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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』だけではない…グローバルトップ10をアジア関連曲が寡占した件

このブログでは米ビルボードによる米およびグローバルのソングチャートを毎週紹介しており、『Kpop Demon Hunters (邦題:KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ)』(Netflix)サウンドトラック収録曲の好調については別途エントリーも用意する形で採り上げてきました。そして最新のソングチャートをみるとこのサウンドトラックに限らず、韓国を主体にアジアの作品が好調であることが読み取れます。

 

ビルボードによる最新8月2日付ソングチャートでは、『Kpop Demon Hunters』サウンドトラックに収録されたハントリックス(イジェ、オードリー・ヌナ & レイ・アミ)「Golden」が米で2位に上昇し最高位を更新、またふたつのグローバルチャート(Global 200、およびGlobal 200から米の分を除くGlobal Excl. U.S.)では2週ぶりに首位の座に返り咲いています。

ハントリックス「Golden」はこの4週で、米ソングチャートにて23→6→4→2位と順調に推移。2週前はストリーミング1880万(前週比39%アップ)、ダウンロード3,000(前週比記事未記載)、ラジオ95万(同)だった指標構成は、最新8月2日付ではストリーミング2570万(前週比12%アップ)、ダウンロード4,000(同10%アップ)、ラジオ370万(同109%アップ)といずれも上昇しています(なお7月26日付における指標構成は記事未記載の状態です)。

何より注目は、最新8月2日付米ソングチャートにおいてハントリックス「Golden」がストリーミング指標を制したこと。架空の歌手ながら、女性グループによる作品として初の記録を達成しています。

ストリーミング指標(の基となるトップストリーミングソングチャート)が2013年に始まって以降、ハントリックス「Golden」は女性のみで結成された歌手として初の首位獲得曲に。なお、女性ソロ歌手同士のコラボレーション(それ以外の歌手とのコラボレーションを含まない)では、イギー・アゼリア feat. チャーリーXCX「Fancy」(2014)、ミーガン・ザ・スタリオン feat. ビヨンセ「Savage」(2020)、カーディ・B feat. ミーガン・ザ・スタリオン「WAP」(2020)およびピンクパンサレス & アイス・スパイス「Boy's A Liar, Pt. 2」(2023)の4曲がこの指標で首位を獲得しています。

 

ハントリックス「Golden」のみならず、『Kpop Demon Hunters』収録の他の曲も勢いを高めていることは最新8月2日付米ビルボードソングチャート(→こちら)からも見て取れますが、同日付グローバルチャートでは同サウンドトラック収録の4曲がGlobal 200、Global Excl. U.S.の双方でトップ10入りを果たしています。「Golden」はGlobal 200でストリーミング9850万(前週比20%アップ)を記録し、週間1億回再生までもうすぐです。

グローバルチャートでは、BLACKPINK「JUMP」が前週ストリーミング1億回再生を突破しGlobal 200、Global Excl. U.S.の双方で首位初登場。当週はハントリックス「Golden」にその座を譲るも、双方のチャートでトップ3内にとどまっています。BLACKPINKのロゼがブルーノ・マーズと組んだ「APT.」もトップ10入りし続け(米では在籍40週目に)、さらにはインド出身のファヒーム・アブドラによる「Saiyaara」が上昇しています。

「Saiyaara」は7月18日に公開されたヒンディー語による同名映画からのナンバー。そしてこの映画も、最新の全米週間興行成績ランキング(集計期間:7月25~27日)で9位に初登場しています(最新ランキングは映画.comで確認できます→こちら)。

 

その結果、米ビルボードによる最新8月2日公開分のグローバルチャートではGlobal 200そしてGlobal Excl. U.S.の双方でK-POP関連が6曲(「APT.」含む)、およびヒンディー語による「Saiyaara」の計7曲がトップ10内を占め、アジア関連曲の強さが際立っています。

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(上記画像は米ビルボードチャート専用Xアカウントによるポスト(画像上はこちら、画像下はこちら)より。)

 

 

『Kpop Demon Hunters』に話を戻すと、当週はTWICE「Strategy」が米チャートで92位に初登場。同曲はTWICEが昨年末リリースした同名EPのリード曲であり、そして既発曲ながらサウンドトラックに収録されています。

実は、米ビルボードソングチャートを予想するXアカウントのTalk of the Chartsは、TWICE「Strategy」がミーガン・ザ・スタリオン参加版としてランクインするとポストしていました(→こちら)。米やグローバルソングチャートでは様々なバージョンが合算され、客演等追加版がオリジナル版より多くのポイントを獲得した際はランクイン時のクレジットが客演参加版となる仕組みです。

しかしながら「Strategy」は、TWICE単独版として米ソングチャートに初登場を果たしています。これは『Kpop Demon Hunters』サウンドトラック(単独版のみ収録)が聴かれたこともさることながら、7月17日に『Kpop Demon Hunters』の映像を用いたリリックビデオを公開したことも功を奏したといえるでしょう。後者が寄与したならば尚の事、歌手側の施策がチャートを動かした一例と呼べるかもしれません。

 

 

映像作品(『Kpop Demon Hunters』『Saiyaara』)のムーブメントが楽曲のチャート動向に寄与するのみならず、施策がチャートに影響を及ぼすと思しき事態も今回発生しています。そして次週、デヴィッド・ゲッタによるリミックス版がハントリックス「Golden」に合算されることでグローバルチャートでの首位固めもさることながら、米チャートにてアレックス・ウォーレン「Ordinary」に追いつく可能性も出てくるかもしれません。

『Kpop Demon Hunters』を主体にアジアの勢いが高まっていることを強く感じる中、日本の楽曲は、そしてエンタテインメント全体はどう動いていくでしょう。良質な作品を輩出すること、業界全体が海外へのアプローチを拡充させることも必要ながら、施策の重要性を知ることも大事だというのが音楽チャート分析者としての見方です。

 

最新のGlobal 200においてはHANA「Blue Jeans」が日本の楽曲で唯一ランクインしていますが、同曲はこのチャートでより高い位置に就けたのではと捉えています。

一方で最新7月23日公開分ビルボードジャパンソングチャートで2位のHANA「ROSE」が5,766ポイントだったことを踏まえれば、「Blue Jeans」は7月18日金曜にデジタルリリースしたとしても総合首位に至ったかもしれません(フィジカルリリースを7月23日に設定すれば総合2連覇の可能性も高まったのではないでしょうか)。そして8月2日付Global 200では、初週1週間フル加算に伴い100位以内初登場も狙えたのではと捉えています。

 

無論これは仮説に過ぎず、またHANAのグローバル施策がどのようなものなのかは分かりかねますが、しかしながらビルボードジャパンソングチャートが海外のチャート同様に金曜を集計期間初日としていたならば、日本とグローバルの双方で上位初登場を狙えたと考えます。集計期間を合わせる等ビルボードジャパンのチャートポリシー(集計方法)をグローバルに沿わせることの必要性については、以前から提案しています。

音楽チャート管理者側のチャートポリシー再考が必要ではというのが私見。合算に関しても海外に沿わせることで、歌手側がリミックス等の施策を採りやすくなるはずです。