米津玄師さんの公式YouTubeチャンネルにて、昨年の『NHK紅白歌合戦』(NHK総合ほか 以下"紅白"と表記)で披露された「IRIS OUT」、そして一昨年の紅白での「さよーならまたいつか!」のパフォーマンス映像が、本日公開されました。
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— REISSUE RECORDS (@reissuerecords) 2026年1月9日
米津玄師「IRIS OUT」
第76回 NHK紅白歌合戦
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劇場版『チェンソーマン レゼ篇』主題歌「IRIS OUT」
「第76回 NHK 紅白歌合戦」で披露させて頂いたパフォーマンスを公開!
スペシャルゲストに、HANAの皆様に参加頂きました
米津玄師 - IRIS… pic.twitter.com/H48m4cM2Wd
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— REISSUE RECORDS (@reissuerecords) 2026年1月9日
米津玄師「さよーならまたいつか!」
第75回 NHK紅白歌合戦
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NHK連続テレビ小説「虎に翼」主題歌 「さよーならまたいつか!」
「第75回NHK紅白歌合戦」にて披露させて頂いたパフォーマンスを公開!… pic.twitter.com/71uRQLygU8
さらには"『チェンソーマン レゼ篇』スペシャル花火 ― IRIS OUT / JANE DOE ―"の動画(→こちら)も公開されましたが、これら動画の公開は大きな意味を持つと捉えています。
元来、紅白パフォーマンス動画はNHK MUSICの公式YouTubeチャンネルで公開されていたもの。YouTubeが昨年実装したコラボレーション投稿機能に伴い、昨年の紅白における「IRIS OUT」の映像はNHK MUSICと米津玄師さん側双方のチャンネルにて公開されるという形が採られていました。しかしNHKは一定期間終了後に動画を削除することが一般的であり、紅白映像もまた然りでした。
本日公開された紅白パフォーマンス映像は、米津玄師さん側の公式YouTubeチャンネル単独にて投稿され、さらにはコメント欄も解放されています。おそらくは米津さん側がNHK側から映像(権利)を購入し、公開に至ったのかもしれません。
(なお、YouTubeのコラボレーション投稿機能についてはYouTubeコラボレーション投稿機能が持つ可能性と、そこから浮かぶビルボードジャパン歌手別チャートへの疑問(2025年10月11日付)にて紹介しています。)
さて今回のYouTube再公開、且つ米津玄師さん側の公式YouTubeチャンネルのみでの公開は、音楽チャート面で大きな意味を持ちます。
YouTubeでの動画再生は、ビルボードジャパンソングチャートにて動画再生指標の加算対象となります(オーディオストリーミングとして接触した場合はストリーミング指標に加算)。動画再生指標はISRC(国際標準レコーディングコード)が付番された動画がカウント対象となるのですが、このコードを付番できるのはYouTubeにおける"音楽パートナー"と位置付けられたチャンネルに限られます(下記エントリー参照)。
その音楽パートナーは歌手やレコード会社、また歌手を擁する芸能事務所の公式YouTubeチャンネルが該当する一方、テレビ局や番組、またアニメ制作会社等のチャンネルは対象外となります。ゆえにNHK MUSICでの公開動画はISRCが付番できないものとみられます(コラボレーション投稿の場合でもメインで公開した側が音楽パートナーか否かでISRC付番可否が決まるものと考えられます)。
そのため、今回のYouTube再公開に伴い、米津玄師「IRIS OUT」および「さよーならまたいつか!」の再生分は(ISRCが付番されていれば)ビルボードジャパンソングチャートの動画再生指標に加算されるということになるのです。
【先ヨミ・デジタル】米津玄師「IRIS OUT」引き続きストリーミング首位走行中 https://t.co/VR0SjDPB5X
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) 2026年1月9日
今回再公開された動画は、1月11日までを集計期間とする1月14日公開分のビルボードジャパンソングチャートにて初めて加算されます。その1月14日公開分チャートにおいて、ストリーミング指標の基となるStreamimg Songsチャートの速報値では米津玄師「IRIS OUT」がトップを独走していますが、その記事(上記ポスト内リンク先参照)では『再生回数も昨年末の微減傾向からV字回復』と紹介されています。
紅白パフォーマンス映像が再公開されたこと、さらに動画の概要欄には各サブスクサービスへのリンクが掲載されていることも相まって、「IRIS OUT」はストリーミングをより強固なものにしていくのではないでしょうか。
さらに、今回の動画公開はグローバルチャートにも大きな影響を与えると考えます。
米ビルボードによるグローバルチャートは、世界200以上の国や地域での主要デジタルプラットフォームにおけるストリーミング(動画再生含む)およびダウンロードの2指標で構成されるGlobal 200と、そのGlobal 200から米の分を除いたGlobal Excl. U.S.の2種類が存在しますが、Global Excl. U.S.は11位以下の公開を限定していることからGlobal 200でのランクインがより重要に成ると捉えていいでしょう。

そのGlobal 200では、米津玄師「IRIS OUT」が日本の楽曲で過去最高となる5位を記録(なおGlobal Excl. U.S.での最高は2位)。一方でその後は順位を落としていましたが、クリスマス関連曲の後退に伴い最新1月10日付(集計期間:2025年12月26日~2026年1月1日)では再浮上しています。
2026年1月10日付 #Global200 における日本の楽曲の動向。
— Kei (ブログ【イマオト】/ポッドキャスト/ラジオ『imaoto on the Radio』) (@Kei_radio) 2026年1月6日
(集計期間:2025年12月26日~2026年1月1日)https://t.co/SdjUqOxjX2
89→31位 #米津玄師「IRIS OUT」
もっといえば、長らく下落傾向にあった「IRIS OUT」は、(これは日本のチャートでも同様ですが)"レゼダンス"の発信に伴い下落傾向が止まっていました。そのタイミングから程なくして紅白でのパフォーマンス、そして今回の動画再公開という状況が今後に寄与するものとみられます。
そのグローバルチャートについては上記で紹介していますが、日本が月曜集計開始なのに対し、海外のチャートは金曜が集計期間初日となります。グローバルチャートも同様であり、つまり今回の動画は1月24日付グローバルチャート(集計期間:1月9~15日)にて公開日からの1週間分がほぼフルにて加算されることになるのです。1月は強力な新曲が少ないこともあり、「IRIS OUT」が上昇する可能性は高いといえるでしょう。
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— REISSUE RECORDS (@reissuerecords) 2026年1月9日
Kenshi Yonezu - IRIS OUT
Performance
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Kenshi Yonezu delivers the first-ever live performance of "IRIS OUT" at the 76th NHK Kouhaku Uta Gassen💥
The theme song for CHAINSAW MAN – THE MOVIE: REZE ARC comes to life on Japan’s biggest… pic.twitter.com/kDwUmXAT4I
ちなみに、米津玄師「IRIS OUT」については所属レーベル側がこのような発信を行っており、グローバルチャートに向けた施策であるとも捉えていいのかもしれません。また今回の動画公開については先述した音楽ナタリー等様々なメディアが記事にしていますが、これは米津玄師さん側がプレスリリースを用意したことの結果であると捉えています。この考えは下記エントリーに基づくものです。
米津玄師「IRIS OUT」の音楽チャート動向に注目する一方、気になるのはNHKの姿勢です。NHKは紅白の映像を1週間程度で削除しており、また昨年のパフォーマンス映像についてはそのほとんどが短尺版での公開でした。
よくよく考えれば、今回の米津玄師さんによる動画公開は見逃し配信の終了を待たないといけなかったのではとも感じています。たとえば『CDTVライブ!ライブ!』(TBS)のパフォーマンス映像が歌手側の公式YouTubeチャンネルで公開される場合も、TVerでの見逃し配信終了後となっているのが一般的です。しかしながらNHKにおいては、民放よりも縛りと呼べるものが強いのではと疑問視しています。

上記は昨年のNHK大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』による公式Instagramアカウントでの投稿ですが(リンクはこちら)、『NHKのインターネットサービスの見直しのため (中略) 公式コンテンツは例年より早めに公開を終了します』と記載されています。
(キャプチャした投稿も削除される可能性があり、今回勝手ながら掲載させていただいた次第です(問題があれば削除いたします)。)
NHKは新サービス"NHK ONE"を昨秋立ち上げていますが、開始については先述した見直しが背景にあるものと捉えています。そしてその経緯については以前記しました。
最後に。紅白に対する旧態依然との声がメディアやその関係者から散見されます。しかしそのような発し手から、”こうすればより好くなる”という改善提案はほぼみられません。ゆえに非難だけで止めるのは好ましくないというのが私見です。
また紅白は他の番組よりもYouTubeに積極的です。しかしNHK ONEの開始等からみられるように、他メディアからの過度な反発(および背景にある自己保身)に伴い、NHKは発信に関して制限せざるを得ない状況に陥っているものと捉えています。
日本新聞協会の問題については、NHK ONE立ち上げ直後につぶやきました。その際、『保身に走る前に新聞協会こそ前向きに変わるべき』と記しています。https://t.co/NPnoa92fVS
— Kei (ブログ【イマオト】/ポッドキャスト/ラジオ『imaoto on the Radio』) (@Kei_radio) 2025年10月27日
圧力ばかりをかける一方で自らは省みず、変わるつもりのない組織は無くなってもおかしくないでしょう。 https://t.co/etnONktpmc
日本の音楽業界はグローバル化を目指していますが、その際YouTubeの活用は欠かせません。そのYouTube等ネット活用の足枷になるようなメディアこそ、省みる必要があるはずです。
テレビパフォーマンス映像の歌手側YouTubeチャンネルによる公開時の最善は、期間限定せず、また見逃し配信の終了を待つことなくフルバージョンで実施すること、そしてメディアが安価にて歌手側に提供することではと考えます。その際、昨秋始まったコラボレーション投稿機能は大きく役立つかもしれません。しかしメディアは未だ消極的であり、ましてやNHKは以前よりもフレキシブルな対応ができないようになっています。
今回の米津玄師「IRIS OUT」「さよーならまたいつか!」紅白パフォーマンス映像の公開は勿論歓迎すべきことですが、今回の"再公開"に至る前の状況を調べ、問題があればそれを指摘することが重要です。音楽のみならず日本のエンタテインメントコンテンツを世界に発信するにはYouTubeが欠かせないため、その流れをせき止める存在はあってはなりません。ましてやその背景に"保身"が存在するのはもってのほか、でしょう。