一昨年夏以降再開したこのエントリーですが、タイトルを”前週トップ10初登場曲の最新動向”とした上で、副題を新たに設けています。前週の内容はこちら。
ビルボードジャパンソングチャートの動向を分析する者として、真の社会的ヒット曲とはロングヒットする、年間チャートで上位に進出する作品と考えます。週間単位で上位に入るのは好いことですが、一方で所有指標ばかりが強い曲は加算2週目に、また接触指標が所有指標的な動きをなぞる曲(主にLINE MUSIC再生キャンペーン採用曲)はキャンペーン終了後に指標が大きく後退し、総合でも急落することが少なくありません。
この急落は毎週のようにみられます。ソングチャートのトップ10は多いときで毎週半数が入れ替わり、ロングヒットするか否かが極端に分かれます。ロングヒット曲ではライト層の支持を大きく反映するストリーミングが強い一方、急落する曲はコアファンとライト層との乖離が大きいのですが、ロングヒットするか否かを1週分のチャートのみで判断することは難しいといえるかもしれません。
このブログではビルボードジャパンに対しチャートポリシー(集計方法)の改善も提案していますが、あくまで自分なりのと前置きしつつもチャートの見方を提示したいと考えたのが、”前週トップ10初登場曲の最新動向”エントリーを掲載する理由です。
<7月1日公開分 ビルボードジャパンソングチャート
前週初めてトップ10入りした作品の、前週および当週におけるCHART insight>
※CHART insightの説明
[色について]
黄:フィジカルセールス
紫:ダウンロード
青:ストリーミング
黄緑:ラジオ
赤:動画再生
緑:カラオケ
濃いオレンジ:UGC (ユーザー生成コンテンツ)
(Top User Generated Songsチャートにおける獲得ポイントであり、ソングチャートには含まれません。)
ピンク:ハイブリッド指標
(BUZZ、CONTACTおよびSALESから選択可能です。)
[表示範囲について]
総合順位、および構成指標等において20位まで表示
[チャート構成比について]
累計における指標毎のポイント構成
・米津玄師「烏」
6月24日公開分 1位→7月1日公開分 2位
また、前週トップ10内に再浮上した作品の当週動向はこちら。
・Aぇ! group「でこぼこライフ」
6月24日公開分 2位→7月1日公開分 56位


・CUTIE STREET「キュートなキューたい」
6月24日公開分 7位→7月1日公開分 42位


当週のストリーミング表はこちら。



米津玄師「烏」はストリーミング再生回数が前週比95.9%と微減にとどまるも、ポイント前週比は73.3%に。所有指標のダウンロードが26,596→10,167DL(前週比38.2%)と大きく減少したことがポイントの後退につながっています。最終的には≠ME「愛くださいませ」が800ポイント以上上回り、「烏」は総合2位に後退した形です。
一方で前週トップ10内に返り咲いた2曲は大きく下がっています。初週フィジカルセールスがハーフミリオンを達成したAぇ! group「でこぼこライフ」は当週、ストリーミング指標が100位未満(300位圏内)→300位未満となり加点対象から外れたことも大きく影響。また前週はフィジカルセールスが2,294→31,159枚と急伸したCUTIE STREET「キュートなキューたい」は、当週のセールスが1,138枚に急落したことが影響しています。
一方で、「キュートなキューたい」はストリーミング指標が39→40位と、比較的好調に映ります。これが総合ソングチャートにおいてAぇ! group「でこぼこライフ」を上回った要因といえますが、ストリーミング表からは「キュートなキューたい」がLINE MUSICにて突出していることが解ります。
(CUTIE STREET公式Xアカウントより(ポストはこちら)。)
CUTIE STREET「キュートなキューたい」ではLINE MUSIC再生キャンペーンが開催。再生回数ハードルは910回以上および9,100回以上の2種類が設定されています。後者のプレゼントは抽選となるためチャレンジする方は多くないかもしれませんがこれがストリーミング指標好調の要因と考えるに、参加者が再生回数をクリアし企画から離れることでストリーミング指標は徐々に後退、そして企画終了後は急落の可能性も考えられます。
LINE MUSIC再生キャンペーン採用曲はビルボードジャパンソングチャートのストリーミング指標で100位以内に入ることも少なくありません。一方で企画終了後はこの指標が300位未満に急落し、CHART insightにおいて青で表示される同指標のグラフが"断絶"することがあります。2週前に総合ソングチャートを制し、前週10位にランクインした櫻坂46「Lonesome rabbit」は、まさにそのパターンとなりました。

(上記CHART insightは有料会員が確認可能なもので、20位未満の指標順位も明示されています。ビルボードジャパンでは有料会員が知り得る情報の掲載を許可しています。)
櫻坂46「Lonesome rabbit」の施策等については坂道シリーズにおける首位獲得の背景、そしてビルボードジャパンソングチャートの首位が毎週入れ替わることについて(6月18日付)を、また前週トップ10内にとどまった背景は前週トップ10初登場曲の当週動向と、櫻坂46「Lonesome rabbit」のトップ10内キープについて(6月27日付)をご参照ください。LINE MUSIC再生キャンペーンの影響力がなくなった当週は、坂道シリーズによる近年のフィジカルシングル表題曲動向をなぞる形で100位未満へ後退しています。
そして初登場以降21→11→13位と推移し、上位に複数週滞在していたTREASURE「IF I」も当週100位未満へ急落しています。

TREASURE「IF I」についてはTREASURE「IF I」がビルボードジャパンソングチャートで複数週上位進出…CHART insightから背景を探る(6月27日付)にて紹介。この曲もまたLINE MUSIC再生キャンペーンを採用していましたが、当週の集計期間直前に企画が終了しています。加えてラジオ指標が1→7位に後退したことも大きいでしょう。本来、この指標の全体に占める割合は社会的ヒット曲においてはそこまで高くはありません。
以前のエントリーにて、TREASURE「IF I」におけるラジオ指標の強さはinterfmでの集中オンエアに因るところが大きいと指摘しました。しかし当週の集計期間において、「IF I」の同局におけるオンエア回数はゼロとなっています(MUSIC SEARCH | インターエフエム [ 89.7MHz TOKYO ]参照)。この極端な推移が総合ソングチャートに大きく影響したことといえるでしょう。
社会的ヒット曲はライト層(曲は気になるが歌手のファンというわけではない方)の支持がストリーミング指標に長期間反映される一方、LINE MUSIC再生キャンペーンを採用した曲はコアファンの熱量が集中することで開催期間中におけるビルボードジャパンソングチャートのストリーミング指標に大きく作用します。ただし他のサブスクサービスに波及しなければ、そしてライト層に浸透しなければ、企画終了後に急落します。
またラジオ指標は特殊なものであり、TREASURE「IF I」がビルボードジャパンソングチャートで複数週上位進出…CHART insightから背景を探る(6月27日付)でも記したように他指標に比べてロングヒットしにくい、また他指標と順位が乖離しやすいのが特徴です。ゆえに、ラジオを音楽チャート施策に用いた場合はその影響力が限定的となります。
櫻坂46「Lonesome rabbit」はLINE MUSIC再生キャンペーン、TREASURE「IF I」はラジオ集中オンエアの影響にて総合ソングチャートでも複数週上位に登場しながら、当週は2曲共に100位未満へ後退しています。そして前週トップ10内に再登場したCUTIE STREET「キュートなキューたい」は、LINE MUSIC再生キャンペーンの採用に伴い当週は総合50位以内にとどまりつつ、しかし企画終了後に急落する可能性は否めません。
短期的な上位進出以上に重要なのは中長期での上位安定であり、それが年間チャートへのランクインにつながるのみならず、社会的ヒット曲を輩出した歌手が『NHK紅白歌合戦』(NHK総合ほか)の出場に近づくものと考えれば尚の事、中長期での上位安定を目指さない手はないはずです。短期的にでも上位進出を果たしたならばそれを如何にしてライト層やグレーゾーンへと浸透させるかが、歌手側における重要な課題だと考えます。

