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テディ・スウィムズ「Lose Control」が米ビルボード史上初の100週エントリー達成…その背景を探る

最新7月26日公開分の米ビルボードソングチャートでは、テディ・スウィムズ「Lose Control」が前人未到となる通算100週エントリーを達成しています。

今回はこの記録の背景を探ります。

 

 

ビルボードソングチャートは時代に即して集計方法を変更し、現在はストリーミング(動画再生含む)、ダウンロード(フィジカルセールス含む)およびラジオの3指標で構成されています。ロングヒットに欠かせないのはストリーミングおよびラジオであり、集計対象局のオンエアを基に各局の聴取可能人口等を加味して算出されるラジオはピークがストリーミングよりも遅くなります。

その状況下、ストリーミング時代に入ると過去曲もヒットする傾向が高まっています。冒頭で紹介した記事では現在のチャート傾向を紹介した上で、長期エントリー記録上位10曲を記載しています。

1991年11月以降、ルミネイトの電子的に集計されるデータが導入されて以降、チャート滞在期間、1位滞在期間、トップ10滞在期間はいずれも長期化する傾向にある。最長チャートイン記録を持つ上位3曲はいずれも2020年代に最高位をマークし、上位10曲まで範囲を広げると2008年以降のヒット曲となっている。

(中略)

以下、Hot 100最長チャートイン楽曲のTOP10一覧となる。

 

100週:「Lose Control」テディ・スウィムズ

Hot 100最高位:1位(1週)・2024年3月30日

(2025年7月26日付現在もチャートイン中)

 

91週:「Heat Waves」グラス・アニマルズ

Hot 100最高位:1位(5週)・2022年3月12日開始

 

90週:「Blinding Lights」ザ・ウィークエンド

Hot 100最高位:1位(4週)・2020年4月4日開始

 

87週:「Radioactive」イマジン・ドラゴンズ

Hot 100最高位:3位・2013年7月6日

 

79週:「Sail」エイウォルネイション

Hot 100最高位:17位・2013年10月12日

 

77週:「Beautiful Things」ベンソン・ブーン

Hot 100最高位:2位・2024年3月30日

(2025年7月26日付現在もチャートイン中)

 

77週:「Levitating」デュア・リパ

Hot 100最高位:2位・2021年5月22日

 

76週:「I’m Yours」ジェイソン・ムラーズ

Hot 100最高位:6位・2008年9月20日

 

71週:「All I Want for Christmas Is You」マライア・キャリー

Hot 100最高位:1位(通算18週)・2019年12月21日開始

 

70週:「Snooze」シザ

Hot 100最高位:2位・2023年10月7日

 

デジタル、特にストリーミング時代にあってヒットが全体的に長期化していることについては、今月ブログにて紹介したばかりです。またマライア・キャリー「All I Want For Christmas Is You (邦題:恋人たちのクリスマス)」のヒットについては別途分析エントリーを用意しています。

前者のエントリーでは、ストリーミングおよびラジオの数値が(各指標首位曲において)減少傾向にあることを紹介しています。そのエントリーを記した後、7月19日付米ビルボードソングチャートにてアレックス・ウォーレン「Ordinary」がラジオ指標7千万を突破しましたが、これは昨年11月におけるシャブージー「A Bar Song (Tipsy)」以来の記録であり、やはり数値の低下は否めないというのが私見です。

 

 

さて、米ビルボードソングチャートに90週以上エントリーを果たした3曲についてですが、90週エントリーを達成したザ・ウィークエンド「Blinding Lights」および91週エントリーのグラス・アニマルズ「Heat Waves」はランクインから外れた週に共通の特徴があります。そのためにはまず、米ビルボードソングチャートにおけるリカレントルールを知る必要があります。

Billboardソングチャートでは、一定週数以上ランクインしている曲が一定順位を下回った際にチャートから外れるというルールを適用。21週以上在籍の場合は50位未満、53週以上の場合は25位未満に後退した際に適用される。これはチャートの新陳代謝を目的とするものだ。

(なお、テディ・スウィムズ「Lose Control」では2025年1月4日付で一度チャートから外れています。これはクリスマス関連曲の大量エントリーに伴いリカレントルールに抵触したことが背景にありますが、翌週はクリスマス関連曲が急落したことで4位に復帰しています。クリスマス関連曲に押し出される形でルールが適用された曲は復活が可能だというのが、米ビルボードの仕様となります。)

このリカレントルールに大きく関わるのが、アルバムチャートにおいてストリーミングに強い作品が初登場した際、その収録曲が大挙エントリーすることです。

 

ザ・ウィークエンド「Blinding Lights」が最後にランクインしたのは2021年9月4日付(→こちら)、そしてグラス・アニマルズ「Heat Waves」は2022年10月22日付(→こちら)が最後となります。最終ランクイン時の順位は「Blinding Lights」が20位、「Heat Waves」が21位という状況ですが、翌週にはそれぞれ強力なアルバムが登場しています。

ザ・ウィークエンド「Blinding Lights」はカニエ・ウェスト『Donda』が首位に初登場し、収録曲のうち7曲が25位までに入ったことでリカレントルールに抵触。またグラス・アニマルズ「Heat Waves」はリル・ベイビー『It's Only Me』がこちらも首位初登場を果たし、収録曲のうち6曲が25位までに初登場、且つ先行リリースの2曲が25位以内に上昇したことに伴い、こちらもリカレントルールの適用を受けた形です。

実際にテディ・スウィムズ「Lose Control」も、ストリーミングに強いアルバムの初登場に伴う収録曲の大挙エントリーにより、押し出されたことがあります。今年3月29日付ではプレイボーイ・カルティ『Music』、5月31日付ではモーガン・ウォーレン『I'm The Problem』のアルバムチャート初登場に伴い、収録曲のソングチャート登場によりトップ10内から後退していますが、翌週には戻ってきています。

強力なアルバムの初登場以外にも、2月22日付ではケンドリック・ラマーが(前週のグラミー賞受賞に続く形での)スーパーボウルハーフタイムショーパフォーマンス効果に伴い、トップ3独占を含む5曲がトップ10入り。それによりテディ・スウィムズ「Lose Control」は8→12位に後退していますが、2週後にトップ10内に返り咲いています。

それでも、テディ・スウィムズ「Lose Control」においては強力なアルバムが登場しなかったこと、そして楽曲がほぼ毎週トップ10内をキープしていることが、結果としてリカレントルール適用を免れ、最終的に100週エントリーを達成した要因といえるでしょう。

 

ちなみに、最新7月26日付米ビルボードソングチャート(→こちら)では、前週まで65週エントリーを果たしていたサブリナ・カーペンター「Espresso」がリカレントルール適用に伴いチャートを外れています(前週は19位にランクイン)。

これは最新アルバムチャートでトラヴィス・スコット、ジャスティン・ビーバー、クリプスがトップ10内に初登場し、収録曲が大挙エントリーしたことで押し出された形です。

先述の3組で当週28曲がソングチャートに初登場を果たすも、しかし25位までのエントリーはジャスティン・ビーバーによる4曲に限られます。ここからはストリーミングの全体的な低下が想起され、そのこともテディ・スウィムズ「Lose Control」のロングヒットにつながったものと考えます。

 

 

テディ・スウィムズ「Lose Control」が今後どこまで在籍週数を伸ばすかに注目ですが、楽曲の安定等を踏まえればやはり強力なアルバムリリースが影響を及ぼすといえるでしょう。そこで真っ先に思い浮かぶのが、テイラー・スウィフトの次作です。

昨年5月4日付米ビルボードソングチャートでは、テイラー・スウィフトによる前作『The Tortured Poets Department』の首位初登場に伴い、収録曲が14位まで独占。それによりテディ・スウィムズ「Lose Control」は4→18位に後退しています。一方で当時の在籍週数は37週目であり、50位未満に押し出されなかったことがリカレントルール抵触を免れた要因です。

テイラー・スウィフトは再レコーディングアルバム(”Taylor's Version”)を含め、2020年代は毎年1枚以上アルバムをリリースしています。来年開催のグラミー賞が今年8月30日までにリリースした作品を対象にすることを踏まえれば、来月までに何かしらのアクションがあるかもしれません。そして実際にアルバムが登場するならば、テディ・スウィムズ「Lose Control」のチャート動向はどうなるかに注目です。