2020年からポッドキャスト【Billboard Top Hits (通称:ポッドチャート)】を毎週発信しています。ビルボードジャパンがアルバムチャートの発表を木曜に変更したことを踏まえ、ポッドキャストにおいても今年から木曜19時に公開しています(YouTubeでの公開はわずかですが遅れます)。
今回はポッドキャストでも紹介した、最新のビルボードジャパンアルバムチャートについて紹介します。
昨日発表されたビルボードジャパンアルバムチャート(2月12日公開分(集計期間:2月3~9日))では、NiziU『AWAKE』が初登場で首位を獲得しています。
本作は、NiziUの1stミニアルバムで、リードトラックの「YOAKE」や、Mrs. GREEN APPLEの大森元貴が提供し『THE FIRST TAKE』では彼も加えた10人編成でパフォーマンスされた「AlwayS」など、全6曲が収録されている。CDセールス241,757枚、ダウンロード数1,817DLでそれぞれ1位、ストリーミング29位を獲得した。
【ビルボード】NiziU『AWAKE』CDセールス/DLの2冠で堂々の総合アルバム首位 https://t.co/JXSFUWlVmm
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) 2025年2月13日

注目は、当週の総合アルバムチャートトップ10における指標構成です。

(上記CHART insightは総合11位まで掲載していますが、10位および11位については後半で詳しく紹介しています。)
総合アルバムチャートで2~10位にランクインした作品は、ストリーミング指標にて9位までに登場しています。NiziU『AWAKE』はストリーミングが29位と他の作品より高くないものの、フィジカルセールスが突出したことで総合アルバムチャートを制した形です。

ビルボードジャパンは昨年最終週、総合アルバムチャートにストリーミング指標を組み入れるチャートポリシー(集計方法)変更を実施。2月12日公開分の最新チャートは導入後8週目となりますが、この8週分における首位獲得作品からは複数の傾向がみえてきます。
まずは総合アルバムチャートを制した作品において、フィジカルセールスが突出していればデジタル(特にストリーミング)が強くなくとも首位に立つことができるという点。フィジカルセールスで10万台後半を記録すれば、その可能性はさらに高まるといえます。
一方で、ストリーミング指標が高くない作品はフィジカルセールス加算2週目に総合順位が急落します。AKB『なんてったってAKB48』はその最たる例ですが、ストリーミング指標導入以降前週までの7週のうちMrs. GREEN APPLE『ANTENNA』を除く5作品は首位獲得の翌週にトップ10内をキープすることができていません。なおトップ10をキープするためのフィジカルセールスの目安については後述します。
ビルボードジャパンアルバムチャートがストリーミング指標を導入して以降、所有指標(特にフィジカルセールス)の比重が高い作品はチャートでの急落が目立つように。サブスク未解禁ならば尚の事です。#SnowMan のベストアルバムは総合首位初登場後、13→70位と推移しています。https://t.co/7GGEOPymTm
— Kei (ブログ【イマオト】/ポッドキャスト/ラジオ経験者) (@Kei_radio) 2025年2月13日
そして上記のように、サブスク未解禁ならば総合アルバムチャートで不利になるのも重要なポイントです。Snow Man『THE BEST 2020 - 2025』は当週24,119枚を売り上げながら総合では70位に後退した一方、Snow Manよりもフィジカルセールスの少ないZEROBASEONE『PREZENT』(当週20,293枚を記録)は総合46位に。ダウンロードやストリーミングが100位未満ながら当週も加点されていることが、総合での逆転要因です。
当週、フィジカルセールスではFANTASTICS from EXILE TRIBE『Dimensional Bridge』が71,230枚を記録していますが、総合では11位に。ひとつ上にはCreepy Nuts『LEGION』が初登場を果たしていますが、『LEGION』はデジタル先行リリース作品となります。


ふたつの作品のCHART insightにおけるポイント構成比をみると、ダウンロード(紫で表示もさることながらストリーミング(青)の差が際立っています。ダウンロードはCreepy Nuts『LEGION』が1,495DLに対しFANTASTICS from EXILE TRIBE『Dimensional Bridge』が206DL、そしてストリーミングは『LEGION』が9位の一方で『Dimensional Bridge』は300位以内に届かず加点されていません。
『Dimensional Bridge』と似た動向を辿ったのが、すとぷりのベストアルバム。上記エントリーにて紹介していますが、1月15日公開分アルバムチャートにて『Strawberry Prince Forever』はフィジカルセールス93,898を記録し同指標を制した一方でダウンロードは26位、そしてストリーミングは300位未満につき未加点となり、総合では8位につけています。
FANTASTICS from EXILE TRIBE『Dimensional Bridge』、すとぷり『Strawberry Prince Forever』の事例を踏まえれば、総合アルバムチャートで確実にトップ10入りするにはおよそ10万枚のフィジカルセールスが必要だと考えます。この点は、フィジカルセールスが突出し総合チャートを制したアルバムが翌週もトップ10内をキープするためのハードルともいえるでしょう。
10万台後半以上のフィジカルセールスを記録すれば総合首位の可能性が高まるもののストリーミングが高くなければ翌週急落、ゆえにトップ10キープには10万枚程度のフィジカルセールスが必要…チャートポリシー変更後のビルボードジャパンアルバムチャートからはこれらの傾向がみえてきました。そしてMrs. GREEN APPLE『ANTENNA』のようにストリーミングが強ければ総合で上位をキープできるというのも、現在の特長です。

アルバムチャートへのストリーミングの組入は、米ビルボードによる米アルバムチャートが以前から行っています。ストリーミングは米ビルボードによる米およびグローバルのソングチャートにも反映されることから、世界進出を図るならばストリーミングに強くなることは必須だと考えます。サブスクで人気を博すことは簡単ではないものの、しかし目指さない理由はないでしょう。
最後に、海外でも人気が高まっているCreepy Nutsが『LEGION』で採ったリリースタイミングに対し、率直に言うならば違和感を抱いています。この点は最新ポッドキャストで紹介していますが、この理由については後日記載予定です。