流動性の低いカラオケ指標で新曲がランクインすること自体が凄いことであり、そこからSaucy Dog「シンデレラボーイ」やマカロニえんぴつ「なんでもないよ、」の凄さ、ロングヒットの可能性が考えられるのです。

 

ちなみに、総合ソングスチャートでブレイクした歌手がこの指標で新たなヒット曲を誕生させることで、歌手がより広く世間に浸透したと捉えていいでしょう。

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デビュー曲の「うっせぇわ」でブレイクしたAdoさんは、4作目となる「踊」が「うっせぇわ」に続くトップ10入りとなり、ロングヒットを続けています。この曲においてもカラオケ指標が接触指標群の安定後に追随して上昇し、上位をキープしているのが特徴です。Da-iCECITRUS」同様、曲自体の魅力もさることながら、歌手としての実力に感化されて挑まんとする方が多いのがカラオケ指標上位安定の理由かもしれません。

 

 

Saucy Dog「シンデレラボーイ」そしてマカロニえんぴつ「なんでもないよ、」のカラオケ指標の上昇、総合ソングスチャートでのロングヒット、そしてふたつのバンドが次にカラオケ指標で上位に送り込む曲を輩出するか、注目していきましょう。

*1:なお、カラオケ指標の右側(ピンク)は3種の指標を組み合わせたハイブリッド指標を示し、BUZZ、CONTACTおよびSALESのいずれかが選択可能です。