イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

テレビの音楽番組"百花繚乱"時代に向けて、改善の願いを記す

日本のテレビ局で音楽番組が増加、拡大しています。

日本テレビ有働由美子さん、松下洸平さんがMCを務める『with MUSIC』を土曜20時台にスタート、またTBSの『CDTVライブ!ライブ!』は今月から放送時間を月曜19時からの2時間枠に拡大します。加えて音楽バラエティというジャンルながら、フジテレビで『ミュージックジェネレーション』が木曜19時枠でレギュラー放送することが決定しています。

このタイミングで、日本のテレビ局が主にゴールデンタイムに放送する音楽番組への、個人的な願いを記します。音楽チャートを日々追いかけている者としての見方です。

 

<日本のテレビ局における音楽番組への願い>

 

パフォーマンス映像のYouTubeでの公開

昨年4月以降旧ジャニーズ事務所所属歌手のパフォーマンス映像が、基本的にTVerでの配信後に各歌手側の公式YouTubeチャンネルにてフルで公開されるようになりました。ただ、期間限定であるのみならず、旧ジャニーズ事務所所属歌手以外にはほぼ見当たらないことから、YouTubeでの公開を期間を限定せず、またすべての歌手に拡げることが必要です。

K-POP歌手によるテレビパフォーマンス映像が(現在は縮小傾向にあるものの)歌手側のホームページに掲載されていることが少なくありませんでしたが、LINE MUSIC再生キャンペーン採用と同様に日本でのK-POP浸透を図るという意味で徹底されていた可能性があります。それを踏まえれば、日本の歌手によるテレビパフォーマンス映像をYouTubeに解禁することは、世界への浸透の可能性を高めることにもつながるでしょう。

日本ではNHKが、テレビパフォーマンス映像を早い段階でNHK MUSICの公式YouTubeチャンネルにアップする傾向にありますが、ほぼ短尺動画であり、エンベッド(ブログ貼り付けなど)の使い勝手が悪く、またTVerより浸透度の低いNHKプラスの配信への誘導が主目的とみられます。NHK側が民放に見本をみせる形でテレビパフォーマンス映像の使用権と歌手側と整備し、期間を限定しない形でアップすることが必要と考えます。

 


過去曲等を主体とする企画枠の見直し

CDTVライブ!ライブ!』、また老舗音楽番組の『ミュージックステーション』(テレビ朝日 金曜21時)において、最近は企画関連の枠が大きい状況が目立ちます。

音楽番組自体のリアルタイム視聴率が高くはない一方でSNSの熱量が高く、またXでトレンド入りする機会の多いことが、テレビ局側が音楽番組が増やした要因と考えられます。ただし、企画(過去曲やベテラン歌手等の紹介時間を増やす)の多さは、結果的に若年層を主体とするリアルタイム視聴率を下げさせかねないのではと危惧します。次に挙げる理由も含め、今のヒット曲をきちんと紹介することを願います。

 


ブレイクが期待される歌手の積極的な起用

ビルボードジャパンソングチャートを追いかける者として、ブレイク段階にあっても、もしくは既に上位進出を果たした歌手であっても、テレビでのパフォーマンスが少ないことを痛感しています。最近では「鬼ノ宴」がトップ20入りを果たした友成空さんや、「全方向美少女」がTikTok等で話題となった乃紫さんについて、地上波テレビ局の音楽番組では見かけていないと記憶しています。

過去にヒット曲を輩出した歌手やバラエティ的な企画に長尺を与えることがすべて悪いというわけではありませんが、ならば今まさにヒットしている歌手の作品についても同様に取り上げる必要があるでしょう。それが10代や20代といった若年層の視聴率獲得や信頼の構築につながるものと考えます。これは『NHK紅白歌合戦』(NHK総合ほか)でも申し上げた提案です。

 


ビルボールジャパンソングチャートの紹介

ビルボードジャパンソングチャートが2010年代後半以降に社会的ヒットの鑑に成ったことは、このブログで幾度となく紹介しています。しかし現在でもオリコンを判断基準とするメディアや、ビルボールジャパン以外のチャートでの"1位"という称号を、たとえその1位がソングチャート構成指標のデータ提供元のひとつという単位であっても紹介するメディアが多いと感じています。"◯冠"という表現はその集合体といえるでしょう。

日本の音楽番組、そしてメディア全体が、2010年代後半以降のソングチャートにおいてはビルボールジャパン一点に紹介元を絞る、そしてチャート自体を毎週紹介することに注力することを願います。

(ただし今の日本のテレビ局の流れとして、同じ番組を毎週きちんと放送することはないように思います。ならばラジオやYouTubeといった媒体でビルボードジャパンとタッグを組み、音楽チャートをきちんと紹介することに努めることも必要です。このブログではビルボードジャパンのチャートを紹介する番組が必要だと、以前提案しています。)

 

 

ワイプや曲紹介テロップ等、過剰といえる演出の見直し

主に過去曲を紹介する企画において、スタジオにいる出演歌手がワイプで抜かれるという事態が目立ちます。これは日本のバラエティ番組全体の傾向であり、ワイプで抜かれた歌手のコアファンにとっては嬉しいことかもしれませんが、流れている映像自体への集中力が削がれかねないと懸念します。

またテレビパフォーマンスの最中、曲名と歌手名に並んで一言解説のような文言がみられますが、これもノイズに成りかねないのではないでょうか。おそらくは披露曲の理解度やインパクトを高めるべく、そしてチャンネルの変更(ザッピング)を防ぐためと思われますが、ともすればそれら演出は企画やテレビパフォーマンス(する歌手)を信じていないゆえの挿入と捉えられてもおかしくないと考えます。

テレビパフォーマンス映像がYouTubeで公開される際、その大半はテロップが消えています(上記動画は2022年11月7日放送の『CDTVライブ!ライブ!』にてYOASOBIが披露した「祝福」のパフォーマンス映像)。YouTube化におけるテロップ除去等は、演出が過度であることをテレビ局側が自認していることの証明かもしれません。YouTube化の際にテロップを剥ぐひと手間をなくすためにも、過度な演出は避けていいはずです。

 

 

主に旧ジャニーズ事務所における、現所属者と旧所属者の共演

この点は既に、noteプロデューサー/ブロガーの徳力基彦さんが自身のnoteにて述べています。4月1日放送の『CDTVライブ!ライブ!』では同じ画面に登場することはなかったものの、かつてKing & Princeのメンバーであった3名によるNumber_i(現在はTOBE所属)とTravis Japanによるエールの交換のような場がみられました。

そして、今週金曜の『ミュージックステーション』ではNumber_iが初登場するのみならず、WEST.および20th Centuryといった(Number_iのメンバーがかつて所属していた)旧ジャニーズ事務所の現所属歌手とも共演します。『ミュージックステーション』は基本的に出演歌手の待機場がいわゆるひな壇であることから、同じ画面にNumber_iとWEST.や20th Centuryが登場する可能性は高いでしょう。

ジャニーズ事務所に現在所属している歌手がほぼ毎週登場する『ミュージックステーション』は昨年のBE:FIRST起用を機に変わってきたと捉えています。他の芸能事務所所属でライバルと形容可能な歌手は出演できるようになってきた中にあって(それでもDa-iCEは未だ登場していないのですが)、しかし新旧ジャニーズ事務所所属歌手の共演は未だ厳しいといえる状況でした。これがNumber_iの出演を機に変わると感じています。

契機と成ったのが旧ジャニーズ事務所創業者による性加害事件の社会問題化であることは間違いありませんが、SKY-HIさんが旧態依然のエンタテインメント業界に風穴を開けてきたこと、ビルボードジャパンソングチャートが客観的姿勢を続けることで信頼度と影響力を高めたことも大きいでしょう。またTravis Japanがデジタル配信等をデビュー時から行い、事務所内の慣例をいい意味で破ってきたことも大きいかもしれません。

 

この柵(しがらみ)の完全な解消にはテレビ局をはじめエンタテインメント業界全体の意識改革が必要ですが、視聴者(受け手)である私たち一人一人が自問自答することもまた必須でしょう。私たちはこれまでの常識に慣らされてはいなかったか、そして常識としてきた不条理を(それとわかっていながら)ないものとして振る舞ってはいなかったか...それを精査することで、今後表れる不条理にも適切に声を上げることができるはずです。

 

 

 

以上6点、日本のテレビ局における音楽番組への願いを紹介しました。この中が一つずつ、すべて叶っていくことを願い、注視していきます。