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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

ビルボードジャパンアルバムチャート、リニューアルに伴いフィジカルに強い作品はどうなったか

ビルボードジャパンは2024年12月最終週より、アルバムチャートにストリーミング指標を導入しています(このチャートポリシー(集計方法)変更により公開日が木曜に移行)。これによりサブスクで聴かれ続けている作品が上位で安定する、『NHK紅白歌合戦』等のイベントが反映される、また季節を彩る曲を収録した作品が上位に進出しやすくなったことについて、これまでのエントリーで紹介しています。

それまでのアルバムチャートは、(ルックアップ指標の廃止以降)フィジカルセールスおよびダウンロードの所有2指標で構成。ダウンロード数が全体的に減少していることもあり尚の事、フィジカルセールスに強い作品が瞬発的に首位に立ち、それが繰り返されてきたといえます。特にアイドルやダンスボーカルグループが強かったのですが、チャートポリシー変更後の動向は興味深いものがあります。

 

 

チャートポリシー変更初回となる2024年12月26日公開分のビルボードジャパンアルバムチャートでは、49万枚以上のフィジカルセールスを記録した&TEAM『雪明かり (Yukiakari)』が初登場で総合首位に立っています。

&TEAM『雪明かり (Yukiakari)』はダウンロードで2位を記録した一方、ストリーミングは56位と高くはありませんでした。その後は順位面でフィジカルセールスが比較的安定(491,677→6,746→3,002枚と推移)、またストリーミングは順位面で大きく下がっているわけではないのですが、総合では1→42→65位と下がっています。

 

デジタル先行でリリースされたNCT WISH『WISHFUL』は、フィジカルセールス初加算時となる1月2日公開分にて総合4位に再浮上。その前週よりストリーミングが加点されているものの、同指標は100位以内に登場できていません。フィジカルセールス初加算時にはダウンロードの加点も復活していますが継続には至らず、翌週は総合100位未満に急落しています。フィジカルセールスは105,027→4,707枚と推移しています。

 

そのNCT WISH『WISHFUL』を抑えて1月2日公開分ビルボードジャパンアルバムチャートを制したAKB48『なんてったってAKB48』は、ストリーミング指標が一度も300位以内に入らず加点されていません。フィジカルセールスが190,999→2,046枚と推移した当週、総合チャートでも100位未満に急落しています。

 

 

わずか3週分の動向ではありますが、ビルボードジャパンアルバムチャートにおいてはふたつの動向がみえてきます。ひとつは【フィジカルセールスが10万枚を大きく上回れば、ストリーミングが強くない作品でも瞬発的に首位を獲得する可能性は今後も高い】ということ。もうひとつは【フィジカルセールスが1万枚未満の場合はデジタル、特にストリーミングが強くなければ総合100位未満となる可能性がある】ということです。

2025年1月9日公開(集期間:2024年12月30日~2025年1月5日)の総合アルバム・チャート“Hot Albums”で、Mrs. GREEN APPLEの『ANTENNA』が総合首位を獲得した。

(中略)

CDセールス3,328枚で前週比137%、ダウンロード数717DLで前週比202%と増加した。

最新1月9日公開分アルバムチャートはMrs. GREEN APPLE『ANTENNA』が登場79週目にして初制覇を果たしています。昨年末の地上波長時間音楽特番に最多出演したことや2年連続のレコード大賞受賞等が歌手全体の勢いを押し上げ、このチャートにも反映されています。一方、最新週においてフィジカルセールス1万超えを果たした作品はありません。

当週は原因は自分にある。『テトラヘドロン』がフィジカルセールス9,715枚を記録しこの指標を制していますが、ダウンロードやストリーミング指標が加点されなかったため総合100位以内に復活することはできませんでした。この作品動向からも、今後はストリーミング指標が上位で安定する、聴かれ続けることの重要性が理解できるはずです。

 

さて、原因は自分にある。『テトラヘドロン』は昨年12月11日公開分アルバムチャートでフィジカルセールス56,576枚を記録し、総合4位に初登場。2週前に一度300位未満になったフィジカルセールスが、直近2週で再浮上した形です。アルバムチャートにおいては、主にリリース後のフィジカル施策に伴いフィジカルセールスが再浮上し総合でも上昇するという事例が、昨年末まで目立っていました(下記エントリー等参照)。

ともすれば今後、リリース後のフィジカル施策が総合チャートに寄与する可能性は低くなったといえます。その点においても、聴かれ続けるためにどうするかを歌手側は考えなければならないでしょう。

 

 

最後に、気になる動きがみられたので紹介します。

AKB48は、『なんてったってAKB48』がアルバムチャート首位初登場を果たす直前の昨年12月26日公開分におけるビルボードジャパントップアーティストチャート(同年12月25日公開分ソングチャートと12月26日公開分アルバムチャートの合算)にて、構成6指標すべてが300位未満となっていました。

上記は1月9日公開分トップアーティストチャートにおけるAKB48のCHART insightですが、カラオケ指標においてもこの2ヶ月間で昨年12月26日公開分のみ300位未満となり加点されていません。同週300位以内に唯一入ったのはUGC(ユーザー生成コンテンツ)ですが、こちらはソングチャートの構成指標に含まれていません。

AKB48は長きに渡りフィジカルセールスで強さを発揮してきました。シングルではミリオンセールスが途絶えているものの、リリース後のフィジカル施策も相まってセールス指標は今でも存在感を示し続けていますが、他方デジタルの強くなさがトップアーティストチャートにおける状況を生んだといえます。この問題を解決しないことには、たとえば『NHK紅白歌合戦』への復活出場も難しいというのが厳しくも私見です。

 

最後に。今回紹介したCHART insightは無料会員向けのものであり、総合および各指標が20位まで表示されています。一方で今回紹介したチャートの各指標における順位には、CHART insight有料会員(CHART insight Pro)のみが知り得るデータも存在します。ビルボードジャパン側がネット掲載を許可していることから、今回紹介した次第です。