イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

NHKも民放も改善は必須…テレビパフォーマンス映像のYouTube公開における理想の4条件を今一度記す

日本テレビが春から、ゴールデンタイムに音楽番組を投入します。

土曜日の19:56から放送される「with MUSIC」は「世界を視野に入れ、グローバルな価値・視点を持つ、令和の時代ならではの本格的な音楽番組」として始動する番組。音楽ライブだけに留まらず、アーティストや楽曲の魅力を深掘りし、世界へ向けてジャパニーズポップスの魅力を発信していくという。

現在は『ミュージックステーション』(テレビ朝日 金曜21時)、『CDTVライブ!ライブ!』(TBS 月曜20時)があり、『with MUSIC』が続く形。先行2番組が毎週放送されない状況に個人的には違和感を抱いており(『ミュージックステーション』は今年における通常編成初回が2月9日ゆえ尚の事)、新たな番組には毎週放送されること等を願います。そしてさらなる願いが。

以前からこのブログで記している希望を、今一度強く表明します。これは昨年放送の『NHK紅白歌合戦』(NHK総合ほか 以下"紅白"と表記)に関連したポストに対して記した内容ともリンクします。『』内で表示した4つの条件こそ、今のエンタテインメント業界におけるテレビパフォーマンス映像のアップにおいて不足しているものであり、改善することでJ-POPがグローバルに轟く可能性は高まるはずです。

 

上記のランキングでは紅白映像のNHK MUSICというNHKの公式YouTubeチャンネル発の動画が再生回数上位に4作品登場したことが解ります。これらは昨年の紅白の曲毎におけるパフォーマンス映像であり、ディズニー企画以外はすべて用意されたと記憶しています。YOASOBI「アイドル」の人気が際立ちますが、これらYouTubeの動画はその大半が1分程度のダイジェストであり、そしてほとんどの動画は今週削除されています。

現時点でYouTube映像は3つを除きすべて削除されましたが、元来これら動画は見逃した方に対しNHKプラスでの配信を確認することを促すことが主目的であり、ゆえに短尺版で用意されたと捉えていいはずです。その短尺版でもこれだけ再生されているのですから、見逃し配信以外にもテレビパフォーマンス映像へのニーズがあることが証明されたいえるでしょう。

 

今回の紅白では前回(2022年放送回)に続き、SNSそしてYouTubeでの施策徹底が採られました。今回の紅白についても日々動向を調査した徒然研究室さんによるnoteからは、紅白側の試みが今回はさらに大きく浸透していることが見て取れます(曲別の再生回数も掲載)。リアルタイム視聴率が最低を更新したことばかりを強調し非難するメディアや一部市井の考え方は正しくないといえるでしょう。

 

一方で昨年の紅白を、"失敗"という表現をタイトルに据えてコラム化したのがnoteプロデューサー/ブロガーの徳力基彦さん。この表現は強いのではないかと思いつつ、数値の面をどう捉えるか、そしてNHK独自の見逃し配信システム(NHKプラス)の問題を冷静に見極める意味でもうひとつの重要な寄稿といえるでしょう。

そして後半の指摘に注目です。

この問題についてはNHKだけではなく、TVerを用いて配信している民放各局においても共通する、いわば日本特有の問題です。そしてこの問題は、冒頭でのポストによる指摘につながります。

 

徳力さんのコラムでも紹介されたNewJeansのように、K-POP歌手のテレビパフォーマンス映像は歌手側の公式YouTubeチャンネルにて公開することは少なくありません(NewJeansがアメリカで昨年大晦日にテレビ出演した際の映像もアップされています)。またYouTubeで"Grammy Performance"にて検索すると(→こちら)、歌手側のチャンネルにてパフォーマンス映像が公開されていることが解ります。

さらに歌手側の公式YouTubeチャンネルにてアップされずとも、テレビ番組や音楽賞でのパフォーマンス映像がそのテレビ番組等の公式チャンネルにてアップされることも多い状況です。たとえば昨年のスーパーボウルハーフタイムショーにおけるリアーナのパフォーマンス映像はNFLの公式YouTubeチャンネルにて公開されています。

(ただし、リアーナのパフォーマンス映像はブログにて通常の貼付ができないほか、ブログに埋め込んで表示可能としたところで上記のように表示されます。このような不便さはNHK側の公式YouTubeチャンネル発の動画においても共通しており、その点は後述します。)

 

テレビ番組や音楽賞のパフォーマンス映像を歌手側の公式YouTubeチャンネルにて公開するという流れはメディア側と歌手側、すなわちエンタテインメント業界全体での団結の表れといえるでしょう。他方、日本ではその流れが未だ強くありません。YOASOBI「勇者」の『CDTVライブ!ライブ!』におけるパフォーマンス映像は歌手側のYouTubeチャンネルにて公開されていますが、これは貴重且つ異例の事態です。

そんな中、昨年4月初めの『CDTVライブ!ライブ!』を皮切りに、旧ジャニーズ事務所所属歌手のテレビパフォーマンス映像が歌手側の公式YouTubeチャンネルにて公開されることが一般化しています。この流れはTBSや日本テレビ、最近ではフジテレビでも採られています。

この動画公開はビルボードジャパンソングチャートの動画再生指標にも波及しているのですが、しかしながら先程の4つの条件のうち3つは叶っていません。『TVerでの見逃し配信終了前後以降に』『旧ジャニーズ事務所所属歌手にほぼ限って』『期間限定にて』公開されていることが9ヶ月以上経った現在も続いています。

これは民放各局と旧ジャニーズ事務所側とでのやり取り(契約ともいえるでしょう)の結果ゆえと思われます。しかし旧ジャニーズ事務所においては(社名変更前の)初代社長による性加害問題の解決は勿論のこと、過度な厚遇の解消もまた必須のはずです。YouTubeでのテレビパフォーマンス映像の発信がほぼみられないことも含め、過度な厚遇に当たると捉えられてもおかしくないと考えます。

(しかも、この問題を疑問視しテレビ局や旧ジャニーズ事務所側を取材するメディアを目にしたことがありません。テレビで流れた映像からテロップを取って公開している段階で、メディアがYouTube用に加工する等の対応を行っているだろうゆえ、尚の事です。)

 

紅白側のYouTube公開という試み(星野源「生命体」やSuperfly「タマシイレボリューション」のパフォーマンス映像は後日、フルにて別途公開されました)は評価できますが、『放送直後から』の条件はクリアしたとして『歌手側の公式YouTubeチャンネルで』『期間限定せずに』『フルで』という点は未達。加えて、NHK側の公式YouTubeチャンネルの映像は、はてなブログでは通常の動画のように貼付することができません。

それでいてNHK関連の映像がビルボードジャパンソングチャートの動画再生指標でカウントされないという問題も散見されます。これは動画カウント対象となるISRC(国際標準レコーディングコード)が付番されていないためで、Foorin「パプリカ」や嵐「カイト」もカウントされていなかったと断言可能です。下記リンク先ではこれら2曲について、CHART insight共々掲載しています。

以前からその可能性を指摘していながら問題が放置されているとなると、NHK側がISRCに対する知識や意識を強く持ち合わせていないのではないかと捉えてしまいます。多くの方に支持される動画がチャートアクションに影響しないのは至極勿体ないことであり、その楽曲における損失とすら言えるでしょう。

先述したように旧ジャニーズ事務所所属歌手によるテレビパフォーマンス映像は歌手側の公式YouTubeチャンネルにて公開されるためISRCの付番問題はクリアされているものの、冒頭で述べた4つの条件のほとんどはクリアしていません。つまりは今回紹介した日本のテレビ局となる動画において、完璧なものは存在しないと言っても過言ではないのです。

 

 

紅白のパフォーマンス映像が短尺版ながらYouTubeで人気となったのならば、フルで公開すれば話題性はさらに高まったことでしょう。NHKに公共放送ゆえのジレンマがあるだろうことは徳力基彦さんのコラムから解りますが、民放が行うような過度な厚遇等を公共放送側は行う必要がないわけで、すべての歌手のパフォーマンス映像を実験的にフル公開することに対する問題はなかったはずです。理想論は承知ながら記します。

仮にNHK側が昨年の紅白でのパフォーマンス映像をYouTubeにてフル公開し、再生回数が増えたならばNHKプラスへのアクセス数も増え、またプラットフォームの見直し議論も高まったものと考えます。そうすれば次回の紅白にて、テレビパフォーマンス映像を『放送直後から』『歌手側の公式YouTubeチャンネルで』『期間限定せずに』『フルで』という理想の4条件を前提にYouTubeで公開することができたかもしれません。

徳力さんのコラムにあるように、今の日本のテレビメディアにおけるパフォーマンス映像のあり方が海外歌手を中心とした日本のテレビ出演離れを招く可能性は十分考えられるでしょう。日本テレビが新番組『with MUSIC』にてグローバルというコンセプトを打ち出したならば、そこに対し率先してメスを入れる必要があるはずです。著作権法等の今の時代へのブラッシュアップも含め、改善は必須です。