ビルボードジャパンは昨日、2025年下半期初週に導入したリカレントルールに関するコラムを公開しています。ここからはビルボードジャパンにおけるヒットチャートの設計思想等が理解できるものと考えます。
リカレントルール導入でチャートはどう変わった? 2025年下半期を振り返る https://t.co/RbiCwopPIC
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) 2025年12月28日
また、ビルボードジャパンが先週公開したポッドキャストでは、このリカレントルールについても冒頭で触れています。編集長の高嶋直子さんが日本独自のルール設計への自負を発信した一方、チャートディレクターの礒﨑誠二さんが"波紋を呼んだ"と表現したことを興味深く感じています。
リカレントルールについて、個人的にはその導入自体は納得できる一方で、しかしビルボードジャパンによるルール導入や説明等が足りていないということを痛感しています(それゆえの"波紋"ではとも考えます)。私見は今朝方Xにて記していますが(こちらのポスト以降を参照)、ビルボードジャパンにはポッドキャストが半年空いていたことも含め、(多忙ゆえ仕方ないとしても)発信についての徹底を願うばかりです。
さて、ビルボードジャパンソングチャートではリカレントルールの対象となった後も強さを発揮する作品がみられます。その際、ストリーミング以外の指標における強さが牽引していることが、たとえば2025年度下半期初週にてルールに抵触したMrs. GREEN APPLE「ライラック」から確認できます。

(上記CHART insightは有料会員が確認可能なもので、20位未満の指標順位も明示されています(ビルボードジャパンでは有料会員が知り得る情報の掲載を許可しています)。また、以下に紹介するCHART insightも同様に、有料会員が確認可能なものとなります。)
Mrs. GREEN APPLE「ライラック」のCHART insightをみると、ストリーミング(青で表示)がリカレントルール抵触時に急落していることが解りますが、ルール抵触後も動画再生(赤)やカラオケ(緑)といった指標がトップ10内をキープし続けています。動画再生はストリーミングと比例する傾向にある接触指標ゆえ納得できるといえますが、カラオケ人気がルール抵触後のチャートに影響するということは注目すべきでしょう。
Mrs. GREEN APPLE「ライラック」のみならずVaundy「怪獣の花唄」やback number「高嶺の花子さん」等のチャート動向からも、リカレントルール抵触後も人気を保つためにはカラオケで愛され続けることが重要だということがみえてきます。言い換えれば、カラオケで人気を続ける曲は接触指標群でも人気に成る可能性が高く、実際に以下のアイドルソングからそのような現象を確認することができます。

(上記CHART insightは最新週までの90週分を表示。なお他の曲については60週分以下の表示となります。)
昨年秋にサブスク解禁を実施したNEWS「チャンカパーナ」は、それ以前からカラオケ指標でランクインを続けていました(300位以内に入り同指標加点対象に)。その後のサブスク解禁、またフルバージョンの動画公開がカラオケ指標を大きく押し上げ、同指標トップ10入りのみならず、2025年度のビルボードジャパン年間ソングチャートでは78位にランクイン。STARTO ENTERTAINMENT所属歌手作品では最高位を記録しています。

KinKi Kids「愛のかたまり」もまた、カラオケ指標指標が好調に推移していたタイミングで今年春にサブスクが解禁。それによりカラオケ指標が一段高いところに到達していることが解ります。尤もこの曲については昨年夏に公開したライブ映像の存在も影響したといえます。2025年度ビルボードジャパン年間ソングチャートにはランクインしていませんが、今年を代表するSTARTO ENTERTAINMENT関連曲のひとつといえるでしょう。
(なおビルボードジャパンでは、言語のみが異なる以外のバージョン(リミックス等)については基本的にオリジナルバージョンに合算されませんが、動画については付番されたISRC(国際標準レコーディングコード)が同じならば合算対象となります。その状況(矛盾と呼べるチャートポリシー)を踏まえ、このブログでは以前からビルボードジャパンに対し、米ビルボードに倣う形で合算することを提案しています。)
2曲については、直近12月24日公開分のビルボードジャパンソングチャートで100位以内に登場しています(CHART insightにて直近における順位、および100位以内在籍週数が掲載)。NEWS「チャンカパーナ」はオリコンでの記録達成に伴う新動画やショート動画の公開が、KinKi Kids「愛のかたまり」についてはDOMOTO版セルフカバーのリリースやTHE FIRST TAKEでの披露等が、それぞれ影響したと考えられます。
STARTO ENTERTAINMENT所属歌手作品はデジタルに明るくない状況が今も強いながら、他の歌手以上に動画再生指標が強いこと、そして人気曲のカラオケ需要がCHART insightにて可視化されていました。サブスク解禁はそれら指標をさらに刺激し、特にカラオケでの安定につながったのみならず、新たな施策の投入により総合ソングチャートでも上昇、もしくは100位以内に再登場できるということを証明したといえます。
一方で、ビルボードジャパン総合ソングチャートでは100位以内ランクインがNEWS「チャンカパーナ」で39週、KinKi Kids「愛のかたまり」では28週となっており、このまま順調にランクインを続けてもいずれリカレントルールに抵触することとなります。ゆえにヒットを如何に継続させるか(カラオケ指標をさらに上位で安定させるか等を考える)のみならず、この実績を歌手側そして芸能事務所側が共有し、次に活かすかが重要です。
無論この提案は、どの歌手や芸能事務所等に対してもいえることです。カラオケ指標が強いながら総合ソングチャートではそこまでではないという曲の中には、たとえばサブスク未解禁(WANDS「世界が終るまでは...」)や一部サービスのみでの解禁(山下達郎「クリスマス・イブ」)、またミュージックビデオ未公開の作品も少なくありません。デジタルアーカイブの徹底はその後の施策立案にもつながりやすいゆえ、徹底を願います。
今回のエントリーで示した考え方は、先週公開した内容ともリンクします。そこで紹介したM!LK「好きすぎて滅!」は最新12月24日公開分ビルボードジャパンソングチャートにおいてカラオケ指標が84位に上昇、またSnow Man「カリスマックス」は100位未満ながら300位圏内となり加点対象を続けています。共にストリーミング、動画再生指標も高く推移しており、アイドル曲における理想のチャート動向といえるでしょう。

