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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

オリヴィア・ロドリゴ「Drop Dead」が初登場で首位確実…米ソングチャートを制するための施策を学ぶ

最新4月25日付米ビルボードソングチャートは、同日付米アルバムチャートを初登場で制した『Dandelion』に収録されたエラ・ラングレー「Choosin' Texas」が3週連続、通算7週目の首位を獲得しています。

そして次週、5月2日付米ソングチャートではその「Choosin' Texas」と、集計期間初日にあたる4月17日にリリースされたオリヴィア・ロドリゴ「Drop Dead」が競うものとみられていました。しかし、米チャートの高い予想精度を持つXアカウントのTalk of the Chartsによると、初期予想と中間とで順位が逆転し、「Drop Dead」が「Choosin' Texas」を引き離しています。なお日本時間の明日までに最終予想が登場する予定です。

日本時間の明後日早朝に発表される結果をチェックすることが重要ですが、今回のオリヴィア・ロドリゴ「Drop Dead」における様々な音楽チャート施策(に成り得る動き)が非常に興味深く、以下にまとめます。なお今回は、リリース後の動きに限定した形で採り上げます。

 

<オリヴィア・ロドリゴ「Drop Dead」 リリース後における音楽チャート施策>

 

 

音楽チャート施策について

① サプライズのパフォーマンス

現地時間の4月18日、コーチェラ・フェスティバルでのアディソン・レイのステージにサプライズで登場。アディソンによる「Headphones On」にてオリヴィアがコラボ。そしてオリヴィアが「Drop Dead」を披露し、アディソンが参加しています。コーチェラ・フェスティバルは今年も様々なサプライズがみられましたが、未来のヒット曲を先行で披露することはその中でも特筆すべき出来事だったかもしれません。

 

② TikTok(Apple Music)の活用

カラオケに特化した音源や動画の公開については以下の発信が参考になると思われます。上はオリヴィア・ロドリゴの公式ファンアカウント発、下はarne代表の松島功さんによるポストとなります。

オリヴィア・ロドリゴ「Drop Dead」におけるカラオケイベントについてはTikTok Celebrates Olivia Rodrigo's New Single with "drop dead" Karaoke - Newsroom | TikTok(4月15日付)をご参照ください。またTikTokとApple Musicは先月連携を発表しており、これがApple Musicのみでのリリースとなった背景の一因と考えていいのかもしれません。

今回の新機能では、ユーザーが 「おすすめ」フィード や 楽曲詳細ページでお気に入りの楽曲を見つけた際、「楽曲をフル尺再生(Play Full Song)」ボタンをクリックするだけでApple Musicのプレーヤーが開き、楽曲をフル尺で楽しめます。その後は、Apple Musicのおすすめ機能によってパーソナライズされた楽曲を続けて聴くことも可能です。

TikTok、Apple Musicと連携した新機能「楽曲をフル尺再生(Play Full Song)」と「リスニングパーティー(Listening Party)」を発表 - Newsroom | TikTok(3月13日付)より

TikTokにてApple Musicのプレイヤー経由で曲を聴いた場合は音楽チャートに反映される、また米ビルボードによる各種チャートでは様々なバージョンが合算対象となるため、Singalong Audioバージョンもカウントされるとみられます。

 

③ iTunesのみのリリース

「Drop Dead」のアコースティックバージョンが動画にて、4月22日にダウンロードのみでリリース。ダウンロード先行/ストリーミング後発もしくは販売なしという施策は直近のテイラー・スウィフト(『The Life Of A Showgirl』からのシングル曲である「The Fate Of Ophelia」や「Opalite」)で散見されましたが、この施策はダウンロードの上昇が目的とみられます。

 

④ Spotify(有料会員限定)およびApple Musicのみ視聴可能な動画の用意

Spotifyにて公開された動画は後にYouTubeでも公開されましたが、Apple Music側で公開されたほうは現時点でもYouTube未公開の状況です。

このような公開は、テイラー・スウィフト「Opalite」のミュージックビデオ解禁時にも実施。YouTubeが米ビルボードのチャート設計思想を疑問視し、1月31日付以降データの提供を取り止めたことが背景にあります。YouTubeがカウント対象にならないため(動画再生はストリーミング指標に反映)、ミュージックビデオを独占もしくは先行でサブスクサービスにて展開し、ストリーミング指標の増加につなげようとしているのです。

なお米ビルボードではストリーミング指標において、サブスクサービス有料会員による1回再生のウエイトを無料会員のそれより大きく設定しています。YouTubeはこの設計を古いと非難していますが、米ビルボードには金銭を支払って音楽に接する者をより重視するという考え(設計思想)が背景にあると考えられます。

 

⑤ 販売強化のためのさらなる投入

「Drop Dead」では、iTunes Store専用での2種のリミックス、さらにはこのプラットフォーム限定販売となるジャケットを用意しています。オリジナル版と異なるジャケットは”Alternate Cover”と呼ばれ、BTSが「SWIM」にて導入したことが初動ダウンロード指標15万超え、そして総合首位初登場の原動力となっています。なお「SWIM」ではその後もリミックス、そして別ジャケット用意という施策が採られています。

さらにはTalk of the ChartsによるXのポストにあるように、「Drop Dead」では安価販売が行われました。執筆時点である4月25日15時時点では1.29ドルで販売されている様々なバージョンが当時は0.69ドルで販売されており、これに対抗してかエラ・ラングレーも「Choosin' Texas」にて同種の施策を実施しています。

 

米ビルボードは記事にて音楽チャート施策を明示する

実は今回紹介した施策の多くは、米ビルボードが記事にしています。『オリヴィア・ロドリゴは来週の米ビルボードソングチャートでエラ・ラングレーを抑えて1位を獲得できるか?』というタイトルの記事から、該当箇所を採り上げます。

Whether it can topple Ella Langley’s seven-week Hot 100 No.1 “Choosin’ Texas,” however, may largely come down to sales. Langley will, of course, have the radio advantage, given her single’s months-long head start — though “Drop Dead” begins strong there as well, with 17.6 million in initial five-day all-format audience, according to Luminate — but Rodrigo may make up the difference in sales, with a wide variety of editions of the new single available both for digital and physical purchase.

(しかし、エラ・ラングレーが通算7週首位を獲得した「Choosin’ Texas」を上回るかはは、主にセールス(ダウンロード指標)次第となるでしょう。無論「Choosin' Texas」は数ヶ月前にリリースされたゆえラジオ指標で優位といえます。しかしルミネイトのデータによれば「Drop Dead」もラジオで好調なスタートを切り、リリース初日から5日間における全フォーマット合計リスナー数は1760万人に達しています。「Drop Dead」はデジタルとフィジカルの双方で多種多様なバージョンを販売しており、売上でラジオの差を埋める可能性が考えられます。)

Online, Rodrigo has released multiple music videos, multiple cover variants, and multiple different edits of the song, including “the most alive I’ve ever been – sped up” and “you know all the words – isolated vocals” editions, which should help her accumulate one of the year’s most robust single-week digital sales totals. Through her website, she has also sold the single on CD, cassette and vinyl, with the vinyl release of the song already selling out — though it is unclear what percentage of those copies shipped during this current tracking week (April 17-23), with later-shipped copies counting towards future chart weeks.

(「Drop Dead」はデジタルにて複数のミュージックビデオ、複数の異なるジャケット、そして”the most alive I’ve ever been – sped up”や”you know all the words – isolated vocals"といったリミックス版を含む多彩なバージョンをリリースしており、これらがオリヴィアにとって今年最も堅調な週間セールスと成るための一助となるはずです。また自身の公式ホームページを通じてCD、カセットテープそしてレコードを販売。レコードは既に完売していますが、次週5月2日付の集計期間内(4月17~23日)に発送された分が全体の何パーセントを占めるかは不明であり、後日発送された分は今後のチャートに計上されることとなります。)

With the single really getting the full streaming and sales push from Rodrigo and her label — reminiscent of recent campaigns for megastars like Taylor Swift and BTS — it seems a good bet that “Drop Dead” will end up being undeniable at the top spot next week. But it’ll have to play all 48 minutes, as the competition this week remains very strong.

(オリヴィアとそのレコード会社によるストリーミングおよびセールスへの本格的な施策(テイラー・スウィフトやBTSといったスターたちの最近のキャンペーンを彷彿)を受けていることから、「Drop Dead」が次週間違いなく首位を獲得するものとみられます。しかしその競争は非常に激しいため、48分間フルにプレイし続ける必要があるでしょう。)

 

 

※ 記事はDeepL翻訳を用いた上で、意訳しています。

記事における48分間とは何を指すか解りかねますが、オリヴィア・ロドリゴのファンダム(コアファンの中で音楽チャートに意識的な方々と定義)がすべきことを指しているものと思われます。なお米ビルボードソングチャートにおいては、先述したように様々なバージョンが合算。またラジオ指標は上昇しにくい、ダウンロード指標にはフィジカルセールスも含まれるという特徴があります。

 

米ビルボードがこのような記事を用意するのは、次週の米ソングチャートの注目度の高さを示しているのは勿論のこと、音楽チャート施策に極端なものがあった場合は今後是正すべきか議論すべく目を光らせているということも考えられます。実際、ダウンロード指標が急増しても実際の購入者数(ユニークユーザー数)が多くないことが考えられるため、尚の事でしょう。最近はこの指標中心に集計方法の変更が行われています。

 

おわりに:日本の歌手が海外進出時にすべきこと、そして真の社会的ヒットを知る必要

今回紹介したオリヴィア・ロドリゴのみならず、過去の事例や米ビルボードの記事でも採り上げたテイラー・スウィフトやBTSはいずれも、ユニバーサルミュージックグループに所属。音楽チャート施策の実績を積み上げ、グループ内で知見を共有しているとみられることから、このグループに属し所有指標にも長ける(アイドル的な人気も誇る)歌手においては今後も同種の施策が採られていくのではないでしょうか。

そして施策の実行については、レコード会社共々歌手側も音楽チャートを日々、毎時毎分チェックしていることが判断の前提にあると考えます。音楽チャート制覇が歌手にとっての栄誉である、そしてその音楽チャートは特に初週にて制する可能性が高いと捉え、動いているのではないでしょうか。日本の歌手が世界で活躍したいならばチャートへの知見や意識を高め、初動の拡充等を学ぶ必要があるはずです。

一方で、大事なのは週間単位での上位進出もさることながら、それ以上にロングヒットし年間チャート等に登場することです。所有指標は接触指標に比べて急激な失速が生まれやすいため、米ソングチャートではストリーミングの維持、そしてラジオの上昇が欠かせません。それができるかをオリヴィア・ロドリゴ「Drop Dead」にて、そして今後同種の施策を採る曲に対し、とりわけ強く注視する必要があります。