先週土曜付のエントリーでは、最新5月13日公開分のビルボードジャパンソングチャートにおいてLINE MUSIC再生キャンペーンを採用していたONE N' ONLY「WARAiNA」のストリーミング指標が急落、いわば”断絶”に至ったことを紹介しています。
そこで今回はLINE MUSIC再生キャンペーンによる効果、そして問題点について、企画の特徴と併せて紹介します。
<LINE MUSIC再生キャンペーンの特徴、音楽チャートへの効果と問題点について>
◯ 企画の特徴
・有料会員向けの開催
・プレミアムなプレゼントが参加者全員、もしくは抽選にて当選
◯ 企画の効果
・ライト層の支持が反映されやすい接触指標にコアファンの熱量が注入
(”My推し機能”により、支持がさらに反映される形に)
→ LINE MUSICのみならずビルボードジャパンソングチャートのストリーミング
指標、ならびに総合ソングチャートでも複数週の上位進出が可能に
◯ 企画の問題点
・他のサブスクサービスと大きな乖離が発生
・ビルボードジャパンソングチャートの他指標とも乖離 (1指標のみ加点の場合も)
・企画終了後にほとんどの曲がLINE MUSICで急落
・ビルボードジャパン各種チャートでも急落し、ストリーミング指標の断絶も
→ 企画採用曲のほとんどがヒットの第2段階を越えないという実情
◯ 音楽チャート分析者としての見方
・企画参加者に対し物理的/精神的疲弊をもたらしかねないという懸念
・米ビルボードのグローバルソングチャートには反映されていないという実態
→ 真の社会的ヒットに至るか、様々なデータ等を踏まえて客観視することが重要
LINE MUSIC再生キャンペーンは有料会員を対象に、ユーザーがひとつの曲を期間中に一定回数以上聴取し応募することで、歌手のプレミアムなプレゼントが必ず、もしくは抽選で当たるという企画。再生回数のハードルが高い場合、また再生回数が多いほど当選確率が上昇する場合もあります。コアファンの再生回数を高め、ライト層の支持が反映されやすい接触指標に所有的な動きをもたらすことでビルボードジャパンのストリーミング指標や総合チャートでも複数週ランクインに至りやすくなるというのが特徴です。
所有指標のフィジカルセールスは基本的に登場2週目にて急落する一方、LINE MUSIC再生キャンペーンはその多くが1週間以上、もしくは1週間以内であっても週をまたいで行われることが少なくないため、採用曲は企画開催期間中上位にて推移し、総合チャートにおいても複数週の上位進出をもたらします。その点から、アイドルやダンスボーカルグループにおける”ヒットの8段階”表では第2段階と位置付けています
この企画は勿論、LINE MUSIC内での上位進出にもつながります。そして最近ではこのような機能が登場し、アップデートも行われています。
LINE MUSIC アプリ上に自分だけのアーティストの専用スペースを設定できる「My推し(読み:マイオシ)」機能にランキング状況が10分ごとにキャッチできる「10ミニッツレーダー」機能が加わりました。また、楽曲の再生時間や再生回数、いいね数など、“応援”の積み重ねをファンレベルで可視化した「あなたの推しレベル」も進化し、自身の応援量の増減や、推しレベルの変化をグラフで見られるようになりました。
LINE MUSIC会員以外が確認できるチャートは最も短いスパンのもので1時間単位、また公開範囲は100位までとなります(LINE MUSIC ソング Top 100 - リアルタイム参照)。一方、My推し機能ではそれぞれ10分単位/200位までと細かく表示されるため、推す曲を持つ歌手のコアファンにとっては有効なサービスといえるでしょう。最近はAWAにおいても以下のサービスを始めており、推し活需要への対応が目立ちます。
たとえばSpotifyにて、Stationheadと連動せずとも自らリスニングパーティーを実施するようになったことも含めて、サブスクサービス側がコアファンをこれまで以上に意識し、取り込むための施策を行うようになったと捉えています。
そのコアファンの熱量を以前から反映してきたLINE MUSIC再生キャンペーンでは、(全員に、もしくは抽選で)当選するための再生回数ハードルを高く設定していることが少なくありません。
直近の例としては、エントリー冒頭にて貼付したリンク先で紹介したONE N' ONLY「WARAiNA」および「Samba de Night Fever」での9,999回が挙げられますが、他にもめいちゃん「電撃」では今週まで再生キャンペーンが開催。ハードルは2,500回と5,000回の2種が用意され、同じ特典が前者は抽選で、後者は全員に用意。開催期間は25日間であり、確実に当選するには1日平均200回聴く必要があります。
(画像はめいちゃん公式Xアカウントより(ポストはこちら)。)
また坂道シリーズにおいても、最近はフィジカルシングル表題曲にてLINE MUSIC再生キャンペーンが毎回行われます。デジタル先行解禁時にスタートするこの企画では、フィジカルリリースの少なくとも翌週までを開催期間に設定。以下はフィジカルシングルを本日リリースした日向坂46「Kind of love」の内容ですが、再生回数ハードルは最も低い場合1回、最も多い場合でも555回となり、参加はしやすいといえるかもしれません。
(画像は17thシングル『Kind of love』リリース記念・LINE MUSICプレゼントキャンペーン実施決定! | ニュース | 日向坂46公式サイト(4月14日付)より。)
この結果、直近5月13日公開分のビルボードジャパンソングチャートでは2曲とも、ストリーミング指標の基となるStreaming Songsチャートで60位以内に登場。そして総合でも50位以内にランクインしています。


(上記CHART insightは有料会員が確認可能なもので、20位未満の指標順位も明示されています。ビルボードジャパンでは有料会員が知り得る情報の掲載を許可しています。)
とりわけ、めいちゃん「電撃」はStreaming Songsチャート13位、指標化後は10位と高位置に就けているのですが、CHART insightの累計ポイント構成比をみると青で表示されるストリーミング以外の指標が加点されていないことが解ります。さらに、毎週土曜のブログエントリーにて掲載しているストリーミング表をみると、2曲共にLINE MUSICと他のサブスクサービスとで大きな乖離が発生しています。

上記ストリーミング表はエントリー冒頭にて貼付したリンク先でも掲載していますが、ONE N' ONLY「WARAiNA」におけるLINE MUSICでの急落(20位→100位未満)や他のサブスクサービスとの乖離も踏まえれば、同曲のストリーミング指標における”断絶”が理解できるでしょう。そして再生キャンペーン採用曲の直近の例として挙げた2曲も、同様の推移を辿るかもしれません。坂道シリーズの断絶については以前採り上げています。
LINE MUSIC再生キャンペーン採用曲は企画開催期間中、ストリーミングそして総合でも上位にて推移します。直近における主要サブスクサービスの週間ソングチャートをみるとサカナクション「夜の踊り子」が強い状況ですが、同曲はLINE MUSICのみ首位を逃しており、めいちゃん「電撃」がその座を守っています。「電撃」は他のサブスクサービスやダウンロード等も強くないとして、しかし存在感を示していることが解ります。
主要サブスクサービスにおける #サカナクション「夜の踊り子」の週間ソングチャート順位。
— Kei (ブログ【イマオト】/ポッドキャスト/ラジオ経験者) (@Kei_radio) 2026年5月19日
・Spotify (5/8~5/14) 23→1位
・Amazon Music (5/10~5/16) 13→1位
・Apple Music (5/11~5/17) 5→1位
・LINE MUSIC (5/14~5/20) 13→3位
LINE MUSIC は1位が #めいちゃん「電撃」、2位が #MrsGREENAPPLE「ライラック」。「電撃」においてはLINE MUSICにて再生キャンペーンが開催されています。https://t.co/101fYtLu52 pic.twitter.com/CDff3evNPb
— Kei (ブログ【イマオト】/ポッドキャスト/ラジオ経験者) (@Kei_radio) 2026年5月19日
歌手のコアファンにおいてはプレゼント当選という目的のみならず、音楽チャートでの上昇という推し活としても役立つという意味で、LINE MUSIC再生キャンペーンに対し積極的になれるのかもしれません。この企画を歌手が以前も採用しているならば尚の事、コアファンは連続聴取に慣れているのではないでしょうか。
しかしながら、”それでいいのだろうか?”という疑問は拭えません。コアファンは連続聴取に慣れているのではと先程記しましたが、たとえばその方にとって興味のない歌手、もっといえば好きではない方が同じ再生キャンペーンを採用し、一時的にでもチャートで結果を残したならばどう思うでしょう。そのようにして視点を変えれば、今の自分が推す歌手、そして自分自身の立ち位置が見えてくるものと考えます。
そしてLINE MUSIC再生キャンペーンの終了直後、採用曲のほとんどが音楽チャートで急落します。さらにLINE MUSICは、米ビルボードによるグローバルソングチャート(Global 200、およびGlobal 200から米の分を除くGlobal Excl. U.S.)の集計対象になっていないはずです。このことはビルボードジャパンのチャートディレクターを務める礒﨑誠二さんの著書『ビルボードジャパンの挑戦 ヒットチャート解体新書』(145ページ参照)、またこれまでのチャートポリシー(集計方法)変更アナウンスから見て取れます。
グローバルソングチャートの仕組みについては、(追記あり) 米ビルボードによるグローバルチャートとは何か、そしてJ-POPの現在と課題とは (2024年5月更新版)(2024年5月19日付)をご参照ください。LINE MUSICがドメスティックなサービスであることもさることながら、企画採用曲が首位に至りやすいというサービスを米ビルボードが好んで採用しないだろうことも、グローバルソングチャート集計対象外の理由ではと考えます。
(グローバルソングチャートにおいて、SpotifyやApple Musicはカウント対象となっています。最近では先述したようなリスニングパーティー等が各サブスクサービス内でのチャート上昇につながっていますが、それでも企画に伴い首位に立つ曲はほぼみられないというのが私見です。)
LINE MUSIC再生キャンペーン(採用曲)における他サービスや他指標との乖離の激しさ、参加者の負担の多さ、そして企画終了直後の反動の大きさを踏まえるに、厳しい表現ですがこのキャンペーンには”功罪”があるというのが自分の見方です。
一方でチャート順位の表層だけをみると、今の音楽チャートに欠かせないストリーミング指標がヒットしているように映るため、企画開催中の乖離がないか、企画終了直後に断絶していないかを確認することが、真の社会的ヒットに成るかを見極めるために必要です。LINE MUSIC再生キャンペーンを採用するならば企画終了後もヒットを継続させ、さらには旧譜等にも波及させるためにどうするかを考え、動くことが重要でしょう。
最後に。音楽チャート分析者としてはLINE MUSIC再生キャンペーン採用曲すべてに対し減算処理を施すことが必要ではと考えます。昨秋掲載したエントリーを再掲し、今年度下半期の開始前にビルボードジャパンへ再度提案します。仮にチャートポリシーを変更しないならば、チャートの見方を伝えるよう願います。

