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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

日本の音楽番組におけるパフォーマンス映像のYouTube公開について、あらためて考える

noteプロデューサー/ブロガーであり、Yahoo! JAPANニュースにてコラムを寄稿する徳力基彦さんが、興味深いnoteを公開しています。

日本の音楽番組における現時点でのYouTube活用についてまとめられた徳力さんによるnoteを基に、弊ブログでこれまでチェックしてきた内容を記しつつ、日本の音楽番組におけるパフォーマンス映像のYouTube公開について今一度考えます。

 

 

日本の音楽番組におけるYouTube活用、特に歌手側への提供において『CDTVライブ!ライブ!』(TBS)が最も積極的なのは間違いありません。直近ではBE:FIRST「Masterplan」や「Blissful」のパフォーマンス映像が歌手側のチャンネルで公開されていましたが、その大半は期間限定となっています(BE:FIRSTの公開は終了済)。なお、徳力基彦さんのnoteで紹介されたJO1やYOASOBI等、一部楽曲は期間限定をせずに公開されています。

一方で、『CDTVライブ!ライブ!』のパフォーマンス映像が今も残っている歌手に、8LOOM(ブルーム)が挙げられます。同じTBSで放送されたドラマ『君の花になる』(2022)に登場する、高橋文哉さんや宮世琉弥さん等から成るユニットは実際に音源をリリースし、スマッシュヒットも果たしています。ただこちらはTBSの公式YouTubeチャンネル発であり、ビルボードジャパンソングチャートの動画再生指標は加点されません。

 

ビルボードジャパンソングチャートの動画再生指標は、”音楽パートナー”という位置付けであるアカウントから発信された動画にISRC(国際標準レコーディングコード)を付番することで加点対象となります。歌手、レコード会社または音楽芸能事務所のアカウントがその対象になる一方、テレビ局や番組、アニメ制作会社等のチャンネルは対象外となり、歌手としてのチャンネルのない8LOOMは加点対象に至りませんでした。

言い換えれば、音楽パートナーではないYouTubeチャンネルで公開された動画はどんなに人気を博しても、動画自体は音楽チャートに影響しません。他方、NHK側が『虎に翼』オープニング映像長尺版を米津玄師さん側に貸与したことで「さよーならまたいつか!」が歌手側での映像公開に伴いビルボードジャパンソングチャートトップ10内に返り咲いたことは、今後の動画のあり方を考える上で大きな参考になるはずです。

 

そのNHKによる『NHK紅白歌合戦』の映像は、昨年放送の第75回でも全曲が、一部はフルにて公開されながらも早々に削除されています。またNHK MUSICによるアカウントでの公開は、動画がどんなに人気となってもビルボードジャパンソングチャートの動画再生指標では加点対象となりません。実は2023年放送の第74回については一部パフォーマンスが後にNHK側のアカウントでフル版公開に至りながら、現在は削除されています。

(上記のほか、Superfly「タマシイレボリューション」、すとぷり「スキスキ星人」も同時期に公開されていました。)

実は昨年放送分がYouTubeから削除された後、『うたコン』(NHK総合 1月21日放送)や『Venue101』(同 1月25日放送)のみならず、『ミュージックステーション』(テレビ朝日 1月24日放送)でも紅白の映像が使用されています。これを踏まえれば、放送として他局に貸与することは可能と考えていいでしょう。

 

さて、音楽番組パフォーマンス映像の歌手側YouTubeチャンネルでの公開については、かつてはK-POP、そしてSTARTO ENTERTAINMENT(旧ジャニーズ事務所)所属歌手でも行われていました。K-POPについてはYouTubeにて”CDTVライブ!ライブ! K-POP”で検索すると多くの動画が現在もアップされていることが解るのですが(検索結果はこちら)、しかしこの2年以上はK-POP歌手による公開が行われていない模様です。

そしてSTARTO ENTERTAINMENT所属歌手については、一昨年4月の『CDTVライブ!ライブ!』を機に音楽番組パフォーマンス映像の歌手側でのYouTube公開が始まり、一時期は他局の番組でも行われていましたが、こちらも最近は公開がみられません。K-POPは日本でのジャンルの定着、STARTO ENTERTAINMENTにおいてはストリーミング未解禁を補うことが目的のひとつとみていますが、公開を辞めた理由は厳密には解りかねます。

また『ミュージックステーション』では番組側の公式YouTubeチャンネルにて、LDH所属歌手のパフォーマンス映像が公開されていましたが、こちらもGENERATIONS from EXILE TRIBE「Diamonds」(2023年10月20日放送分)が最後となっています。

ただ、上記動画は放送の3日後に公開されています。たとえば先述したBE:FIRSTについては放送から少なくとも1週間以上経過した後の公開であり、TVerでの見逃し配信と被らないようにするという措置が行われたものと想起可能です。『ミュージックステーション』は現在もTVer配信を行っていないゆえに迅速な公開ができたといえる一方、見逃し配信が未だ実施されない状況には疑問を抱きます。

 

 

現状において、地上波音楽番組のパフォーマンス映像を歌手側の公式YouTubeチャンネルで公開するという状況は、残念ながら後退しているというのが厳しくも私見です。その中にあってBE:FIRSTのみならず、Mrs. GREEN APPLEが現在も歌手側でのテレビパフォーマンス映像配信を徹底しており、たとえば『ベストアーティスト2024』(日本テレビ 2024年11月30日放送)で披露された「ビターバカンス」は明日まで公開されています。

BE:FIRSTは基本的にフィジカルリリース週の月曜にデジタル配信を開始、またMrs. GREEN APPLEは新曲においてコンテンツカレンダーをきちんと用意し、いずれも音楽チャートにおける初動の最大化に努めています。チャートをきちんと意識していることが、積極的なテレビパフォーマンス映像の歌手側での公開に表れていると捉えていいでしょう。

この音楽チャートへの積極的な姿勢は、海外の歌手が強く持ち合わせています。アルバムのデラックスエディションやシングルのリミックス等をいつリリースするかについて、日々の数字をみながら柔軟に決めていることは米ビルボードアルバムおよびソングチャートを追いかけるとよく解ります。またテレビや音楽賞、そして時にはオリンピックのパフォーマンス映像も歌手側で公開し、音楽チャートに寄与しています。

近年、日本の音楽業界からは日本の作品を世界でヒットさせんとする意志を強く感じます。新設されるMUSIC AWARDS JAPANが”国際”音楽賞と謳うのも、その意志の反映でしょう。ならば音楽番組等でのパフォーマンス映像の積極的な貸与もさることながら、そもそもそれをスムーズに行うにはどうするかを考えなければなりません。貸与金額を安価にすることも含め、権利関係を如何にクリアにしていくかが重要だと考えます。

 

 

興味深いのは、芸能音楽事務所クラウドナインに所属する歌手が大挙出演した『クラウドナイン5周年特別番組「雨音」』(フジテレビ 2024年10月16日放送)の本編映像が、クラウドナイン側の公式YouTubeチャンネルで公開されていること。披露曲すべてのISRCを付番できるかは解りかねますが、おそらく制作にも関与していることで配信の権利を得ているものと思われます。

直近ではSTARTO ENTERTAINMENTのジュニアとして活動する7 MEN 侍が、『7 MEN 侍 ○○やります!』(MUSIC ON! TV (エムオン!) 2024年5月26日放送)で披露した「Chaos Killer」を先週ジュニアの公式YouTubeチャンネルで公開しています。放送終了から半年以上経過しているものの、このようなアーカイブ化はともすれば制作側にSTARTO ENTERTAINMENT側が関わっているだろうことが影響しているかもしれません。

 

仮に上記2つの映像の元となる番組が、芸能事務所が制作に関与していることでYouTube公開が可能になったと考えれば、今後そのような番組が増えていくことが理想かもしれませんが、しかし最善は地上波ゴールデンやプライム帯の音楽番組、また紅白をはじめとする音楽特番が速やかに貸与できる体制を築くことでしょう。

【歌手側のYouTubeチャンネルで公開する】【安価で提供する】【公開期間を限定しない】【TVer見逃し配信終了を待たずに公開する】といったことが重要であり、そのために【権利関係をクリアにする】ことが日本のテレビメディアには求められます。それが日本の音楽を国内のみならず世界に拡げるための一助になるはずです。