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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

米ビルボードソングチャート、2026年度初週にリカレントルールを強化したことについて

ビルボードは最新10月25日付米ソングチャート速報記事発表のタイミングにて、2026年度初週にあたる当週からリカレントルールに関するチャートポリシー(集計方法)を変更することを発表しています。

最新の米ソングチャートについては翻訳記事を別エントリーにて用意しています。

 

リカレントルールとはチャートの新陳代謝を主な目的として、一定週数以上ランクインした曲が一定順位を下回った場合にチャートから外れるというもの。これまでは20週ランクインした曲が後に50位を下回った場合、また52週ランクインした曲が後に25位を下回った場合に総合ソングチャートから外れ、リカレント曲専用のチャートに移行することとなっていました。

(なお、クリスマス関連曲の上位進出に伴いリカレントルールに抵触した際は、そのクリスマス関連曲の後退に伴いチャートに戻るという特例が設けられています。また再リリース曲や人気が再燃した作品、また訃報に伴う代表曲の再浮上等については例外が設けられます。)

 

ビルボードは最新10月25日付米ソングチャートの記事(上記ポスト内リンク参照)にて、リカレントルールに関するチャートポリシー(集計方法)の変更点を掲載しています。

Recurrent Rule Change

(リカレントルールの変更)

 

 

Effective this week, on the first Hot 100 of Billboard’s 2026 chart year, altered tiers will dictate when songs move to recurrent status following their runs on the ranking.

(2026年度米ビルボードソングチャート初回となる当週以降、変更後のチャートポリシーに伴い、リカレント専用チャートに移行するタイミングが決定されます。 )

Previously, descending songs were removed from the Hot 100 once falling below No. 25 after 52 weeks or below No. 50 after 20 weeks. Descending songs will now depart via the following thresholds, once they are:

・Below No. 5 after 78 weeks

・Below No. 10 after 52 weeks

・Below No. 25 after 26 weeks

・Below No. 50 after 20 weeks

(これまでは、下降中の楽曲は52週経過後に25位未満、または20週経過後に50位未満となった時点でソングチャートから除外されていました。今後、下降中の楽曲は以下のタイミングでチャートから除外されることとなります。

・78週経過後に5位未満

・52週経過後に10位未満

・26週経過後に25位未満

・20週経過後に50位未満)

Songs gaining below those markers will be eligible to remain on the Hot 100 on a case-by-case basis. Plus, holiday classics will qualify to return above No. 50 regardless of total chart weeks, and then be subject to the rules noted above upon their descents; the same for newly-surging non-holiday catalog songs, with those without significant chart history eligible to debut at any rank, as considered individually. Songs will also continue to be removed from the all-format Radio Songs chart once they go recurrent on the Hot 100.

(これらの基準値を下回った楽曲は、個別審査によりソングチャート残留が認められる場合があります。また、クリスマス関連曲(過去曲)はチャート掲載週数に関わらず50位以上に復帰可能となり、その後下降した際には上記ルールが適用されます。同様に、新たに急上昇したクリスマス関連曲以外の過去曲も同様の扱いとなり、顕著なチャート履歴のない楽曲は個別に審査の上、任意の順位で初登場が可能です。また、楽曲がソングチャートでリカレントルールに抵触した時点で、全フォーマット対象のラジオ指標(ラジオソングチャート)からも除外され続けます。)

 

 

※ ()内はDeepL翻訳を基に、意訳したものです。

リカレントルール適用がかなりタイトとなった(いわば強化した)のみならず、クリスマス関連曲においても今後再登場した後はリカレントルールの適用対象に成るといえます。たとえばマライア・キャリー「All I Want For Christmas Is You (邦題:恋人たちのクリスマス)」は2025年1月4日付で首位を獲得した際に登場71週目だったこともあり、2026年度が最後のランクインとなる可能性が高いとみられます。

 

ビルボードはリカレントルールを強化した理由、そしてチャートポリシー変更に伴う効果について、次のように述べています。

Notably, amid the takeover of streaming during the past decade, the Hot 100 has reflected repeat listening more than ever before. Concurrently, as reflected on Billboard airplay charts, radio stations are now generally holding onto hits longer and in frequent airplay rotations. That shift has resulted in charts that move more slowly than in the past.

(特に、過去10年間のストリーミング台頭の中で、米ソングチャートはこれまで以上にリピート再生を反映するようになりました。同時に、ビルボードのエアプレイチャートが示す通り、ラジオ局はヒット曲がより長く上位に留まり、また頻繁なローテーションでオンエアする傾向にあります。この変化により、ソングチャートの変動は以前より緩やかになっています。)

The latest adjustments will alleviate congestion in various regions of the Hot 100, helping to move out songs that have gone recurrent at radio formats and/or are no longer actively being promoted by labels for DSP playlisting.

(今回の調整により、米ビルボードソングチャートの各領域における混雑が緩和され、ラジオフォーマットで繰り返し放送されるようになった楽曲や、レコード会社によるDSPプレイリストへの積極的なプロモーションが終了した楽曲のチャートからの退出が促進される見込みです。)

 

 

DSPとは『ストリーミングプラットフォーム』や『消費者にデジタルオーディオを配信するオンラインストア』を示します(『』内は音楽業界の用語集:すべてのアーティストが知っておくべき80以上の用語 – Spotify for Artistsより)。

ビルボードはチャートポリシーを変更しリカレントルールを強化することで、ラジオ業界やレコード会社の変革を促すという目的もあったとみられます。なお、ロングヒット曲が増加した現状については、テディ・スウィムズ「Lose Control」が最長ランクイン記録を達成したタイミングで米ビルボードが分析しています。

 

そして、今回のチャートポリシー変更に伴い、例えば以下の作品がリカレントルールに抵触し総合ソングチャートから外れています。

In especially recent years, songs have logged some of the longest Hot 100 runs to date, led by Teddy Swims’ “Lose Control,” which leaves the Oct. 25 chart after a record 112-week stay. Other hits that move to recurrent status this week include Benson Boone’s “Beautiful Things,” after 89 weeks, and Lady Gaga and Bruno Mars’ “Die With a Smile,” after 60.

(特に近年では、テディ・スイムズ「Lose Control」を筆頭に米ビルボードソングチャートに長期滞在した曲が多く存在。10月25日付ソングチャートではその「Lose Control」が112週滞在の後に、またベンソン・ブーン「Beautiful Things」(89週)、レディー・ガガブルーノ・マーズ「Die With A Smile」(60週)等が、リカレントルールに抵触し総合ソングチャートから外れています。)

 

ビルボードが挙げた上記代表曲以外にも、リカレントルール抵触曲は出てくるものと思われます。チャート予想を行うXアカウントのTalk of the Chartsは、次の曲が該当する可能性があると紹介しています。

ただしリストアップした曲のうちラジオ指標で増加する作品もあることから、それらについてはチャートに残る可能性があると(スレッドの形で)記しています。

 

 

今回のリカレントルール変更については、その推移を見守る必要があるというのが現時点での私見です。

 

引っ掛かったのは、米ビルボードがリカレントルール該当曲を”下降曲 (descending songs)”と形容したこと。下降することでリカレントルールに抵触するゆえ厳密には間違いではないのですが、たとえば2025年度最終週におけるテイラー・スウィフト『The Life Of A Showgirl』収録12曲の12位まで独占という事態に伴い、リード曲等一部を除いてラジオで強くないとしても、またテイラーの件ではリリース初週の単曲ダウンロードを認めていなかったゆえにダウンロード指標がカウントされないとしても、ストリーミングで強いアルバムの初登場に伴い多くの曲がソングチャートから半ば必然的に押し出されることになります。ゆえにその状況下で”下降曲”と表現することに対し、違和感を抱いた次第です。

変更後のリカレントルールではそのような場合以外でも抵触する曲が増えるとは思われますが、ならばストリーミング指標に関する見直しについても適宜考える必要があるのではと感じています。特に今回の件に賛同する方の中からはラジオの停滞が問題との指摘がみられ、以前にはラジオ(指標)不要との声も上がっていましたが、チャート管理者側がすべての指標に対し日頃から自問自答することを願うばかりです。