YOASOBIのこちらの投稿、とても面白いですね。
【クイズ】
— YOASOBI (@YOASOBI_staff) 2022年1月25日
島本理生さん「私だけの所有者」を原作としたYOASOBI新曲「ミスター」の配信日はいつでしょう?#はじめての #YOASOBIANNX
YOASOBIが直木賞作家4名と組み、誕生した小説『はじめての』がリリースされることに伴い、島本理生さんによる『私だけの所有者』から生まれた新曲「ミスター」がいつリリースされるかというクイズが上記ツイートにて行われました。投票者の3分の2が書籍発売日に楽曲も解禁されるとみていますが、重要なのは他の選択肢にあります。
日本のチャートはビルボードジャパンもオリコンも、月曜が集計開始日。水曜がフィジカルリリース日となっていることも影響していると思われます。集計開始が月曜となることで、月曜解禁作品は初週セールスや再生回数等が1週間分フルで加算され、チャートでロケットスタートを切ることができるのです。月曜リリースがチャート集計に有利なのは、噂でもなんでもなくそれが理由です。
一方の金曜についてですが、米ビルボードソングスチャートやその米ビルボードが一昨年秋に新設したふたつのグローバルチャート等は金曜が集計開始となります。世界では金曜が標準的なリリース日となり、金曜解禁ならばチャートイン初週は1週間分フルで加算されるのです。
世界の主要なデジタルプラットフォームによるストリーミングおよびダウンロードを集計対象とするグローバルチャートでは、デジタル解禁されていればあらゆる国の様々な言語の曲がチャートインできる可能性を持ち合わせています。YOASOBIは「夜に駆ける」が2021年度の年間グローバルチャートにおいてGlobal 200で55位、Global 200から米の分を除いたGlobal Excl. U.S.では24位に登場し、世界でもその名を轟かせています。
さらに米ビルボードやグローバルチャートは様々なリミックス等別バージョンが合算対象となります。「夜に駆ける」や「三原色」等で行われた英語版リリースはオリジナルバージョンのブーストにつながりました。この英語版リリースが金曜なのはグローバルチャート対策の意味合いもあったのではと以前記載しましたが、その認識は合っていたと感じています。グローバルチャートについては下記ブログエントリーをご参照ください。
YOASOBIの今回のツイートからは、チャートへの意識の高さやこだわりがはっきりと可視化されたと言えるのです。
尤も、「ミスター」のリリースを書籍発売日と関連付ける可能性は十分考えられますが、書籍の発売は厳密に全国一律とは言えないため、選択肢として考えにくいと捉えています。ただし一般的なフィジカルリリースにあたる水曜0時にはYOASOBIが自身のラジオ生放送を担当しており(『YOASOBIのオールナイトニッポンX』(ニッポン放送))、その生放送の場で配信開始の旨を告げ、さらに強く訴求することが可能です。
(その意味において、YOASOBIのラジオ番組を水曜0時に用意したことは、ただただ見事だと言えます。)
そして冒頭のツイートは、クイズにしたことで多くの方にリリース日を考えさせ、印象付けにつながるきっかけになったっはずです。さらには三択形式にしたことで、特にコアなファンの方々にチャートへの意識やグローバルな視野を抱かせることに成功したと言えるでしょう。元来YOASOBIはファンとのエンゲージメントの確立に長けたことも成功の一因と言えますが、その一端が今回のツイートから垣間見えるようです。
チャートに意識的なのは米津玄師さんも同様です。
米津玄師の新曲「POP SONG」2月7日(月)配信リリース決定、6日(日)にはMV公開 - 新アーティスト写真も解禁 - https://t.co/j9YHyVFz9q pic.twitter.com/KHMWutztDR
— Fashion Press (@fashionpressnet) 2022年1月28日
CM上がってました。よろしくね(^-^)/https://t.co/hoCd9WP9rv
— 米津玄師 ハチ (@hachi_08) 2022年1月23日
CMがPlayStation内で先行公開されたことも話題になりましたが、そのCMに起用された「POP SONG」は月曜リリースとなります。米津玄師さんは基本的に音源の解禁を月曜に設定する傾向があり、今回もチャートへの強い意識がみられます。一方でミュージックビデオは前日の日曜となりますが、現段階でその解禁時間はアナウンスされていません。
ミュージックビデオの公開、2月6日24時か、もしくは24時ちょうどに合わせてプレミア公開が終了するタイミングでの解禁になる予感がします。 https://t.co/DlIawr2kxa
— Kei (@Kei_radio) 2022年1月28日
仮にミュージックビデオが月曜へのつながりを強く意識した時間での公開となるならば、ミュージックビデオ視聴者のダウンロードやサブスクへの移行がより多く発生することとなるでしょう。米津玄師さんはダウンロードが他の歌手より多く、2月16日公開分(2月21日付)ビルボードジャパンソングスチャートで最上位を狙えると言えますが、その勢いを最大化させるべく公開時間を設定するものと思われます。
日本を代表する歌手は、口にするかしないかは関係なく、きちんとチャートを意識しているのです。そして世界にも視野を拡げています。これらの好例が他の多くの歌手にも浸透してほしいですね。