イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

サザンオールスターズ『THANK YOU SO MUCH』、ストリーミングの好調から考えること

2020年からポッドキャストBillboard Top Hits (通称:ポッドチャート)】を発信。毎週木曜19時に最新エピソードを公開しています(YouTubeはわずかですが遅れます)。

今回はポッドキャストでも紹介した、最新のビルボードジャパンアルバムチャートについて採り上げます。

 

昨日発表されたビルボードジャパンアルバムチャート(4月2日公開分(集計期間:3月24~30日))では、Mrs. GREEN APPLE『ANTENNA』が6週ぶり、通算4週目となる首位を獲得しています。

ビルボードジャパンアルバムチャートがストリーミング指標を組み入れた昨年最終週以降、Mrs. GREEN APPLE『ANTENNA』は同指標で3週を除き首位に在籍、総合では常時3位以内にランクインを続けています。加えてフィジカルセールスが当週も千枚強を記録しているのは特筆すべきといえるでしょう。

総合2位はtimeleszによる、Sexy Zone時代も含めた初のデジタル解禁作『Hello! We're timelesz』。ストリーミング指標でMrs. GREEN APPLE『ANTENNA』から唯一首位の座を奪取したことのあるこの作品は、フィジカル未発売ながら総合トップ3をキープしています。

 

さて、前週初登場で総合首位を獲得したサザンオールスターズ『THANK YOU SO MUCH』は総合4位に後退したものの、ストリーミング指標が8→5位に上昇していることを興味深く感じています。

サザンオールスターズ『THANK YOU SO MUCH』については前週のエントリーにて紹介した際、初登場時のCHART insightを掲載していますが(アルバムチャートを制したサザンオールスターズ、収録曲の動向からみえてくるものとは(3月28日付)参照)、当週は累積ポイントに占めるストリーミング指標の割合が2割強から3割強に上昇しています。

尤もこれは、当週が初の1週間フル加算となっていることも影響しているでしょう。たとえばビルボードジャパンアルバムチャート、プレイボーイ・カルティ『Music』の上位初登場を考える(3月21日付)で採り上げたプレイボーイ・カルティ『Music』は初の1週間フル加算となった登場2週目にストリーミング33→15位、総合でも38→17位に上昇しています(その翌週となる当週はストリーミング45位、総合50位に後退)。

(総合ソングチャートの構成指標における20位未満の順位は、CHART insight有料会員のみが知り得る情報となります。ビルボードジャパンでは有料会員のみ知り得る情報の掲載を可能としており、今回紹介しています。)

サザンオールスターズ『THANK YOU SO MUCH』については次週の動向を注視する必要があるものの、この作品のストリーミング指標が今後安定するならば日本の音楽業界にとって大きな希望となると考えます。これは決して大げさなことではないはずです。

 

日本レコード協会が先月末に発行したレポートによると、ストリーミングの売上は前年比107%を記録。ただ、前年が114%、2年前が125%だったことを踏まえれば鈍化していることは間違いありません。一方、ビルボードジャパンソングチャートやアルバムチャートはストリーミングのロングヒットが年間チャートに大きな影響を与えますが、ベテラン歌手によるヒットの輩出は稀といえるかもしれません。

その中にあってサザンオールスターズはストリーミングでチェックされ続け、そして伸びています。

(ビルボードジャパンCHART insightの有料会員が確認可能な情報を掲載しています。)

ソングチャートとアルバムチャートを合算したビルボードジャパンのトップアーティストチャート(Artist 100)、直近60週分におけるサザンオールスターズの動向をみると『THANK YOU SO MUCH』の登場前からストリーミング指標(青で表示)が加点され続け、アーカイブの聴取が順調であることが見て取れます。そして直近2週はこのチャートにおいて総合2→10位に後退するも、ストリーミングは27→21位と上昇しています。

 

サブスク聴取は若年層の割合が大きく、この層にサザンオールスターズが浸透してきていることも考えられますが、歌手と年齢の近い中高年層がサブスク聴取を行っている、もしくはニューアルバムのリリースを機にサブスクでチェックするようになったと捉えることもできるでしょう。この世代にデジタルが拡がり、デジタルフレンドリーに成ることでストリーミング全体の成長につながるのではというのが自分の考えです。

接触より所有、デジタルよりフィジカルという声は特に中高年層で多いかもしれず、歌手側においてもベテランほど(声にこそ出さないものの施策にて)みられると感じています。一昨日付のエントリーでは未だデジタル未解禁を続ける竹内まりや『Precious Days』について触れましたが、同じベテラン歌手のサザンオールスターズがデジタルで成功すれば、竹内さんをはじめとする歌手側の姿勢も変わるかもしれません。

 

 

サザンオールスターズのチャート動向については推移を見守る必要がありますが、サザンオールスターズをはじめとするベテラン歌手には是非とも、デジタルフレンドリーの重要性や楽しさを発信することを願います。音楽ファンにはサブスクに対し未だ悪しきイメージを持つ方が少なくない模様ですが、それは一部歌手のマイナス発言の影響もあると考えます。前向きな発言により、その印象を覆していくことを願うばかりです。