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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

マライア・キャリー、back number、山下達郎…日米におけるクリスマス関連曲のチャート傾向をまとめる

音楽チャートにおいてはこの時期、クリスマス関連曲が上昇する傾向にあります。今回はアメリカと日本の動向、およびその差についてまとめます。

 

 

まずは音楽チャートでクリスマス関連曲が上昇する背景について。これは音楽チャートにストリーミング指標が組み入れられたこと、さらにはストリーミングが主流の聴取手段に成ったことが大きいといえます。なお米ビルボードによる米やグローバルの音楽チャートではYouTubeもストリーミングに含まれますが、ビルボードジャパンでは動画再生指標として扱われます(動画のオーディオストリーミングはストリーミング指標へ)。

このストリーミング時代に頭角を現したのがマライア・キャリー「All I Want For Christmas Is You (邦題:恋人たちのクリスマス)」。1994年のリリース時には米ではフィジカルシングルとしてリリースしなかったため総合ソングチャートに入りませんでしたが、ストリーミング時代以降はチャートポリシー(集計方法)変更も相まって伸び続け、2019年以降は7シーズン連続で首位を獲得。施策実行も大きく影響しています。

結果として「All I Want For Christmas Is You」は、最新12月20日付米ビルボードソングチャートで単独史上最長となる通算20週目の首位を獲得。さらに日本時間の明日発表予定となる12月27日付では史上初となるキャリア通算100週目の首位獲得が見込まれています。

 

また、12月20日付米ビルボードソングチャートではトップ10のうち8曲をクリスマス関連曲が占めています。米ではクリスマス当日にかけてクリスマス関連曲の上昇が自然となり(またデイリー単位でみるとクリスマスイブよりも当日のほうが再生回数が上昇)、毎年のようにクリスマス関連曲が占める形です。

ストリーミング指標においては、有料会員による1回再生が無料会員によるそれよりもウエイトを大きくする形が採用されています(これは日本も同様です)。ストリーミングでは再生回数が多いものの指標化時に首位を獲得できない事例が稀に登場し、クリスマス関連曲がそれに該当することがあるのですが、クリスマス関連曲においてはパーティーや店頭BGM等の需要が大きく、YouTube等で再生されることが多いゆえと考えます。

 

先程はマライア・キャリー「All I Want For Christmas Is You」における事例紹介を含めたブログエントリーを掲載しましたが、クリスマス関連曲で2023年に首位を獲得したブレンダ・リー「Rockin' Around The Christmas Tree」においても事例が存在することについて、下記ブログエントリーにて紹介しています。TikTokアカウントの開設、そしてミュージックビデオの制作が首位獲得に大きく貢献しています。

他にも、たとえばミュージックビデオが存在しなかったクラシックナンバーに対しアニメ動画が新たに制作されたり、ミュージックビデオを高画質化する等の動きが散見されます。たとえばSpotifyには再生中に短尺動画がリピート再生されるCanvas機能が存在しますが、そこでは先述したアニメ動画等が用いられています。またSpotify等におけるクリスマス関連曲プレイリストの存在も、チャートに大きく寄与しているといえます。

 

 

翻ってビルボードジャパンソングチャートをみてみると、クリスマス関連曲はランクインするもアメリカほどの席巻状態ではないといえます。そして、今年以降は総合チャートの状況が昨年以前と異なるようになることについて、頭に入れる必要があります。

上記はCHART insightからヒットを読む カテゴリーのエントリー(毎週土曜掲載)にて貼付しているストリーミング表をベースに、最新12月17日公開分(集計期間:12月8~14日)における総合ソングチャートで100位以内にランクインしたクリスマス関連曲のみでまとめたもの。100位以内登場は13曲存在し、うちBE:FIRST「街灯」、DOMOTO「愛のかたまり」そしてJO1「サンタさんへ。」は今年リリースされた楽曲となります。

一方で、昨年同時期となる2024年12月18日公開分(集計期間:2024年12月9~15日)においてはback number「クリスマスソング」が7位、マライア・キャリー「All I Want For Christmas Is You」が30位、桑田佳祐白い恋人達」が48位であり、今年は順位が下回っています。ストリーミング指標の基となるStreaming Songsチャートでは「クリスマスソング」が昨年より早い段階でトップ10入りしたにもかかわらず、です。

 

総合ソングチャートにおける一部クリスマス関連曲の動向には、ストリーミング表にて水色で示した曲に適用された"リカレントルール"が影響しています。

ビルボードジャパンは2025年度下半期の集計期間初週である6月4日公開分以降、ソングチャートおよびアルバムチャートのストリーミング指標にてリカレントルールを導入。Streaming SongsチャートおよびStreaming Albumsチャート(後者は未公表)を指標化する際、ソングチャートは総合100位以内に52週、アルバムチャートでは同26週ランクインした作品に対し、翌週以降減算処理を施すという措置が採られるようになりました。

ストリーミング指標化時における減算分はおよそ3分の2とみられているため、総合ソングチャートやアルバムチャートにおいては基となるチャートを知ることも重要です(ゆえにビルボードジャパンに対してはStreaming Albumsチャートの公開を以前から提案し続けています)。back number「クリスマスソング」等のヒットが可視化されにくく成った背景となるリカレントルールを知り、基のチャート共々チェックすることを勧めます。

 

 

最後に。ビルボードジャパンソングチャートにおいてもストリーミング指標の重要度が高まっており、またStreaming Songsチャートと動画再生指標が比例する傾向にもあります。その中にあって山下達郎「クリスマス・イブ」は毎年フィジカルシングルをリリースしており、加算タイミングにて総合ソングチャートに再登場する傾向にあります。今年においても12月10日のフィジカルシングルリリースが大きく影響した形です。

その「クリスマス・イブ」では、ストリーミング指標が今年も加点されるようになりました。これはストリーミング表にも記したように、同曲が一部サブスクサービスにて解禁されていることが背景にあります。一方で山下達郎さんはサブスクを解禁しない姿勢を示しているゆえ、この状況は矛盾といえます。

さらには先週、「クリスマス・イブ」のミュージックビデオがYouTubeで公開されています。12年前のフィジカルシングルに同梱された映像盤の収録映像をYouTubeに掲載したという形ではありますが、歌手側(レコード会社等を含む)がやはりデジタルも大事にしているのではと考えるに十分な動きです。ならば、先述した矛盾を解消するという意味でも、山下さんのすべての作品がサブスク解禁に至ることが望ましいと考えます。

 

 

上記動画の概要欄では、今年における同曲のギネス記録について紹介されています(詳細はこちら)。一方でこの記録が、オリコンによるフィジカルセールスのみのランキングに関するものであることは理解する必要があるでしょう。このオリコンビルボードジャパン、そして『CDTVライブ!ライブ!』(TBS)で放送されるオリジナルランキングといった複合指標から成る3チャートの比較については、今週掲載します。